河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月28日 2014年11月26日
 あらかわ元気クラブの斉藤ゆうこ子です。2期目に入り、新たな新年度予算を発表された西川区政の五年間を振り返って、戦後最大の経済危機が続く厳しい状況のもと、区政の各分野でどのような方針をとられるのか、区長をはじめ、理事者の皆さんにお伺いしたいと思います。

 今、小さな事業者が多い荒川区の地域経済とこの町に暮らす人々の区民生活とは、だれの目から見ても大変厳しく、かつてないつらい状況になっています。会社や商売の苦境やあすの仕事への不安が多くの区民の上にのしかかる中、地方自治体にあって「幸福実感都市」を掲げる西川区政の真価が問われる状況となりました。

 人が自らを幸福と感じるかどうか、その尺度にはかつての自分の状況との比較、さらには他者の状況との比較があると思います。「昔の苦労を思えば今のほうがましだ」とか、「もっと大変な人たちに比べれば自分は幸せ」だというのは、極めて日本人らしい感情でもあります。「あなたは幸福か」との区民アンケートに対して肯定的回答が多いのは、そうした感情のなせるわざではないでしょうか。従って、人の幸せという概念について、行政が幸福度の指標化なるものを試みることは甚だ難しく、ジレンマに満ちたことではないかと私は推察しております。

 経済的な行き詰まりが人の健康を阻害し、社会の不安を助長している今日、地方自治体はみずからが受け持つ幅広い分野において、区民が置かれる苦しい状況を深く理解し、あくまで区民の尊厳を尊重する姿勢で主権者である区民に最大限の手助けをする立場に徹することが肝要だと思います。しかし、この間の行政には、そのような対応に欠ける場面や状況も見られ、苛立ちを感じずにはいられません。

 今年になって映画「華氏911」「キャピタリズム」などブッシュ政権批判で知られるマイケル・ムーア監督のインタビューを見る機会がありました。「監督はオバマ大統領を批判するのですか」という問いに対して、「もちろんです。その理由は最も期待されて就任された大統領だからです。期待が裏切られれば国民の失望は大きい。だから私はオバマ大統領を厳しく批判する」と答えていました。

 これまでの政治に絶望し、変革を求める国民の期待が大きかったのは、アメリカと日本、どちらも同じだと思います。百年に一度の危機のもと、アメリカはオバマ大統領を誕生させ、日本は民主党に政権交代を託しました。しかし、国民は民主党に白紙委任状を託したわけではありません。

 同様に、荒川区においては5年前、区民は初めて西川区長を選択し、一昨年11月には区議会の32人中25人、実に約8割に当たる自民党、公明党、民主党・市民の会の三会派とふたつの一人会派の支援をもって選挙に臨まれ、そして再選をされました。このような状況の中にあって、批判的な質問と提言をすることが私のささやかな使命であると思います。そうした視点から、これまでの区政への批判的な見地を含め、質問をいたします。

●まず第一に、荒川区の地域経済のかなめであり、日本経済の一翼を担う区内中小零細事業者の支援策についてお尋ねいたします。

 昨年、亀井金融担当大臣が提唱したいわゆるモラトリアムは話題と期待を呼び、私も予算委員会で質問をいたしました。しかし、成立した中小企業金融円滑化臨時措置法は、新規融資、返済猶予の申し込み、住宅ローンの返済軽減の申し込みの三点について、できる限り柔軟に行うよう努めるとする強制力のない努力義務にとどまりました。

 昨年11月20日、資金繰りに追われ、政府の無策に怒りを募らせた首都圏の中小事業者たちは、「中小企業年次改革要望書」と銘打った要望書を提出し、この制度を実効あるものとするよう強く求めました。私も事務局として同行いたしましたが、金融庁と中小企業庁の担当者は、その場で、制度が有効に機能しているかどうか4カ月後に検証の場を持ちましょう、と提案しました。

