河内ひとみのあらかわ日和

2020年11月4日 2020年11月4日

福祉現場への感染症対策について

(1)保育・介護従事者へのPCR検査の定期実施
初めに、医療や介護現場で新型コロナと戦っている職員の皆様へ感謝を申し上げます。現場の状況は過酷で医療や介護崩壊が身近に迫っております。
おととい、一緒に働いていた訪問看護師の友人からLINE(ライン)で連絡があり、利用者の奥様がPCR検査陽性となり、自分が濃厚接触者になったということで、検査しなくてはならないという内容でした。
検査は本日となり結果が出るのは3~4日かかるということです。たとえマイナスになっても2週間は様子見るために休暇をとらざるをえません。
改めて検査体制の必要性と現場の訪問調整の厳しさを感じました。残った職員でぎりぎりのスケジュールの中どう対処するのか、いつ自分が感染者にならないか事業所全体が不安を抱えているのです。
さてコロナ禍を通じて明らかとなったのは我が国の医療政策や保健衛生関係の縮小化です。医療が財政再建の標的にされた結果、人口10万人あたりの集中治療室の病床数は約5床しかありません。
ドイツの30床はもちろん「医療崩壊」したイタリアは12床となっており、日本は半分以下の状態です。コロナ以前から医療崩壊はあったということです。
東京都においても小池知事は「外出自粛」を強いるさなか、今年の3月に8か所ある都立病院や医療センターを独立法人化させる予算を可決しました。
コロナの受け入れの感染症病院が赤字化している中で、私立の大学病院では職員へのボーナスカットにより看護師の不満をあおり問題化となりました。
労働力の対価としての賃金も増えないということであれば医療や介護職の労働意欲が低下し離職への加速化に繋がります。
地域における感染症の最前線で働く保健所は2000年以降政府とそれに追随した自治体当局によって統廃合されました。東京都においても特別区にあった53ヶ所の保健所が23ヶ所(各区1か所)にまで減少したわけです。
そのような背景の中での新型コロナ感染症によって福祉現場での感染症対策についてお伺いいたします。
新型コロナ感染拡大を防止し医療崩壊を防ぐには、患者及び感染者の疑いと密接する医療・介護従事者が感染しているかどうかの見分けがつくような迅速な検査体制の拡充が必要です。
荒川区でもPCR検査センターが医師会との協力のもとに、他区より早く対応されたことは評価したいと思います。
しかしながら検査の対象には、症状があり、受診して感染症を疑う人や、帰国者・濃厚接触者となっております。
検査件数は一日30件、週3回から5回に増やしても冬場のインフルエンザ感染症流行時には当日検査ができず翌日まで持ち越しになることもあろうかと思います。
一日当たりの件数を状況に応じた検査対応が必要ではないでしょうか。
区内の学校、幼稚園、医療福祉系事業所の新型コロナ感染者のうち、本日迄の職員の感染者数は19名を閉めております。東京都では、高齢者施設、障害者施設の入居者と職員に対してPCR検査することの予算案が出されました。
施設系については安心しましたが、地域の保育士や、在宅系の介護事業所の職員への検査対象でないことが心配です。地域の福祉現場職員が感染源となると乳幼児や高齢者や障害者や持病を持っている区民にとっては、命の危険となることが予想されます。
多くの専門家からも医療や福祉関係の職種に定期的なPCR検査すべきといわれております。
新型コロナが終息しないなか、不安を抱え勤務している保育士や在宅系の介護従事者への定期的なPCR検査を、区として実施するする検討予定はあるのかお答えください。

【答弁 健康部長(石原浩)】

区では保育・介護職場での感染拡大防止のための対策が重要であるとの考えから、これまで、このような施策に対し、サージカルマスク等を緊急的に配布してきたところです。
PCR検査は新型コロナウイルスに感染しているかどうかを診断するための検査であり、現在国が示す実施要領に基づき、症状経過や患者との接触時期などを医師が十分見極めた上で、適切なタイミングで検査を行っております。
 また、速やかに感染者を発見する観点から、国の実施要領が改正され、現在では濃厚接触者と判断された場合には、無症状であってもPCR検査の対象者として取り扱うことになりました。
 さらに、国の行政検査に係わる事務連絡によりクラスター連鎖が生じいやすいと考えられる状況にあると認められる組織に属する方々についても、行政検査の対象者として考えられることが明記されております。
 保育・介護職場等につきましても、その対象に含まれ、検査費用は対象者の負担なく実施がされております。議員ご質問の「保育・介護従事者への定期的なPCR検査の実施」につきましては、対象者及び時期等について様々な見解があるところですので、今後の国の動向を注視してまいります。

