斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、あらかわ元気クラブとして、1996年度荒川区一般会計予算に反対の立場から討論を行います。
 来年度予算の特徴は、何といっても長期不況のもとでの苦しい区民生活を反映した区税収入の減少、加えて減税の影響、また、バブル崩壊とこれまでの放漫財政による東京都の財政危機が表面化し、財調の繰り延べなど、荒川区にとって今後にわたって深刻な問題を含んでいることであると言えます。
 私たちが今回の予算に反対する理由は、大きく分けて2つあります。1つは、来年度予算に盛り込まれた幾つかの事業、または事業の進行に反対であること。もう1つは、今後の財政状況を考えたとき、対症療法的な対応策ではなく、荒川区として根本的な財政戦略を持つ必要に迫られていると思いますが、その姿勢が見えないことであります。
 今回の討論では、まず各款にわたって問題点を述べ、最後に総論として私たちの意見、提案を申し上げたいと思います。
 まず、議会費について。海外視察費についてさまざまな質疑が行われ、修正案にも削除が盛り込まれております。1988年に海外視察が実施された折、私は反対の理由と改善すべき点について、当時の議長に提出をいたしました。しかし、残念ながら、その後、これといった議論もなく、区民の冷たい視線を感じつつも、毎年行われてきたのがこの海外視察であります。
 行革論議のせいかどうか、明確におっしゃらないので理由はよくわかりませんが、最大会派である自民党区議団が今年は、これも今年かどうかよくわかりませんが、不参加を突然に表明し、修正案提案者は、これを英断であるなどと讃えております。本当にそうでしょうか。
 そもそも、議会の活動として、行政に予算をもらったこの事業について、予算委員会の場でどうなんだと行政が言われても、それはあなた方自身の問題でしょうとおっしゃりたいのではないかと思います。そう、これは我々自身、議会自身が議論を重ね、あり方について結論を出さねばならない問題であり、この議論をさぼっておいて、区民の目ばかりに気をとられ、行く行かない、予算を削る削らないなどと予算委員会でやっているのはまことに恥ずかしい限りです。
 私たち元気クラブは、3月14日、西野議長あてに要望書を提出し、この際問題点を明らかにし、今後のあり方を協議するよう呼びかけました。見聞を広める議員の研修といった位置づけにとどまらず、区政の将来構想に向けた会派の共同研究の場となり得るようにすること、区の国際交流事業などに対して、議会としてのサポート、役割が果たせるようにすることの2点を提案し、超党派で区民からも評価される視察が実行できるよう議論することを要望いたしました。この問題を、費用だけの問題にせず、位置づけからきちんと考え直していくのが、どの会派にとっても責任のある態度かと思います。
 また、議会自身の問題といえば、総務費に入りますが、調査研究費の問題もあります。調査研究費は会派の政策研究を進める上で必要不可欠な予算です。確かに、報酬審議会が開かれず、その一方で目立たない調査研究費を引き上げる、報告書もまちまち、これでいいとは言えませんが、幹事長会の議論はまことにお粗末。これまたもらうのかもらわないのか、今期分だけかどうか、これもよく知りませんが、返上するから多会派はもらったと言って新聞折り込みで攻撃する会派がおります。行革の合併症と言おうか、何とも恥ずかしい限りです。議会内部できちんと議論する能力が問われていると思います。
 区民の皆さんが不況の折、お金の使い道に厳しい目を向けているからといって、こうしたことを区民にわかりやすい議論だとばかりあげつらうのは、区民をばかにした議論だと私は思います。
 もう1点、恥ずかしい話があります。費用弁償は、条例に定められ、本会議、委員会出席に対し1日を単位として出されておりますが、理事会については解釈ということでの運用でございます。条例に根拠はどこにもありません。
 平成3年の地方自治法一部改正により、議会運営委員会が委員会となりましたが、これ以降、幹事長会はその終了後に、なぜか同一メンバーによる議運理事会を開き、本会議、委員会のない日には、これを対象にして費用弁償が支払われているのであります。
 議会運営委員会に対して支払われた費用弁償は、平成5年55万円、平成6年65万円。実質、幹事長会出席のための費用弁償の運用であります。額の問題ではありません。なぜ、こうしたことを自民党から共産党まで、幹事長会出席会派が行ってきたのか。私は、幹事長会を傍聴するようになって、初めてこの仕組みに気がつきました。議会自身が改めるべき例として申し上げました。費用弁償のあり方として、今後、えりを正していただきたいと思います。
