私は、あらかわ元気クラブとして、議案第61号「荒川区国民健康保険条例の一部改正」に反対する討論を致します。
この条例改正は、去る6月14日、通常国会において自民・公明両党の賛成で可決された「国民健康保険法改正」にもとづいて行われるものです。この法改正については、国会審議中から「これ以上、高齢者の生活を圧迫するのか」との強い批判がありましたが、本日の条例改正をもって、来週10月1日から、区民に大きな負担を強いる法改正が現実のものとなります。条例改正を行う区議会の責任は大変重いと思います。
さて、この法改正は、昨年の介護保険法の大改正と同じで、その目的が『保険給付の抑制』にあることは明白です。
まず第一に、一定所得以上の70歳以上の高齢者は10月から負担割合が現在の2割から3割になります。
「一定所得以上」の線引きは、課税所得145万円となっています。しかも、8月の判定で1割から2割負担になり、今回の改正で更に3割負担になった方たちもいます。荒川区では約1000人の方たちが該当するようです。
これは、昨年行われた『公的年金等控除の縮小』と『老年者控除の廃止』の影響で基準が変わってしまったからなのですが、高齢者単身世帯では収入が520万円未満、高齢者複数世帯では383万円未満である場合は、本人が申請すれば元の1割負担に戻せることが政省令で決められたそうです。何とややこしい事をするのでしょうか。地方自治体の窓口業務は多忙、繁雑をきわめ、混乱しています。もちろん、荒川区もそうなっています。厚生労働省の政省令ひとつで、いつも市区町村が振り回されている形です。
いずれにしろ、『現役並み』などと言って、現役世代とはちがう心身の状況となった高齢者に負担増を押し付けることはまちがっていると思います。
次に、療養病床の食費と居住費の自己負担が増えることになります。(※注)
保険者から医療機関に対して支払われる『入院時食事療養費』が『入院時生活療養費』に変わり、高齢者の患者さん本人の負担が増えた分、医療機関に支払う分が、これまでひとりあたり3万4千円から1万円に減ります。まさに今回の法改正のねらいの通り、『給付の抑制』です。
さらに、これまで認められなかった保険外診療が一部解禁になります。
高度医療や新薬の認可などに色々な面はあるでしょうが、事の本質は『医療もお金次第』ということを公然と認めたという事でしょうか。日本型社会保障の変質を痛感します。
はじめに申し上げた通り、今回の条例改正は、この間たて続けに行われてきた介護保険や医療制度の改悪とあいまって、高齢者とその家族、とりわけ所得の少ない高齢者の生活を圧迫するものです。日本が誇る国民皆保険、その基礎を掘り崩すような社会保障構造改革はやめるべきではないでしょうか。
厚生労働省から荒川区の国保課長まで「高齢者にも負担を求めなければ、現役世代の負担にハネかえる」と同じ事をおっしゃいますが、果たしてそうでしょうか。私はそうは思いません。高齢社会がすすむ中で、国が社会保障に責任を持たなくて、どうして国家と言えるでしょうか。国が国家財政を使って、地方自治体が行う国民健康保険事業をバックアップしてこそ、税金を収める甲斐もあろうというものです。その国家財政は、現役世代の誰に負担を求めるのか、誰に財源を負担させるのか。そこが問題なのです。高齢者ではなく、莫大な収益を上げる大企業と高額所得層に負担を求めるべきだ、と私は思います。
最後に、介護保険改正、障害者自立支援法と弱い立場の人たちに負担を強いる法律が国会で通るたびに制度改正に追われる地方自治体と議会はこれで良いのでしょうか? 与党の皆さんにも問題提起を致しまして、私の反対討論を終わります。
(※注:本人負担は、これまでの月2万4千円から5万2千円に増額。非課税世帯では約2万が3万円に、年金80万円以下の世帯では約9千円が2万2千円に、老齢福祉年金のみの世帯では0が約9千円に、それぞれ増額。)