(2)インフルエンザ予防接種費用助成について
東京都は今月3日に65才以上のインフルエンザ予防接種の自己負担を無料とする予算を計上しました。
新型コロナとインフルエンザと両方ダブルで感染拡大すれば医療や介護崩壊は、免れません。65才以上だけでなく、保育や介護従事者にもインフルエンザワクチンの予防接種の補助を拡大する予定があるのかお伺いいたします。

【答弁 健康部長(石原浩)】

この冬にかけて、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザが同時に流行することにより、福祉現場への負担がさらに増大する可能性が言われる中、従事者の方々が安全に働くことができる環境を整備していくことは非常に重要であると認識しております。
インフルエンザワクチンにつきましては、高齢者の死亡を減らす効果が認められていることから、高齢者に対しては定期接種化されましたが、ご指摘の保育や介護従事者に対するインフルエンザワクチン接種は、任意接種であり、施設内の感染防止効果も限定的であります。このため、区としては、任意接種に対する助成の在り方については、慎重な検討が必要であると考えております。
 一方で、介護保険課と連携して実施いたしました区内介護保険施設等に対する新型コロナウイルス対策巡回相談において、感染症予防の基本となる標準予防策の徹底や、疑い患者が発生した場合のゾーニングのシミュレーション等について、具体的な助言指導を行いました。これらの新型コロナウイルス感染症への対策は、施設内インフルエンザ予防対策と重なる部分が非常に多く、コロナ対策を徹底することにより施設全体のインフルエンザのリスクも低減されます。
 区といたしましては、今後も、施設等の感染防止対策をきめ細かく継続していくことにより、福祉現場の方々が安全に働くことのできる環境整備への支援に全力を注いでまいります。

(3)今後開発される新型コロナウイルスワクチン予防接種への優先接種及び費用助成について
安倍首相は退陣することになりましたが、28日に新型コロナウイルス感染症対策パッケージで、2021年前半までに国民全員分のワクチン確保を目指す方針を表明し、対策本部後の臨時閣議で20年度第2次補正予算の予備費を活用することを決定いたしました。
今後、新型コロナウイルスワクチンの予防接種が始まった場合、持病を抱えた区民や高齢者、乳幼児、妊婦はもちろん、福祉関係者への優先接種や、接種費用の助成についてどのような方針なのかお伺いいたします。

【答弁 健康部長(石原浩)】

 8月21日に開催された国の新型コロナウイルス感染症対策分科会において、特定の医療従事者・高齢者及び基礎疾患を有する方への接種を優先的に行うこと、接種費用については区民・地方自治体への負担が生じないよう財政措置をとることが検討されています。また高齢者福祉施設に従事する方々を含めることにつきましても、検討課題となっておりますので、今後も国の動向に注視しながら、適切に対応してまいります。

新型コロナウイルス感染症対策における保健所の役割について

先日NHKでも特集が組まれ報道されました。新型インフルエンザ流行の時に平成24年新型インフルエンザ等特別措置法が公布され、ガイドラインも作成されました。韓国においてはその時にマニュアルができておりPCR検査体制の実施等感染症対策がなされ、日本より少ない感染者数で済みました。
荒川区において、今回の新型コロナの時に作成されたガイドラインをどのように活用されたのか。
相談センターが開設された当初、厚労省のマニュアルは「発熱しても二日間様子見てからでないと検査できない」とされていました。その後発熱が無くても受診や、必要があると医師が認めれば検査できるようになりましたが、感染者が増えるたびに区民の不安は募るばかりです。電話の相手はスムーズに理解できる人ばかりではなく、理解力の低い人や耳の遠い高齢者や、精神的に不安を抱えてのメンタル的な相談等で時間もかかったことと思います。陽性になれば濃厚接触者への検査もしなければなりません。入院やホテル等の調整はじめ、業務は多忙です。緊急事態宣言から今日まで保健所の職員だけで賄えたのか他部署からの応援体制は有ったのか実態及び区民22万人の命と健康を守るために必要な職員が確保されているのか、お伺いしたいと思います。