 明けて1月、年末の事例を持ち寄った事業者の勉強会では、結局は金融機関の胸先三寸じゃないのか、今までリスケをすれば破綻懸念先企業の烙印を押されて新たな資金調達はできなかった。本当に変わるのかとの不安が的中し、ペナルティーなしで返済猶予ができた人、できませんとにべもなく断られた人と、銀行や信用保証協会によって対応が分かれました。銀行協会や民主党閣僚の反対で骨抜きにされたと悔しがる事業者の声も聞かれました。

 亀井さんは、「純ちゃん(小泉さんのことですね。)に日本をむちゃくちゃにされて引き下がれない」と発言しましたが、「国民の生活が第一」を掲げる民主党連立政府は、まず中小事業者を存亡のふちに追い込んだ小泉・竹中構造改革以前に政策を戻す努力をすべきではないのか、そうした考えがないようでは政権交代も空しい限りだと私は思います。

 特に金融庁の金融検査マニュアルは、貸しはがしの元凶です。また、自己資本比率を国際基準の8パーセント、地域金融機関は最低4パーセントとする縛りがある限り、地域金融機関が返済猶予や追加融資に二の足を踏むことになります。これについても昨年11月、亀井大臣が数字の縛りをなくすべきだと問題提起しました。そもそも世界に展開するメガバンクと地域の信用金庫等をひと括りにすることがおかしい。百年に一度の危機でアメリカでさえファンドや大銀行への金融規制に踏み切るのですから、政策の見直しを恐れる必要はないと私は思います。だれのための国際基準なのか、国民の生活の視点から見直すべきであります。

 この勉強会では、中小企業支援に携わるスタッフから、年度末に経営安定化資金で資金調達を助けること、年間1兆円超えの代位弁済を抱えて財政が悪化する信用保証協会にかえて第二保証制度を創設すること、また中小零細企業の債務の実態に合わせリース会社やクレジット等も返済計画の変更の枠組みに入れるなど、具体的な提案がなされました。もっともなことだと思います。現場に密着した地方自治体も声を上げ、政府の対応を促すべきだと思います。

 我が国の企業数の99.7パーセントを占め、雇用の7割を担う中小零細企業に重点的な支援を行うことこそ、進行するデフレや国民の窮乏化への有効な政策にほかなりません。まず、中小零細企業が急場をしのぎ死なないように支援すること。次に、受注や売り上げの回復が展望できる産業政策に転換して活性化できるようにすること。その場合には、アジア市場での共存共栄の視点も欠かせません。国民の生活が第一なら、こうした戦略的位置づけで中小企業支援を考えてしかるべきですが、日本経団連の意向を酌み、これと同一歩調をとる輸出大企業労組の幹部による政府ではおのずと限界がありましょう。

 私は、中小企業の再生なくして国民生活の向上なしと叫びたい気持ちです。政権交代した政府は大企業支援よりも存亡の危機にある中小零細企業の救済こそ急ぐべきですが、現状はごらんのとおりです。これをダイナミックに変えていくには、現場に最も身近な地方自治体が中小零細企業の現状と政府の政策をどう認識しているのか。いいと思っているのか、これではだめだと思っているのか、そこのところが肝心です。だめならば、地方自治体は身をもって国に示し、有効な政策に変えてもらわねばなりません。

 そこで、当局の認識を4点にわたって伺います。

○まず、成立した中小企業金融円滑化法の運用状況について、荒川区の実態を把握しているのか、伺います。2月15日に大手銀行各行は、法が施行された昨年12月4日から年末までの1カ月間に約2万件の申請があり、うち2割の返済猶予を実行したと法の規定に基づいて公表をいたしました。荒川区の実態はいかがでしょうか。施行された法律は現場で有効に機能しているとお考えか、伺います。

○第二に、多数の代位弁済を抱えて財政が悪化する東京信用保証協会の実態をどのように把握されているのか、伺います。限界に来た現在の信用保証協会にかわり、新たな保証制度の創設も必要かと思いますが、見解を伺います。

