斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、あらかわ元気クラブとして、議案第27号、東京都荒川区高度制限区域条例の制定に賛成の討論をいたします。
 この条例は、地方自治法第74条3項の住民の直接請求による条例制定の規定に基づいて議会に付託されたものであります。直接請求は、年明けから取り組まれ、2月8日に受理され、選挙管理委員会で所定の手続きを経た後、3月3日、正式に4958名の有効署名が確認され、去る3月15日に区長の意見を付して区議会に付託されたものであります。
 この高度制限区域条例が住民から直接請求されるようになった背景は、昨年9月以降の荒川1丁目39番地におけるダイア建設株式会社の31階建て超高層マンション計画にあります。参考人は都市建設委員会の席上、条例制定を求めた動機について、概略以下のような趣旨を述べられました。
 建築計画のお知らせで突然31階超高層マンションの計画を知って驚いた。そこから住民による反対運動が始まり、その中でさまざまな矛盾を感じた。荒川区の人口減少ということも知っており、マンションを建てるなということではなく、あのような場所に超高層というのは異常なので、せめて他の建築物並みに高さを下げてくれということを言ってきただけである。また、都市計画法、建築基準法が全国一律の法律であること、法の最低限基準が実際には最高基準のしばりと解釈されていることの問題性、さらに区がただ法律を守るという態度一辺倒に終始していること、こうした3つの点を挙げて、これでは無謀な計画に対し、住民はなすすべがないと訴えられました。傍聴のメモですから、端々は正確でないかもしれませんが、おおむね趣旨はこのようなことをおっしゃったと思います。参考人が動機として述べられた以上のような内容の中に、今回内外から注目された我が区の超高層マンション紛争が荒川区と荒川区議会に提起した問題が言い尽くされているのではないかと私は考えます。
 さて、このような状況にどう対処するのか、そして住民の苦しみから生み出された高度制限区域条例という提起にどう回答していくのか、私は条例制定に賛成の立場から大きく2点に分けてその理由を述べたいと思います。
 まず第1に、国対地方自治体、その権限をめぐる問題についてであります。今回の場合、この問題は、都市計画法、建築基準法という国の法律と地方自治法に基づく区の条例制定権の問題と言い換えることもできます。
 都市建設委員会の審議を傍聴する限り、この問題について残念ながら突っ込んだ議論が行われたとは思えませんでした。区長が付した意見では、第一に法律との適合性が上げられています。高度地区や地区計画を定めた場合に限ってのみ条例で高さ制限をすることが可能であるとし、こうした手続にのっとらない条例は違法と決めつけております。
 それでは、合法性とは一体何でしょうか。違法か合法かという問題はもっぱら解釈をめぐって争われる問題であり、最終的には見解の相違、解釈のあり方は裁判で争われるというのがこの国の常であります。つまり、現行定められた法律とは絶対的なものではあり得ず、常にそのときどきの社会情勢や社会的規範、また変化する社会的状況への対応という実態的な中で左右され、解釈をめぐる争いの中にあるということが言えると思います。
 とりわけ地方自治体の権限という問題では、建築関係の法規に限らず、国の法律ぎりぎりの条例をつくって対抗してきた地方自治体の実例はいくらでもあります。大店法の例を見ればこれは明らかであります。1980年代に国、つまり通産省はいわゆる上乗せ、横だし条例や要綱をつくってきた地方自治体に対して、ことごとくこれを違法と決めつけ、首長を呼んでこうした条例や要綱を撤廃するようにと強く迫りました。このような国の圧力に屈して、条例や要綱を廃止した自治体も多かったのですが、1990年代に規制緩和が進み、大型店の出店が野放しになった結果、地域では紛争が続発することになりました。こうした全国的な状況の中で、再び地方自治体は独自の条例や要綱づくりに取り組まざるを得なくなったというわけです。これは我が区における大店法関連の要綱の問題でも全く同じ経過であるということができます。
 こうした経過からわかるのは、常に国と地方自治体のせめぎ合い、社会的状況を背景にした力関係の中に、条例の適法性という問題はあるという事実です。区長の意見は、このような点から見て、まことに消極的としか言いようがありません。
 全国一律の建築基準法は悪法と言われて久しい法律です。また、昨年の法改正による規制緩和措置は全国での建築紛争の引き金となったことは間違いありません。こうした中で、地方自治体は具体的な措置をとらない限り、住民生活や環境を守れないことは明白であります。この条例を制定すれば、当然国からの指導が入り、廃止を迫られるかもしれません。しかし、そういった真剣なせめぎ合い、攻防の中からしか実効性がある地方自治体の条例や態度は生まれないということをこの際はっきりと申し上げておきたいと思います。
 さて、第2番目の問題は、私権の制限という問題であります。明治通り沿線すべてについてを適用範囲とした問題、また15階以下、かつ50メートル以下という基準の問題、そしてこれらが果たして民意を反映しているのかということが争点であると思います。