(1)新型インフルエンザ特措法によるガイドラインの活用

【答弁 健康部長(石原浩)】

区では、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、被害想定、核関係機関の役割やステージごとの動き、予防接種等についてまとめた「荒川区新型インフルエンザ等対策行動計画」を2014年10月に策定しております。
今回の新型コロナウイルス感染症の発生においてもこの行動計画に準拠し、国の特措法改正前の2020年1月31日にいち早く、「荒川区新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置しました。
その後、3月13日の特別措置法の改正により、新型コロナウイルス感染症が新型インフルエンザ等とみなされたことを受け、3月27日からは、同法に基づく対策本部と位置づけ対応してきたところです。
また、相談体制につきましては、保健所において「新型コロナ受診相談窓口」を設置し、医療体制につきましては「帰国者接触者外来」を設置し、感染が疑われる患者の受診調整を行ってきたところでございます。現在、都内でも感染者が多くみられる状況であり、保健所における相談体制は継続し、区PCRセンターの設置を始め、検査を実施できる医療機関の増加対応、宿泊療養施設の確保および入院医療機関の病床確保等、様々な体制を整えてきたところです。
新型コロナウイルス感染症につきましては、新型インフルエンザ感染症と特性が異なり、実際には新型インフルエンザ行動計画で運用するには限界があったことから、国および都からの通知をもとに対策を行ってまいりました。今後も、国・都の動向を注視し、行動計画の見直しを含め、適切に対応してまいります。

(2)感染症対策における保健所人員体制について

【答弁 健康部長(石原浩)】

区ではこれまで、保険相談業務の拡充や新たな行政需要に対応するため、保健師や衛生監視をはじめとした専門職を増員するなど、必要な体制整備に努めてまいりました。
 今回の新型コロナウイルス感染症への対応としましては、部内における職種を超えた応援体制はもとより、他部や東京都からの応援体制を確保することで、人員の確保に努めてまいりました。
今後も、必要に応じて応援職員を拡充するほか、民間事業者等も活用しながら感染症対策の人員体制を確保してまいります。区といたしましては、今後とも新型コロナウイルス感染症の発生患者数の増加に備えるとともに、感染防止策を講じた上で、検診等通常の区民サービスにつきましても、滞りなく適切に提供できるよう、引き続き必要な体制の確保に努めてまいります。