○ 第三に、地域金融機関が返済猶予や追加融資の足かせとなっている自己資本比率の縛りを緩和するよう国に求めるお考えはないか、伺います。また、かつて悪名をとどろかせた金融検査マニュアル運用の実態をどのように見ているか、あわせて伺います。地方自治体として地域の信用金庫などの声を聞き、国に対策を求めるべきと思いますが、いかがでしょうか。

○第四に、大企業のみならず、国内での受注減に苦しむ中小企業も、アジア内需を意識した東アジア市場への製品や技術の輸出で現地と共存共栄できるシステムが必要と思いますが、荒川区としての実践を通じて政府に戦略的な支援策を打ち立てるよう進言するお考えはありませんか。
以上4点、伺います。

●さらに、区内の中小零細業者への支援にかかわって、大型店の出店と商店街振興策について伺います。近年、高野部長としつこく論争を続けた結果、もう私の言うことは耳にタコだと思っているかもしれないので、きょうは結論だけ聞きます。

 まず、どれだけ荒川区に大型店が増え続けてきたのか、数字で伺います。この間の大型店の増え具合を床面積でお示し下さい。大型店の相次ぐ出店は、地域商店街衰退の一因だと認めながら、この状況が加速し、それを放置しているなら、荒川区は手をこまねいていた、無策だとのそしりは免れません。大型店が便利だからうれしいという区民もいるのは当たり前のことで、出店し放題の現状を黙認して商店街が寂れ続けるなら区政は要りません。ライフ出店で現行の環境面からの要綱対応に対してさえ、あれほど多くの住民の意見が出されたのはかつてないことです。そのことは環境面のみならず、増え続ける大型店に対する区民の意識の変化、「もうこれ以上いいよ」という区民の気分の変化を反映したものと見ることができます。

 高野部長、機は熟してきましたよ。区民人口や区の面積に比して大型店の床面積が過剰になっているオーバーストア状態について、一定の数値基準を設け、これ以上の進出は荒川区として御遠慮願うという条例を一刻も早くお作り下さい。規制緩和で大店法が廃止され、まちづくり三法になったのだから、現行法で需給調整の観点からの出店規制が違法なことは私も百も承知です。政権交代したんだから行き過ぎた法律は変えてもらおうじゃないですか。地域主権とはそういうことじゃないんですか。研究の段階はもう終わりました。みんなでやれば怖くない。オーバーストアの概念確立による荒川区独自の出店規制条例制定をお願いいたします。

 三番目に、空き店舗対策です。この際、手続が面倒だ、使いにくいと評判芳しからぬ空き店舗への助成制度をやめてしまい、思い切って丸ごと空き店舗を借り上げ、商店街に貸与して休憩所などを運営してもらったらいかがでしょうか。土地所有者や大家さんとの調整もあるでしょうが、荒川区の宅建協会などの協力も得て、趣旨を理解してもらい、適当な価格で借り上げて活用すべきだと思います。

 私は、この間「商店街を未来に残すまちづくり条例」を提案し、大型店の立地規制を提案してきました。地域商店街が残る町を荒川区の将来像とし、規制と活性化支援の両面から商店街振興を急がないと、もう商店街はなくなってしまいかねません。引っ越してきた若いカップルや親子連れが下町風の商店街イベントに目を輝かせる姿を私は多く目にしてきましたが、8年続いた5商店街『オグコム星の市』も残念ながらついに今月で幕を閉じました。起死回生、新たな共同事業を練っていますが、自助努力もだんだん限界に近づきつつあります。子育て世代や高齢者とともにある商店街、空き店舗を利用した「親子カフェ」や「まちの駅」をあちこちにつくって滞在型の楽しい商店街を演出したいものです。
商店街の価値についての認識は進化し、西川区長は、商店街は地域にとって大切な社会資本であるという認識を示されました。社会資本であるならそれにふさわしい保存や整備が必要であります。発展を阻害するものがあれば積極的に対抗措置を講じなければなりません。このような観点からの政策的決断をお願いいたします。