 まず明治通りという問題ですが、これはすべての幹線道路としてもよいところを明治通りという地域に限定したという内容であります。御存じのとおり、明治通りは区内で最も長い距離を有する幹線道路です。この沿線の実態の状況はどのようになっているのでしょうか。平成8年8月時点の明治通り沿線土地利用現況図、土地建物用途別のものと建物階数、構造別のものと2つありますが、この2つを調べてみました。すると、沿線の後背地に当たる部分はほとんどが2階程度の木造建築物で、用途は住宅、または工業用地であることがはっきりと見てとれます。また、明治通り沿線に現在建てられている建築物はすべて15階以下であることも明らかです。さらに10階前後の建物を建てているのは誰かという問題もあります。区は、住宅課が今後マンション実態調査を計画中だというふうに聞いています。この結果を見れば、詳しい実態も明らかですが、住宅地図などで見てもわかるとおり、高層建築物を建てているのはほとんどが大手の住販会社、企業であり、オーナーが個人、区民というケースは極めて少ないと思われます。
 私は、以上のようなことから明治通りと規定したのはその後背地が今回と同様の地域であり、ひとたび計画が持ち上がれば今回の荒川1丁目のような紛争は必至であること、また現存する階数に15階以上が存在していないため、これと同等の階数を定めるのは極めて妥当性があること、また私権とはいっても、利益追求の企業活動によるもので、これを無制限に許容するということであれば、逆に、旧来区内に居住してきた区民の権利が侵害される、それがよいとは決して認められないこと、これらによりこの範囲や基準は妥当性があると考え、支持したものであります。
 10年の時限立法として将来のことは後の世代にゆだねるとしたことも極めて謙虚で妥当なものであると考えました。
 民意という問題についても申し上げたいと思います。私は、この間、さまざまな区民の皆さんの声をこの問題で別の地域からも聞いてきました。大多数の区民の皆さんの声は、明治通りに15階以上の建物は要らない、です。私は民意に確信を持っております。むしろ皆さんは一体何を御心配なのかと思います。区は10年以内に何か15階以上の建物を計画なさっているのでしょうか。15階以上の建物が必ず必要だということが言えるのでしょうか。今回の高度制限条例は、住民が自らの利害を超えて、荒川区の今後10年の街づくりについてそのあり方を真剣に考えられ、一歩踏み込んで高度制限という形で提案した大変画期的なものです。紛争の中からこうした住民の皆さんからの街づくりについての具体的な提案が生まれたことは大変心強く、素晴らしいことであると思います。
 さて、修正案についても一言申し上げたいと思います。私は努力義務規定、それでもよいと考えています。しかし問題は、どこでもいいのかという適地性が争われる、この問題であります。川沿いや商業地域全体にかけていく、これには無理があり、私は不適切であると考えます。
 また、修正案提案者の果たすべき役割についてもあえて一言申し上げたいと思います。こうした住民の直接請求が取り組まれたこと、早い時点からの問題です。予算委員会もありました。この中で、修正案を提案される議席をお持ちの会派であれば、それではどうやって議会がこの直接請求にこたえ、全体の合意を形成した中で、本当に条例がつくれるのかどうかという努力をされたのかどうか、私は共産党さんの修正案の提案についてはつい当日知った、そういう状況であります。私は、前回も大店法の問題で超党派の議員立法をぜひやろうということを申し上げてきました。こういうことが議会にも問われているのではないでしょうか。今回の条例案の提案は、実効性ある独自のルールづくりをしてこなかった行政への批判であり、また、裏を返せば、それに手をこまねいてきたと言われても仕方がない私たち議会への警鐘であるとも思います。
 最後に、今後どうしていくのかについてお話をさせていただきたいと思います。この問題の発端は、コリンズが地上げをし、現在も荒川1丁目に散在しているようなビル、そして虫食いの土地を生じた、このことから発しています。まさに土地住宅無策と言われても仕方がありません。区議会では、昨年11月27日に環境と調和する建物に計画変更するよう働きかけるという請願が超党派の紹介議員を得て都市建設委員会で審議され、圧倒的多数で採択をされました。そして先月、これを受けまして、去る2月18日、地元住民の皆さんとダイア建設との話し合いが行われました。この席には私たち紹介議員と都市建設委員会の有志6名も参加いたしまして、荒川区からも行政が同席をいたしました。
 この話し合いの席上で、ダイア建設は2つのことを約束しております。この日の話し合いを踏まえて、計画変更について持ち帰り、改めて検討して正式回答をするということ、また東京都がつけた建築確認時の行政指導を守るという問題です。東京都は1月28日、建築確認の際に、異例の行政指導を行いました。工事着工時には必ず地元に手順を説明すること、企業の自己責任できちんと地元に対応することという内容になっています。事実上、このまま計画変更せず、強行突破をするということになれば、都も黙っていない。私たち区議会も荒川区も黙っていられないということになってきます。こうした中で、ダイア建設がこの条例の発端となった問題、真剣に計画変更することを引き続き求めていきたいと思います。
 さて、何でも国の言いなりではなく、区民の立場に立って、まちのことはまちで決めるという姿勢を持つ区政、藤枝区政はこれに挑戦ができるのでしょうか。まちの声は、真鶴の町長は偉いなという声です。地域の実情はもちろん違います。しかしぎりぎりのことを地方自治体の長が身をもって国に挑戦したのか、このことは評価をされることだと思います。高度制限区域条例の直接署名に私自身は署名しておりませんが、この議場の中にも幾人か署名をされた議員がいるということを聞いております。ぜひ私の討論の趣旨に賛同していただき、鮮明な態度表明をされることを期待いたします。また、他の議員の皆さんにおかれましても、地方議会の主体性をかけた態度表明をされることを期待いたします。お訴えいたしまして、私の討論を終わらせていただきます。