斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、あらかわ元気クラブとして、来年度の一般会計予算に反対の討論をいたします。
 国の予算の対前年比が2.7%増、東京都でも、法人2税を中心とした都税の減収で財政状況が厳しくなってきた状況のもとで、対前年比16.2%増、総額827億4000万円で組まれた来年度予算は、藤枝区長の予算編成上、最も高い伸び率を示しています。
 初年度である90年度が、「率にあらわれない積極的予算」とやらで2.6%の伸び、2年目の今年度が8.1%の伸びですから、その倍の伸び率となった今回の予算が、いかに数字の上では積極的かがうかがえようというものです。来年の区長選挙を意識した突然の大盤振る舞いなのでしょうか。
 まず、施政方針に見る情勢の見方、基本施設について簡単に述べたいと思います。
 この施政方針の基調に、区民一人一人が豊かさを実感し、ゆとりある生活を送るといった主張を掲げたことに、私は根本的な違和感を覚えています。世の中は、日本の社会はそんなぐあいにはいっていないんじゃないでしょうか。昨年来我が国では、社会主義の終えん、資本主義の勝利といった論調があちこちで声高に聞こえていますが、現実の世界は本当にそうなっているのでしょうか。実際には、我が国を含めて、資本主義諸国にも末期症状の陰りが見えている現状であります。麻薬、暴力、ホームレスのアメリカ社会は、日本にとっても全く他人事ではないはずです。資本主義の現実もそう美しいものではなく、要するに、社会主義が先にずっこけて、ほっと一息したというところなのではないでしょうか。 資本主義のリーダーたるアメリカの債務国への転落に始まり、西側を引き締めようとする国際協調路線は、我が国の内政や地域経済に大きな打撃を与え続けています。産業調整しかり、円高しかり、米、大店法問題、そして金属からプラスチックに至るまで、あらゆる業界の下請にまで影響を及ぼす自動車の減産、こうしたことは、日本の村をつぶし、町ごとだめにしかねない状況です。
 もちろん私たちのまちも例外ではなく、これに加えてバブルの崩壊が経済を直撃する昨今の状況は、小さな業者の多い私たちのまちの将来に深刻な影響を予測させています。
 さらに、貧富の差の拡大です。これまでも資本主義が200年を経過して、なお第三世界の戦争と飢餓に苦しむ子供たちを救えていない現実を、むしろ直視すべきではないのでしょうか。
 先ほども述べましたように、日本の国内では、貧富の差の拡大は、教育や日本人の価値観をゆがめるところにまで来ています。既にさきの討論で述べたように、こうした現状はどなたの目にも明らかなのではないでしょうか。見せかけの豊かさの破綻ははっきりしていると思います。
 政府から地方自治体までが、そして労働組合までもが、ゆとり、豊かさを言っています。地球上に飢えた子供がいる世界で、みずからのゆとり、豊かさを主張することは、エゴを通り越して不道徳でさえあると言った人がいましたが、私も全く同感です。地球環境だとか国際化だとかを口にするならば、みずからの立っている場所を見つめ直さなければなりません。施政方針に掲げられている豊かさの実感、ゆとりある生活、少し認識が違っているのではないかと申し上げておきます。
 私は、町田区政から藤枝区政への転換、おくれを取り戻すチェックポイントを以下の3つの点に置いてきました。
 中小商工業振興、つまり地域経済の活性化に本気で取り組んでいるのかどうか。
 住宅政策はどうなっているのか。
 そして福祉をどうしていくのかです。
 これに荒川の教育をどうするのかを加えて、4つの柱についての理念が定まり、方針を持って本腰を入れていくのかどうか、この間見てまいりました。メニューは出そろった、しかし、柱の一つ一つに対する理念や基本方針と呼ぶべきものがないのではないかというのが、この予算に反対する私の理由であり、大きな危惧でもあります。メニュー先行で理念がないとは、昨年の決算でも繰り返し述べてきたことですが、幹がしっかりしなくて、枝葉ばかりという状態には、もうはっきりと終止符を打つべきときです。
 私は、今回そろえられたメニューについて、あれこれけちつけを行うつもりは全くありません。私もこれらの施策の幾つかについては、予算、決算の委員会や、予算要望などで早く実現をしてほしいと要望してきた一人だからです。
 住宅、福祉では、新しいメニューはだれもが必要と感じ、超党派で議論してきたことが実現したものというふうに感じています。区民住宅の借り上げの導入、区内中小企業で働く区外在住者を含む住みかえ家賃助成、障害者住宅の基本調査や在宅女性の健康診査、女性センター建設などは、特に質問、要望を行ってきた経緯から評価のできるものであります。
 プレス発表直後に、ある会合で藤枝区長が、斉藤さん、今度は予算に賛成でしょうとおっしゃったのは、おそらくこうした点を指しておられるのでしょう。
 だが、しかし、残念ながら、先ほど述べたとおり、この問題は、我が区ではここから出発し、こう解決するという基本方針が欠けているのであります。メニューばかりで方針の追いつかない区政は、雨水の漏る穴を次々応急処置をするようなものだったりします。また、一つ間違えば、単なるばらまきにすぎないという重大な誤りに陥る可能性も大ではないでしょうか。
 では、それぞれどのように基本方針をつくるべきなのか、以下、私の意見と提案を述べてみたいと思います。