 さて、ものづくりと商店街が残る町荒川区ですが、その衰退とともに次第に姿を変えてきたのもこの間の実態です。準工業地域の中にある小規模工場や倉庫が売られ、次々に出現したのはワンルームマンションでした。3年前には不動産投資信託市場(Jリート)の過熱と相まって、東日暮里地域をはじめ区内各所に戸数や面積の指針を示した指導要綱を公然と無視するワンルームマンション業者があらわれ、区はこれを重く見て条例の制定に踏み切りました。このときの経験はまちづくり行政にとって大きな教訓となったと思います。

 しかし、条例施行後2年半も経過した昨年末になって、当時条例から逃れることを目的に駆け込みでとった建築確認によって、公然と現行条例に違反した建築計画をそのまま実行するという新たな業者があらわれました。近隣住民は納得がいかないと大変憤っています。区議会には、近隣住民から、現行条例に違反した東日暮里3丁目ワンルームマンションの計画変更を求める陳情書が出されました。

 そもそもこの建築計画は、2007年9月27日にワンルームマンション規制条例の可決3日前、建築主である株式会社Q&Iが規制を逃れる目的で建築確認を駆け込み申請したものです。その後、資金不足から建設は行われず、コインパーキングとなっていましたが、今回、新たに新英興業株式会社が計画に参画して着工を目指しています。

 この新英興業は、東京都の格づけAランクのゼネコンとして都営住宅の建設などにもかかわってきた事業者です。コンクリートから人へだか、コンクリートからあの人へだかはいざ知らず、公共事業の縮小とダンピング的な受発注が横行する中で、厳しい競争を強いられる中小の建設事業者の最近の苦境はよく理解ができるところです。だからといって、このような既存条例不適合の計画に参画するのはとても感心できません。

 いかに条例が遡及適用できないからといって、現行の条例に違反する建物が条例施行後二年もたって堂々と建てられることは、社会的にも道義的にも認められる行為ではありません。建築確認には賞味期限がないため、実質の建主が変わっても同一の建築確認が生きちゃう。何年経過しても建物は合法的に建てられるというのが現状です。こうした法律の状況も間尺に合いません。

 しかも、この土地は、日暮里地区の4つの中学校が統廃合され、廃校になった日暮里中学校の跡地に建設されたケアつきの高齢者住宅を含むコミュニティハウスに隣接しています。一階には地域でも人気が高いゼロから3歳児を対象とする認証保育園、小さな赤ちゃんたちの保育園があります。敷地のほぼ目いっぱいの広さに7階建てのワンルームマンションが建てられると、北側に隣接する福祉施設・日暮里コミュニティハウスは南側を大きくふさがれることになり、また東側、南側の住宅はビルの谷間となり、日当たりが奪われます。1階の保育園には冬至の日で朝8時から夕方4時頃まで日が当たらず、2、3階はもちろん4~6階の介護が必要な高齢の方々の住まいにも日照に大きな障害が生じます。こうした地域のいわば福祉的エリアとも言える施設の環境悪化は見過ごしにできません。

 現在まで事業者によって3回の説明会が持たれましたが、住民は建築主に建築計画の変更を強く求め、話し合いは平行線をたどっています。私たち地元の超党派の議員は来週、この2社を呼んで計画変更を働きかける話し合いを持つことになっています。

 住民は、私たち区議会と条例を制定した荒川区自身に建築主に対して現行計画の変更を働きかけてほしいと強く求めていますが、この問題は、区の意思である条例に対する挑戦とも言えます。条例を制定された経緯を振り返り、区としてどのように今回の事態をとらえられるか、区の認識と今後の対応を伺います。