介護現場におけるコロナ禍での経営への影響について

小池都知事による大規模な外出宣言や安倍首相の緊急事態宣言が、強制ではなく「休業・外出自粛要請」という名のもとにおこなわれました。感染対策をすぐにとらなかった責任を国民の自己責任に転嫁し、自助努力によってようやく5月25日に解除されました。
介護事業所では、感染不安によって多数が集まる通所デイサービスや通所リハビリの利用が抑制され4月及び5月の収入が入る2ケ月後の6月7月の経営に大きな影響を与えております。
厚労省は外出自粛の影響で通えない利用者に対して、事業所側が電話で安否確認を行っても介護報酬が算定できることに加え、月に4回まで、基本報酬の算定区分の2区分(くぶん)上の単位数を算定できるという特例措置を行いましたが、利用料に跳ね返ることになります。また、電話で病状や食事摂取等生活全般の確認するための事務作業は職員にとっても負担となっています。また、ケアマネも提供表の作成がサービスコードと提供時間がリンクしない等の問題や、月4回をどの利用日に充てるのか等通常の業務より大幅な業務増になっています。
障がい者への重度訪問介護サービスでは、もともと引き受けている事業所が少ない上に、新型コロナ感染からの影響でヘルパーの人材不足が加速化されました。区では介護事業所の実態をどのように把握されているのでしょうか。
私が執行委員している介護福祉の労働組合では、昨年のヘルパー不足に伴った減収のため、今年は昇給無し、夏期ボーナス0.5か月分カットの説明がありました。やむなく仕方がないと思わされ承諾しましたが、コロナ禍での労働に対して一番働いたにもかかわらず賃金カットにより労働意欲低下でモチベーションが上がらないとメンタル的に影響をうけております。
また、ある民間保育園勤務の非常勤保育士は「休業要請され保障がなかった。国は休業補償金を出すと言っているのにこのまま泣き寝入りしなければいけないのか」と組合に相談が入りました。経営側の理由は「申請が面倒なので法人としては申請しない」という回答でした。今もなお不当な解雇や賃金カット等の相談がふえてきております。
小さな事業所ほどコロナ禍の影響は大きく受け、特にパートや登録ヘルパーは「感染を家族に移したくない、同居の家族からヘルパーの仕事はやめるように」と言われ退職した人もいます。残った職員だけで現在も、休みを取る暇もなく働き続け疲弊しています。
コロナ禍での影響により収入が減っている介護事業所に対して区としての経営面での支援策をお答えください。
介護離職に歯止めがかからず、募集しても新規介護職が集まらない原因として給与の低さがあります。
介護保険制度は、「介護の社会化」を理念に2000年4月より始まり20年経過しました。3年ごとに改定される介護報酬も2018年の改定まで6回のうち3回はマイナス改定であり、抑制ぶりが顕著となっています。処遇改善加算を組み入れましたがヘルパーの給与は2015年度の介護報酬実態調査では、基本給は月額1万3千円増にとどまっています。介護現場で働く非正規・パート労働者の時給は制度開始2000年よりほとんど横ばいの状況です。給与面の低さからも、コロナ以前から慢性的な人手不足に悩まされています。対応策として、人材派遣・紹介会社からの人材確保が常態化しつつ派遣会社等に支払う派遣料も、事業所の経営を圧迫しています。
外国人労働者にも期待していましたが、今回のコロナ感染症拡大に伴い人材不足の解決にならない状況が続いています。
荒川区でも要介護・要支援高齢者や障害者への介護人材不足がこれ以上進まないよう、離職防止、新規介護労働者の増加対策を真剣に取り組まなくてはなりません。
区として具体的な支援策をお答えください。

【答弁 福祉部長(片岡孝)】

区では、本年4月コロナ禍における現場の状況を把握するため、障がい福祉サービスの指定を受けている事業所を含むすべての介護事業所を対象にアンケートを実施し、事業所から寄せられた声をもとに、備蓄用の医療用マスク等の衛生資機材を速やかに全事業所へ配布させていただいたところです。
 また、介護や障害福祉サービス事業の現場を支えるために、職員給与への上乗せや感染症対策費用として活用できる、応援対策給付金事業を全国に先駆けて実施をいたしました。
 次に、人材確保の問題につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による職員の離職に関して、今までのところ、区内事業者から具体的な相談等はございませんが、介護等の分野では慢性的な人材不足が続いており、サービス需要の増加により厳しさを増すことが見込まれるため、これまでも事業所と求職者のマッチングや介護職員のキャリアアップのための研修費用の助成など、側面的な支援を行ってまいりました。今年度策定する第8期高齢者プランの中でもさらに検討を進めるとともに、国や都に対して必要な働きかけを行ってまいります。

最期になりますが、今回の新型コロナの感染拡大は医療や介護といった社会保障や雇用保障のみならず区民生活への影響は計り知れません。
障害や病気になっても安心して生活ができる社会保障制度の充実が必要です。
制度改悪ではなく制度改善への政策の見なおしが必要です。
医療においても東京女子医大東医療センターの役割は救急医療や高度医療や感染症対策を担う点で区民にとって安心できるものでした。
今後、女子医大東医療センター移転後に他区に通えない障害者や高齢者の行き先が心配です。現役時代よくあったことは、緊急時救急車を呼んでも、受け入れ時に「年齢や障害、難病、医療機器をつけている状態によって受け入れを拒否するという差別問題に何度も遭遇しています。スムーズにいかない原因は、高齢であれば入院が長引くことや、介護に通常より手間がかかるという理由だと思います。1時間たっても入院先が見つからない。助かる命も助からないという命の選別がなされないことを望んで一般質問を終わります。

資料
■東京都企業倒産状況
東京の企業倒産状況