 まず住宅です。23区の先進区における住宅政策が、その区の特性を分析し、その区らしさを主張していることから見ると、今回、荒川区がやっと住宅問題に最大限の力を注ぐと決意したことは、既に2年おくれであります。おくれの挽回をメニューに盛り込み、何とか調整しようとしているようですが、いまだに住宅マスタープランがない。計画があって施策があるのではなく、まさに逆転して出発し、それを取り戻せていない状態であります。他区の住宅条例などを見れば一目瞭然、その区のさまざまな実態や地域特有の住宅問題が取り上げられ、それをどう解決するのかの基本的な方針というものがあります。その上で区民の居住権をうたっているのが基調となっているんです。こうした住宅条例を一刻も早くつくるべきではないでしょうか。あれこれの緊急施策や目先のことにとらわれず、荒川区の住宅問題解決はこれでいくというものが必要であると考えます。
 まず、本当に実態に手の届く調査、そして住宅条例づくり、本気でやっていただきたいと思います。
 第2に、福祉、とりわけ高齢者福祉についてです。高齢化指数がもう15になる。特養の待機者が80名を超える。追われる高齢者福祉の姿が荒川区にあります。早く特養を、特養をという声が、「質より量」の福祉部長答弁を生まざるを得ない現状を一体どうしたらいいのでしょうか。1つは、特養待機者80名の中にも、さまざまな身体状況の人がおり、ほんの少し手をかすだけで自立生活可能な人も多いという点です。もちろん入所者の状況も同様であると思います。早期にケアハウスをつくること、そして、ワーデンのいる集合住宅の充実を図っていくことで、待機者を減らすことが可能と思いますが、いかがでしょうか。
 また、9.2倍という倍率を示した借上住宅についても、単純な抽選だけではなく、ポイント制などできめ細かくお年寄りの実態を把握して対応することが必要です。
 もう1つ、質より量の特養建設。10年後、20年後にとんでもない施設を残さないために考えていただきたいと思います。
 民間の有料施設を利用する人への負担軽減のための助成などの制度は考えられないものでしょうか。借金して入所一時金、30万とか50万とか100万から200万ぐらいあると思いますが、こうしたものを払ったけれども、毎月の入所費は御本人の年金月額の倍で、家計を著しく圧迫するというのが人々の実情です。もちろん他の自治体との兼ね合いもあり、単独で行えるものではないでしょうが、実態に近づけた制度づくりを働きかけるべきではないでしょうか。
 繰り返しますが、質より量の特養建設を進めた結果、20年後に過ちを残さないために、さまざまな方策を積極的に実行してほしいと思います。荒川のまちの実情に根差した荒川の福祉の姿を明らかにすると同時に、都や国を動かし、制度を実際に近づける努力こそ求められているのではないでしょうか。
 中小商工業振興については、区内商工業の実情に見合った産業振興センター建設のために、もっともっと突っ込んだ区内産業の調査と分析が必要だとだけ申し上げておきます。ぜひ真剣に取り組んでください。
 教育については、地域の学校教育をよみがえらせるために、荒川区として、公教育再生の理念を示せという点です。このままいけば、いくら統廃合を進めても間に合わないくらい、公立小中学校離れは進んでいくでしょう。私立志向は多様なニーズなどと言っておらずに、早く根本策を示してほしいと思います。
 私がこの予算委員会で質疑しなかった本予算の細目についての具体的な意見や施策の提案は、今後、理事者の皆さんと具体的に議論をしてまいりたいと思います。
 最後に、組織から意見を吸い上げる方法論を持っていただきたいと述べたいと思います。荒川のまちの実態に根差した方針を持てないのは、優秀な幹部職員の皆さんが荒川区民の実情を御存じないからではないでしょうか。机上のプラン、メニューになっている点が見受けられますが、いかがでしょうか。当然知っていてもいいようなことを知らないので、私たちが驚くこともあります。仕事に追われているせいかもしれません。議会対策もその一つかもしれません。実情を知らせる点で、議会が努力を怠ってきたのかなと反省もしました。区民とひざを交えて話し合い、区民の実際に触れよと私は言いたいのです。なるほどそうだったのかと思いつくヒントもあるのではないでしょうか。そういう点を施策づくりの考え方に生かしていくこと。理念もできるし、メニューも実際から出発したものになり、現状打開に役立つものになるはずだと思います。
 今後、幹部職員は、私たち議員とともに、区役所の6階や4階や3階から住民のところにおりていき、ここから出発して、これをこう変えるという、荒川らしい施策の基本をつくるため、一緒に考えていこうと皆さんに呼びかけたいと思います。
 私たち議員も、同時に、狭い地域的利害やセクト主義、地域エゴの悪しき代理人とならず、深く積極的な議論を闘わせ、街づくりに貢献していきたいものです。
 目先の仕事に追われ、元気がない行政を感じます。行政の活力は目標があることではないでしょうか。待機者と追っかけっこの高齢者福祉、数字と追っかけっこの行政では元気が出るはずはないと思います。
 そして、職員の定員抑制もそろそろ限界に来ています。福祉サービスの充実には人がついて回ります。職員定数の抑制は、もう既に福祉充実と対立してきているのではないでしょうか。この点ははっきりとつけ加えておきたいと思います。
 民間の力をかりることも否定いたしません。しかし、公的責任は一体どうするのか。ヘルパー150人の目標に対し、現状の15人から、公の責任として職員を何人ふやすのかの計画すら明らかにできないようでは、責任逃れ以外の何者でもないでしょう。
 さて、いろいろ述べてきましたが、827億円の予算に盛られたさまざまな施策に息を吹き込み、生き生きとしたものにしていく作業は、まだこれからです。荒川の街づくりは、政治、社会、経済情勢の困難さを抱え込みながら、本当に大事な岐路に立っていると感じます。議会がこれでよいのかについては、私たちが自分たちで問い直していきたいと思います。
 行政はこれでいいのか。ぜひ区長を初めとする皆さんにも問い直していただくことを願って、私の反対討論を終わります。