 まちづくり政策に関連して、もう一点、所得の少ない若者の区内居住を支援し、定住促進するための住宅政策について伺います。

 私は、かつて公的住宅政策から漏れた若者たちへの支援策として、地域の行事への参加や地域コミュニティへの協力を条件に家賃補助などの方法をとる借り上げ区民住宅を実施したらどうでしょうかと伺いました。渋谷区では若年層への家賃補助で定住化を図る施策を行うようですが、荒川区はいかがでしょうか。その後の検討経過を伺います。

●さて、三つ目に、荒川区版「小さな政府」を今後も続けるのかということをお伺いしたいと思います。民営化が推進されて久しいのですが、その弊害と今後の対応策についてお伺いいたしますので、お答えください。

 実は保育園の民営化についてもお伺いする予定だったのですが、時間の関係からこの本会議での質問は非常勤職員の問題のみ質問することにいたしました。高梨部長、ごめんなさい。予算委員会でやります。

 荒川区は、非常勤職員の待遇改善を他自治体に先駆けて行ってきました。このことは議会も超党派で求めたことであり、苦肉の策とはいえ、私も一定の評価をしています。しかし、小さな政府政策の推進によって増加の一途をたどり、勤続年数も長くなる一方の非常勤職員を現行の公務員法の単年度の臨時職員だとしていつまでも位置づけておくのはもう無理です。こうした法改正も視野に入れないと限界が生じます。こうした制限のもとではありますが、今回どのような制度改正を行うのか、その内容とねらいについて改めてお伺いしたいと思います。御答弁をお願いいたします。

●最後になりますが、今後予測される税制と財政出動のあり方についてお伺いしたいと思います。

 民主党税制の基本は「控除から手当へ」(「控除から給付」へとも言いますが)、まあ控除から手当へであります。今後、こうした税制が推進されるとすれば、地方自治体と住民に大きな影響が出ると思いますが、どのように対応されるのか。私の見たところ、残念ながら応能税制を推進する考えはないように思いますが、これで果たして富の再配分が機能し、極端に開いた格差の縮小になるのか。そして、荒川区民が豊かになり、結果として荒川区の財政が潤うのだろうか。私は大変疑問を感じざるを得ません。

 手始めの子ども手当ですが、これは中学生以下の子供ひとりに毎月2万6千円、年額で31万2千円、ただし、来年度は半額支給ということになっていますが、これを所得制限なしで支給するという制度です。

 問題は、手当の支給とセットで実施する所得控除の廃止であります。政府は、来年度の税制大綱で子ども手当の創設にあわせて、国税である所得税と地方税である住民税の両方について扶養控除を廃止すると言っております。年少扶養親族(16歳未満)はすべて廃止、特定扶養親族のうち16から19歳は上乗せ部分の廃止ということのようであります。ことしの税制大綱にはそう書いてありました。子供のいない世帯を考慮して配偶者控除にはとりあえず手をつけてはいません。「住民税も控除廃止だなんて話が違うじゃないよ」という声のとおり、選挙前は住民税は現状のままと言っていましたから、これは公約違反です。

 半額支給の来年度は廃止をせず、所得税が2011年度から、住民税は2012年度から実施されるということのようです。参議院選挙を意識しているんでしょうね。控除の廃止で増税になる分を差し引くと手当の実施はどうなるのか。私は3歳未満の子供がひとりいる家庭でシミュレーション、試算をしてみましたが、月に1万円前後にしかなりません。子供の数が多ければ手当も増えますが、増税額もふえてきます。住民税の控除をなくせば非課税世帯から課税世帯になって大幅増税になるケースもあり、国民健康保険料や保育料、都営住宅の家賃にもはね返るので、所得の少ない世帯には大きな打撃になります。