 さて、総務費の住民票自動交付機の導入、来年度からの印鑑証明の導入には反対であります。戸籍住民課より詳細な資料をいただいておりますが、残念ながら、今回は質疑の時間がとれず、いずれ所管委員会等で明らかにしたいと思いますが、依然として時間外利用は大した変化もなく低調、住民票1枚当たりのお値段は、ランニングコストのみで割り返しても1枚4万8000円から5万4000円というのが2年度目からの推移です。
 私は、画一的な土曜閉庁には反対ですが、この土曜閉庁を理由とした自動交付機の導入、一体だれのためのものだったのか、改めて問われると思います。他区に先駆けてこんなものを導入するのなら、もっと先に先駆けなければならないものがあるはずだと思います。
 また、民間葬祭場業者の無秩序、野放しの営業に対する街づくりの観点からの対応の1つとして、区民葬斎場問題が取り上げられましたが、既に港区では、町会や自治会の集会所などの施設を地域葬儀所として使えるよう、備品購入のための補助金交付を始めました。97年度までに区内4地区に1ヵ所ずつ設ける予定とのこと。私たちは、改めて新規施設の建設ではなく、ひろば館や町会会館などのうち、条件のあるところから支援を始め、事業を急いで開始できるよう、来年度必要ならば補正予算等も含めて対応することを強く要望いたします。
 さらに、6月オープンのムーブ町屋については、町屋中央地区再開発の立ち上がりからの経緯を含め、反省すべき点は区民に対しても明らかにして、今後の教訓とし、南千住などの大規模開発で地域の主導権ある開発へと転換することを肝に銘じていただきたいと思います。
 また、50億云々という建設にかかわる費用のみが一人歩きするのではなく、区の中心をなす町屋の再開発に区が責任をもって床を取得し対応し、お金をかけたかいのある事業展開を望みたいと思います。
 女性センターについても同様に、相談活動や独自企画など、充実した内容で、単なる貸し館事業とならないよう努力していただきたい。名称は、男女平等推進という目的を明確にあらわしたものとし、男女共同社会で女性のよいパートナーとなり得る男性の教育、啓発に力を入れていただくことを要望いたします。
 次に、民生費について。努力されている行政の皆さんには大変申しわけありませんが、残念ながら、相変わらずメニューだけ、施設建設だけ、魂がもう一つ入っていないと感じるのはなぜでしょうか。きょうは、障害者に対して派遣されている公社ヘルパーの例をお話しします。
 進行性の難病で次第に機能がまひしているある障害者のお宅に来たヘルパーさんは、背中がかゆくてもかいてくれない、貴重な情報源であるファックスを送信してと頼んでも「家事援助の対象外の仕事ですから」と応じてくれないと嘆いています。また、けがで家族の世話ができなくなった障害者のお宅に来た公社ヘルパーは「本人の家事援助に来たのだから、洗濯も皿洗いも本人のもの以外しない」と言ったそうです。これは一体どうしたことでしょうか。必要なところにちょっと手を貸すことがなぜできないのか悲しくなります。サービスを受けている方の側のいらだちはいかほどのものでしょうか。
 私は、公社ヘルパーが自給アルバイト化しているのではないかと危惧します。先日、テレビで放映していた新潟県大和町では、職員や退職して地域に入った保健婦さん、そして町民がみんな協力し合って、心の通った多様な実践をしています。実情を確かめ、改善をお願いしたいと思います。
 産業経済費については、区内中小零細事業者の実態について行けない事業の現状に矛盾といら立ちを覚えます。融資事業が減額した背景には、信用保証協会に対し強い姿勢で臨み、本当に必要な人に適用できていない現状があると感じることから、この減額予算には反対であります。商工業振興に支障を来している経済情勢の厳しさに、行政は充分対応できていないのではないか、姿勢において負けていないか、不安を禁じ得ません。
 大型店出店問題についても、区の基本姿勢が問われるところです。かつて、町屋中央地区の赤札堂撤退問題の折、私は本会議で行政に総括を求めましたが、このとき、答弁にあった環境・交通など、総合的な街づくりの視点から考えるという立場で「まちづくり条例」を制定し、調整権限を都から移行させて、独自の基準を設け、まちの発展に寄与できるような対応を急ぐべきではないかと思います。
