締めくくり総括質疑で、人の痛みを大切にするまち荒川区をめざし、荒川区の人権行政について伺います。8月末に荒川区の同和行政をめぐってトラブルが起きているという話を聞きました。
土地の売買を行う不動産業者が「ここは部落かどうか」と窓口に尋ねてきたことに端を発して、荒川区が個人情報を漏えいしたとの批判が行われたようです。
被差別部落かどうかを調査する意図は、土地の価格を安く買いたたくこと、また建設反対運動について差別的な想定をすることなどにありますが、これは土地を売ろうとする区民の方の人間としての尊厳を傷つけるばかりか、財産に低い評価を加える不当な事業活動です。これを糾すのは部落差別をなくすため自ら運動する団体の活動であるとともに、差別のない地域社会をつくる行政の誇りある仕事でもあります。
この件に関連して、あるホームページの書き込みには、「荒川区は利権団体の出先機関に成り下がっている」という表現までありました。荒川区の人権行政の名誉にかかわる問題ですので、区の対応とその根拠について伺います。
担当の職員にとっても、人権に関する啓発推進行政が根拠あるものでなければ誇りを持って仕事をすることはできません。明確な考えをお示しください。
(三ツ木副区長 答弁)
平成18年の4月に江戸川区所在の不動産業者が区役所に来訪しまして、所管の総務企画課の係長に対して区内の住宅建設予定地を指しまして「この場所が同和地区なのか。皮革工場の跡地なので知りたい」等の質問、照会を行った事実がございます。
同和地区かどうかを照会するような行為は、当該土地の所有者に対する偏見を助長するものでもありますし、また地域住民に対する差別にもつながりかねず、目的のいかんにかかわらず、重大な差別行為であるというふうに考えております。
区ではこれまでも、このように窓口に同和問題等に対する相談がありましたときには、同和問題についての説明をし、理解を求めてまいりました。今回も質問には応じられない旨を説明したのでございますが、そのときは当該業者の方が怒って帰られてしまったというような状況でございました。
このような状況から、当該事業者が当該の地域や同業者に同じような行為を行ったり、同和問題についての間違った考えを吹聴する等の差別的行為を行うことが危惧されたため、東京都の関係部局並びに部落解放同盟東京都連合会荒川支部に連絡を行ったものでございます。
その後、当該不動産事業者に対する事実確認等につきましては、荒川区、江戸川区──これは事業者の所在地が江戸川区でありましたので江戸川区──それから東京都の三者で打ち合わせを行い、三者を代表して東京都が主体となって計3回にわたり実施され、当該不動産事業者もみずからの行動の誤りを認め、本件事件は一応終了しているものでございます。
人権侵害、あるいは差別問題につきましては、このような事件だけでなく、戸籍の不正請求事件、あるいは大量差別はがき事件など、現在も後を絶たない状況にございます。荒川区の地場産業でありました皮革産業が立地している当該地域は、近年、事業の廃止等が進み、工場跡地が住宅用地として売りに出される状況が多くなってきておりまして、差別的な土地調査が行われることによって、対象の物件所有者はもちろんのこと、地域住民に不利益を与えることが想定されました。このようなことから、当該差別調査が引き続き行われ、被害が拡大するおそれが高いと判断して、対象物件の所有者の方も所属しており、また地域の事情を把握しやすい立場にある解放同盟の荒川支部に情報提供を行ったものでございます。
この情報提供につきましては、区の条例でも公開が可能な事業者の活動情報であり、また個人情報保護条例に照らしても緊急かつやむを得ない場合として当該不動産事業者の同意を得ずに外部に情報提供できるものでありますので、区の対応としては適切な対応であったというふうに考えているところでございます。
(斉藤ゆうこ)
私は、一昨年、合併前の京都府園部町を訪ねまして、『人の痛みを大切にするまちづくり条例』について視察いたしました。野中広務・自民党元幹事長の出身地であり、弟に当たる野中一二三、当時の町長さんにもお会いしてお話を伺いました。
西川区長にお尋ねしたいと思います。今後も土地の売買や開発が進む中でこうした問題が起きることが予想されます。当事者にとっては大変苦痛なことです。都内の不動産事業者への指導や、新しい区民の方たちを含めた地域での丁寧な啓発活動が必要かと思いますが、人権行政に対する西川区長のお考えをお伺いします。
(西川区長 答弁)
福沢諭吉先生は、トーマス・ジェファーソンの教えを日本に翻訳して「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言えり」というふうに仰っておられます。
生得の権利として生まれながらの機分の権利として、人は自分の幸せを追求する権利を持っておりますし、自分らしく幸せに生きる権利というものが人権の基本でございます。
私ども荒川区でも、基本構想の中に、「すべての区民の生命、人格、人権が尊重され、だれもが自由で多様な生き方を選択できるまちを目指す」というふうにその理念を謳い上げている訳でございまして、私は個人としても、また区長としても、人権を尊んでいく、そういう姿勢を維持して参りたいというふうに思っております。
今度のようなことにつきましては、指導官庁であります東京都にもよく、今後こういうことが起こらないように従前の連絡をとると同時に、当区における所管部課に対しましても遺漏のないように、つまり人権を何より尊ぶ行政を行うように指導していきたいと、指示をして参りたいというふうに思っております。
(斉藤ゆうこ)
区民の尊厳や地域の誇りにかかわる大変大切な問題ですので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。終わります。