 子育て世代からは、「手当を配って税をふやすなんて面倒なことをやるよりも、保育園をふやしたり、教育費の負担を軽くしたりするほうがいいんじゃないの」「民主党がヨーロッパ税制をマネしてるみたいだけど、もしそうするのならば、子育てに必要なもの、例えばおむつだとかミルクだとかは最低消費税対象外にしてほしいよ」という声が多く聞かれます。ヨーロッパは、間接税の税率が高いけど、課税対象外の品目も多いんです。これなら所得の低い層に負担が重い逆進税制の緩和策ということになりますが、今回はそういう政策はありません。

 民主党税制の基本は、先ほども申し上げたように、控除から給付へであります。控除を廃止すれば所得の再配分で低所得層に恩恵があるというような主張をされて始められたことですが、実際にはそうはなっておりません。また、財界が執拗に要求してきた累進課税の緩和(フラット化)を見直して応能税制を進めるような様子も今のところありません。もし給付を継続しようとすれば、財源としては消費税増税しかないということになります。したがって、菅さんもあのような発言をなさっているのでしょう。ブレーンの学者の主張もそのようです。誰を優遇する税制なのか、これは国家の基本問題です。公正な税の捕捉に名をかりた納税者番号制も出てきそうです。これまで税で特権を行使してきたのは一体誰なのか、ここも私たちの議論のしどころではないでしょうか。

 財政出動についても、決して豊かとは言えない自主財源の状況を抱える荒川区としては悩ましいことだと思いますが、所得の低い子育て世代や若者には積極的な財政出動による支援が必要です。裕福な渋谷区を例にとって申しわけありませんが、所得が4百万円以下の子育て世帯の保育料を無料にする政策を渋谷区は打ち出しています。

 西川区長は、雇用対策について、以前、委員会で「昔の失対事業のようなことをやる必要もある」と発言されましたが、こういう考え方で安定的に職員を雇用するという考えも大変重要だと思います。このまま手をこまねいていては、区民の窮乏化が進み、税収も悪化の一途をたどる悪循環になってしまいます。課税自主権を発揮して累進課税を強化するというような手法も可能ではないかと思います。自治体の長として、今後予測される税制と財政出動についてどのようにお考えなのか、見解をお伺いしたいと思います。
以上で私の一般質問を終わります。

(西川太一郎区長 答弁)