 また、消費者にとって、価格破壊・規制緩和は歓迎すべきことであるといった見解は一面的であると思います。消費者とは納税者であり、勤労者であります。価格破壊が国の産業構造をゆがめ、雇用に影響を及ぼすことは明らかです。既に消費者運動は、目先の利益ではなく、長期の経済環境に目を向けています。区として、消費者の立場からも大型店のあり方には厳しいチェックを入れていただきたいと要望します。
 さらに、今後のリサイクル事業について申し上げます。空き缶・古紙の回収だけのリサイクル事業では、「便利」という一言で拡大してきたこれまでの消費生活の後始末や罪滅ぼしに終わってしまいがちです。出発は空き缶や牛乳パックのリサイクルであってもいい、でも、これにとどまらず、リターナブルな瓶の種類の規制強化や、トレイを使わずはかり売りを進めることなど、国やメーカー、大型店に求めていくことが今後の方向であると考えます。元栓を閉めることへ向かう消費者行政への方向転換を強く要望いたします。
 土木費については、予算委員会の質疑を通じて2点申し上げました。日暮里・舎人線の事業については、私たちは計画段階から現在まで全く納得することができません。このまま住民の反対を押し切って事業が進行していくことには明確に反対であることを再度表明しておきます。都が現場の感覚に遠いのは当然としても、区にとってはみずからのまちの切実な問題です。交通が通れば便利といった安易な決めつけで、尾久、日暮里のまちがこうむる被害を真剣に受けとめてこなかったと私は思います。駅の位置などについて質問させていただきましたが、今後も事実関係について厳しくチェックを入れていくつもりです。また、荒川版住専問題の象徴であるコリンズビル問題については、区として独自に調査を行い、立ち入った状況まで把握し、防災・防火・防犯など住民にとって切実な街づくりの問題として早急に解決の方策を出すよう強く求めます。
 教育費については、まず来年度からの学校給食調理業務の民間委託に反対であります。今後、私たちが提案する地域に役立つ学校給食の実践を直営でぜひ行っていただくよう要望し、また、民間委託の見直しを行うよう求めます。
 さらに、区内中学校卒業の無職少年による犯罪、これは氷山の一角であろうと思います。いわゆる「引き締め」の問題では解決しないと私は思います。地域に根差した教育、人間を大切にする教育、そして働くこと、働いて賃金を得る当たり前の営みを大事にする、そうした教育を進めることが根本であると思います。一層の努力を求めます。
 さて、歳出の各款にわたり事業の賛否、要望を述べさせていただきましたが、本予算に反対するもう1つの大きな理由として、冒頭に述べた荒川区としての財政戦略に欠けるのではないかという点について申し上げたいと思います。
 歳入構造の転換は荒川区の生命線である、今回はこのような問題意識から総括質疑と締めくくり総括質疑を行ったわけですが、財政戦略と荒川区をどういうまちにするのかの新たな基本構想を据えることは、全く不可分の問題であります。
 当たり前のことですが、私たちは区税収入をふやすには、区民が豊かにならなければならない。そのために、究極の道としての地域経済の自立は欠くことのできない問題であることを訴えたい。産業政策を中心軸に据えた新たな基本構想の策定で、荒川区の未来をしっかり描くことが長期的な自主財源拡充の根本策です。一体のものとして考え、早期に取り組みをお願いしたい。
 私は、予算委員会に先立ち、一般質問で沖縄県の国際都市構想を取り上げました。県の担当者は「沖縄県は自主財源が小さく22%、国への依存から抜け出し、21世紀には自立した地域経済をつくりたい」と、この構想にかける期待を語っています。荒川区も、全国663市中613番目であります。区税収入が構成比16.1%の私たち荒川区。全国における沖縄県が、東京都の中の荒川区であると言うこともできると思います。こういった共通性もあるわけです。財政戦略のもとになる基本構想策定を重ねて求めます。
 さらに、赤字国債発行で決定的な不健全財政を余儀なくされている国家財政。バブル崩壊で調整3税が急速に落ち込み、緊急事態に突入したとされる都財政についても、区はこれらの影響を大きく受けることから、一言申し上げたいと思います。
 国や都の財政破綻の原因はどこにあるのか。国民や都民にないことは明らかであります。財政破綻の責任を棚上げし、その負担を国民、都民に押しつけるような議論に、区はくみしてはならないと思います。また、そういう負担の押しつけに国民は黙っていないということを端的に示したのが住専問題であります。
