斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、あらかわ元気クラブとして、在瀋陽日本総領事館の亡命者連行事件に関し、中国政府の即時謝罪、警備体制の改善及び関係者の厳正な処分を求めることに反対の討論を行います。
 5月8日に瀋陽総領事館で起きた朝鮮民主主義人民共和国住民の駆け込み事件について、マスコミはこれを大々的に報道し、連日現地での盗撮とも言える映像を流し続けました。「中国に主権を侵害されて黙っているのか。大使を罷免せよ」と外務省批判の世論が高揚したものの、次第に中国東北部の現地事情や事件の背景が報道されるにつれ、見識ある人々の間ではこの事件に内在する問題への理解が進んできたようであります。
 そうした中で去る6月19日、川口順子外務大臣と唐家セン中国外相がタイでトップ会談を行い、日中関係の大局を踏まえて、この問題の外交・政治上の決着が図られました。私たちは、以下に述べる問題点はあるにせよ、我が国の真の国益並びに21世紀の日中関係を考慮したこの決着は、基本的に妥当であると判断するものであります。したがって、政府間で解決が図られたにもかかわらず、殊さら政権政党に所属する皆さんが、中国政府の即時謝罪、関係者の厳正な処分、自民党提案の原案によれば大使の罷免となっておりましたが、これらを荒川区議会が求めることは不適当と考え、意見書を提出することに反対するものであります。
 確かに、中国警察官が同意を得ずに領事館内に立ち入ったとすれば、ウィーン条約第31条第2項に違反する行為であると言うことができるかと思われます。しかし同時に、ウィーン条約は第31条第31項において、領事機関の安寧の妨害又は威厳の侵害を防止するために適切な措置をとる特別な任務を定めております。このことにかんがみ、また、中国側に最初から不可侵権を侵害する意図があって行われたのではないことを考慮すれば、謝罪のみを追及するかのごとき外交的態度が適切と言えないことは明白であります。
 また、日本がいわゆる政治亡命を受け入れない方針が是か非か、このことについての議論は今回の問題とは全く別の問題であることは論をまちません。したがって、現時点での日本政府のこの国策に従って対処した阿南大使には何の非も存在せず、政府の方針に基づく適切な対処であったと言わなければなりません。したがって、処分や罷免などは全く当たらない乱暴な議論と言う以外にありません。
 さて、この問題は、一体この騒ぎをだれが引き起こしたのかを抜きに語ることはできません。また、マスコミ報道の背景にある問題を正確に理解しない限り、日本は国益を損なうことになり、真の日本の主権や外交のあり方を論じる正しい判断はできないと考えます。
 では、この問題の背景とは何か。1つは、周到に準備された亡命劇であったことであります。食糧難や経済的困難さから、日常的に行き来している北朝鮮住民は2万人とも言われております。こうした中国東北部における経済的事情、こういう状況にある人々の中から政治亡命者を仕立てる組織の存在は既にNHKでも報道され、多くの人々の知るところとなりました。こうしたことに加担するかのごとき日本の態度が正しいかどうか、皆さんの判断をまちたいと考えます。
 さらに言えば、このような中で、外務省高官の罷免を殊さら言い立てる意図があることであります。外務省の中には、日中の友好を重んじ、アジアとの友好関係を重んじる勢力が存在しております。こうした勢力をチャイナスクールなどと称して、殊さら排斥する意図があります。
 アジアが世界経済においても、政治においても大きな位置を占めるようになった21世紀、アジアにおいて大国とされる日本と中国が日中30周年のこのとき、日中関係の大局に踏まえるというのは、アジアにおける日中関係の重要さを物語る大切な判断であると考えます。日中30周年の記念すべきこの節目の年に日本と中国の関係を殊さら裂こうとするのはだれの意図なのか。その意図に加担する行為は慎まなければなりません。
 同時に、意見書の中にもありますが、日中関係だけでなく、中韓関係についても同じことが言えます。中国東北において、私も視察などで実際に体験してきましたが、非常に緊密な経済的な中韓関係の存在があります。ここに亀裂を生じさせる意図も今回の事件の中にはあるのではないかと考えております。朝鮮半島南北の対話、歴史的な2000年の南北共同宣言、韓国の太陽政策、日本はアジアの隣国のこうした政策を尊重すべきであると考えます。
 主権について殊さら言い立てておりますが、昨年のえひめ丸事件の際や沖縄の女性たちに対する凌辱事件が繰り返されたときに、政府はアメリカに対して一言半句でも主権を主張したことがあるでしょうか。アジアに対しては高飛車、アメリカに対しては弱腰、こんな外交がいいはずはございません。
 以上申し上げまして、日中関係、さらに朝鮮半島問題はアジアの平和の生命線であることを申し添え、この意見書の提出に反対をいたします。