 斉藤ゆうこ議員の御質問のうち、私からは、税制及び財政支出に関する議員の御意見に対して私の意見を申し上げるという形の答弁になりますことをお許しいただきたいと思います。
 子ども手当の創設に伴う所得税及び住民税の16歳未満の扶養控除の廃止等を内容とする税制改正につきましては、今国会に関連法案が提出されております。また、今後の中長期的な税制のあり方につきまして、政府税制調査会においてさまざまな議論がなされているところであります。これらの税制改正は、区民生活にも大きな影響があることから、区といたしましては、引き続き審議の動向等を注視してまいります。
区におきましては、これまでもその時々の社会経済情勢等を踏まえ、区民生活の実態をつぶさに把握し、区民の皆様が必要とするところに重点的に財源を配分してまいりました。区内企業の受注にも配慮して実施した施設建設や改修工事などは、区内企業への一定の経済波及効果があったものと考えております。また、障害者自立支援法の制定に伴い、国に先んじて実施した自己負担の軽減措置などは、弱い立場や配慮すべき立場に立って必要な支援を行ったものと考えております。
これらは、いずれも区民の皆様の日々の暮らしに接し、その切実な思いに触れている基礎自治体だからこそなし得たものであります。今後ともこのような姿勢を堅持し、限られた財源を最大限に活用し、めり張りのきいた、かつ、きめ細やかな配慮の行き届いた区政運営に努めてまいりたいと考えております。
斉藤ゆうこさんが色々とお考えをこの場で開陳をされました。その一つ一つについて必ずしも私は同じ意見ではありませんが、しかし、共通する認識としては、地方自治体の長として、現在の法律の中でそれに忠実に従って条例をつくり、また法律の精神を守りながら、黙ってやっていればいいんだと、おまえたち地方自治体はそれでいいんだ、というような姿勢は、今の内閣はまだ発足して間もありませんからそういう姿勢は見られませんが、前は内閣というよりも、前の国家官僚の中には、そういう生意気なことを逆に言うのがいました。若い課長補佐ぐらいの、企画官ぐらいの者が電話かなんかかけてきて、法の精神に反する、というようなことを言うから、君は誰に向かって言っているのかと、私は電話で喧嘩したことも何回もあります。
 したがって、偉そうに言うわけではありませんが、これからも本当の意味での分権が必要であるという場合には、たとえ相手が国であろうと誰れであろうと言うべきことはきちっと言って、現場の声、現場だからわかるということをやっていく必要があるというふうに思います。
本店に対して対抗する青島君のような気持ちでやらなきゃいけないと思いますが。おわかりにならない方がいるといけない。「踊る大捜査線」の青島刑事のことを言っているんですが、それぐらいの気分で私はやっていきたいというふうに思います。
 しかし、現在法律で規定されているものの中で、我々が幾ら主張しても通らないものが残念ながらあります。それを議員のお立場から、むしろ斉藤ゆうこ議員個人の戦略的なお立場もあって色々とおっしゃることは私はよく理解できます。また、議員としてそれは権利だとも私はよく承知をいたしております。しかし、自治体の長として、同じ方式でやれと言われても、無責任に通ずることもございますし、そうでない方式でやらなければならないということもぜひ御理解をいただきたいというふうに思いますが、区民がいろんな意味で今、懊悩呻吟している時代であります。この方々に対して限られた力でありますが、持てる力のすべてを発揮して荒川区で幸せになっていただくと。
 これを指数化していくということは、おっしゃるとおり大変難しい作業ではあります。しかし、目標なくして戦略は立てられない。どこへたどり着き、その結果どうなるのかという目標、目的をきちっと明確にしてこそ、初めてそこに至る道筋を確立できるわけでありまして、私どもはそういう意味で今、だからこそ全国のマスコミや自治体から大変多くの注目をこの荒川区の幸福指数化の問題についていただいているというふうに思っております。
 残りの問題につきましては、所管部長から御答弁を申し上げます。

(石原 久・産業活性化担当部長 答弁)

 政府の中小企業支援策に対する御質問にお答えいたします。
 まず、中小企業金融円滑化法の運用実態に関しましては、金融機関にその実施状況と体制整備状況等の定期的な開示が義務づけられており、本年3月末までの対応状況を45日以内に開示することとなっております。荒川区の実態につきましては、荒川区しんきん協議会を通じ把握に努めてまいりたいと思います。
次に東京信用保証協会の状況に関してですが、東京信用保証協会が行った代位弁済は、平成21年度は11月末時点で既に前年同期比30パーセント増の1493億円となっており、これらに対する負担が必要な状況となっております。
また、新たな保証制度に関しましては、東京都が民間保証機関と連携し、東京都新保証つき融資制度を今年度から実施しているところであり、その動向を注視してまいりたいと思います。
 次に金融検査マニュアルに関してですが、今般の中小企業金融円滑化法の施行にあわせて、条件変更等を行う際に、経営改善計画等がなくても最長1年以内に計画等を策定することができる見込みがあれば不良債権とならないことなど、中小企業に配慮した改定を行っております。
 なお、区内企業の資金調達は、信用金庫などの地域金融機関に多くを依存しております。地域金融機関から御指摘のような要望がある場合には、国に対して必要な措置を求めてまいりたいと思います。
 最後に、中小企業の東アジア市場への進出支援に関しましては、これまでも中小企業基盤整備機構との連携によるセミナーでの情報提供や海外の見本市への出展費用の助成を行うほか、外国特許取得に関しては東京都中小企業振興公社と連携を図るなど、区内中小企業の国際化の取り組みを支援しているところでございます。国におきましても、JETRO(日本貿易振興機構)や中小企業基盤整備機構などを中心にさまざまな支援策を展開しているところですが、今後、区内企業の実態等を踏まえ、必要な支援策を要望してまいりたいと思います。