 国についていえば、赤字国債11兆円が7年ぶりに発行され、国債発行は過去最高の21兆円、平成7年度末には公債残高222兆円に上ると見込まれ、国民1人当たり192万円の借金ということになります。歳出の徹底した見直しをと大蔵省は言っておりますが、それなら、まず第一には、拡大する防衛費と年間2700億円にも上る「思いやり予算」であろうと私は思います。
 特別養護老人ホーム建設にかかる区の支出が、国の算定基準が不当に低く抑えられているため、多額の持ち出しを余儀なくされている超過負担の構造を見るとき、区はより強い姿勢で国に対するべきであると感じます。都についても同様で、この緊急事態は、巨額の財政負担を残した臨海部副都心は言うまでもなく、国際フォーラムに荒川区の予算の2倍以上を投入するなど、バブル都財政が原因です。そのツケをいきなり都民の懐に回すようなやり方には、区として断固として反対していただきたい。強く要望いたします。
 最後に、予算委員会での質疑に関連し、同和対策事業について簡潔に申し上げます。
 事業の法的根拠、荒川区における経過や必要性、目的、区と部落解放同盟とのかかわり等、同和対策事業の位置づけについては、本会議、予算委員会で区当局が述べられたとおりであると思います。また、私も予算委員会で質疑をさせていただき、運動体と行政とがよりよい関係で、部落差別をなくすため取り組みを進めるべきであること、補助金の報告のあり方は不適当で改めるべきであることを述べ、その旨答弁をいただきました。
 問題は、東京において部落差別は解消しているのかであります。この点について、共産党議員団の認識には決定的な誤りがあります。事実から目をそらそうとしているのか、それとも、党利党略ゆえに認識がねじ曲がってしまったのか、私にはよくわかりません。
 最近、東京において部落差別が頻発しているということ、これは疑いのない事実であります。昨年の大田区の大京マンションの建設、そして、ことし葛飾区のダイヤ建設のマンション建設問題。ここでは、区の窓口にマンション建設業者が「この建設地域は部落かどうか」ということを調査した、この事件であります。
 これは、環境改善事業で荒川8丁目に建てている業者と同じ業者であることなどから、また、ここに住んだ新住民から区に、また建設業者にもいろいろな苦情が寄せられていることから関連は明らかではないかと、私たちの問題でもあると私は感じています。
 また、この2、3年都内で頻発する落書き、年若いロック系のミュージシャンなどを名指しに特定した差別落書きです。また、1989年に初めて発見されたパソコン通信への地名総監の登場は人々を戦慄させました。情報化社会で起こった新手の事件です。昨年12月には、世田谷区の清掃事務所で職員による「気違い野郎、部落へ帰れ」という、そういう差別事件が起きています。また、足立の職安では日清紡就職差別事件もあり、そして、私が先日も申し上げたように、都の高校教職員組合の調査では、統一応募用紙を使わない企業がふえたなど、数えればきりがありません。既に各会派に資料が配付されていると思いますので、どうぞ事実を直視していただきたいと思います。
 東京の被差別部落には、江戸時代以降独自の歴史があり、荒川の部落の歴史は約150年と言われているそうです。都市型の皮革産業、油脂産業の集積地に、地方から厳しい差別を逃れるようにして上京してきた人々が加わって形成された今日の被差別部落。人々の上には、現在なお結婚差別、就職差別がのしかかっています。私たちは、差別された人の痛みを知らねばなりません。
 嫁に行きたくないまち荒川区、地図上から消してもいいまち荒川区などと言われたとき、皆さんはどう感じるでしょうか。荒川区はまちそのものが差別されている。このことは、被差別部落や終末処理施設の存在と無関係ではありません。そして、こうした認識は、ほうっておいてなくなるものではありません。国において超党派で取り組まれている部落解放基本法制定を私たちも求め、また、区においても、今後超党派で差別をなくす取り組みを進めていきたいと考えております。
 以上、さまざま述べさせていただきました。各種の事業の見直しとともに、歳出削減だけにとどまらない行財政改革の論議が必要なときです。荒川区の将来像に向けて、党利党略や区民におもねる態度でない論議で財政の弱点を克服することを今後の課題とし、反対討論を終わらせていただきます。