(高野政義・産業経済部長 答弁)

 商店街振興に関する御質問にお答えいたします。
 まず、荒川区内における大型店の出店の状況でございますが、イトーヨーカ堂三ノ輪店が開店した昭和43年当時、店舗面積が5百平方メートルを超える大型店は2店舗で、店舗面積の合計は4270平方メートル。その後、区が大規模商業施設の出店に伴う地域環境保全のための要綱を制定した平成9年には、11店舗で2万1729平方メートル。現在は28店舗で5万5713平方メートルとなっておりまして、昭和43年と比較いたしますと約13倍の店舗面積となっております。
 大型店の出店を規制する条例をとの御質問ですが、現行法上、需給調整という観点から出店を規制することができないことから、大型店の周辺地域の生活環境を保全するという観点から区は要綱により対応しているところでございます。大型店の出店について、新政権には一定の制度の見直しを期待したいということは、委員会でも申し上げたところでございます。私どもも国に対する働きかけの努力をしてまいりたいと存じます。
 空き店舗対策でございますが、商店街の空き店舗の発生を抑制し、来街者を増加させていくことは重要な商業振興策であることから、今後とも商店街の主体性を尊重しつつ、必要な場合には図書サービスステーションのように区の事業で空き店舗を借用する、あるいは高齢者福祉や子育て支援等、区の政策目的にも合致する空き店舗活用策に対する支援の創設や拡大など柔軟に対応し、商店街の空き店舗対策に努めてまいります。

(倉門彰・都市整備部長 答弁)

 まず、マンション条例に関する御質問にお答えいたします。
 議員御質問の計画は、条例制定時に駆け込みにより建築確認申請をしたものでございます。そのため、市街地整備指導要綱の手続も踏まずに、条例の網からも逃れた計画であると認識しております。加えて、本計画は、確認申請から二年も経過した今になって事業を再開するものであり、区といたしましては、これからも引き続き近隣住民の意見を聞きながら、可能な限り条例や要綱に適合するよう指導してまいります。
 なお、仮にさかのぼってこの計画を条例に基づき変更したとしても、日照問題につきましては計画規模を縮小しない限り改善は難しいものと考えております。よろしく御理解のほどお願いいたします。
 次に、若い世代への住宅支援に関する御質問にお答えいたします。
 荒川区は、昨年策定した住宅マスタープランの中で、多様な世代が地域の中で住み続けられる住まいづくりを住宅施策の目標の一つとしております。この方針のもと、区では高齢者や多子世帯に対する住宅施策について優先的に取り組んでいるところでございます。
 一方、将来性豊かな働き盛りの若い世代の住宅につきましては、基本的にはみずからが対応すべきことと考えております。しかしながら、昨今の経済情勢の悪化による若い世代の住宅困窮者がふえつつある現状から、今後、議員御指摘の若い世代への支援制度のあり方について研究を進めてまいりたいと考えております。

(藤田満幸・管理部長 答弁)

 非常勤職員にかかわる御質問にお答えいたします。
 今回の改正におきましては、前回新たに取り入れた複数の職層を設けることによる処遇の改善を一層進めるため、三層から六層へと職層を増加いたしました。これにより、非常勤職員の方々がよりステップアップを実感でき、処遇の改善につながるものと考えております。
 さらに、育児休暇制度と同様の役割を果たす育児休業後復帰制度を創設し、希望により3年以内での復職が可能な仕組みをつくりました。また、福利厚生を充実する観点から、常勤職員同様に職員寮への入寮ができるよう、今議会に条例の改正をお願いしているところでございます。
 非常勤職員については、単年度雇用という制度上の制約がありますが、現行制度内においてもさまざまな工夫を行うことにより処遇の改善を図ることが可能と考えております。非常勤職員の方々が区政を支える重要な役割を果たしていただけるよう、その処遇の改善に努めてまいります。