斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、あらかわ元気クラブとして、「荒川区特別区税条例の一部改正」に反対する討論を行います。
 今回の区税条例改正は、先の国会で可決された地方税法の改正にもとづくもので、来年4月1日から荒川区が徴収する区民税・都民税を、所得の多い少ないに関わらず一律10%とするものです。
 私は、小泉内閣がすすめる、いわゆる『三位一体改革』の流れの中で、『税源委譲』という名のもとに、地方税における逆進課税に道を拓いた今回の「地方税法改正」そのものに反対であります。従って、これにもとづく荒川区の条例改正には反対を致します。

 この間、我が国では『応能負担』の原則にもとづく累進課税-つまり、所得に応じて段階的に課税を強化される税制が緩和され続けてきました。その最たるものは、1989年(平成元年)に導入された「消費税」と、それと引き換えに行われた「法人税の大減税」、「所得税の最高税率引き下げ」でした。それ以来、「我が国の多国籍企業が国際競争に勝ち抜くために税制面での負担を軽くせよ」という財界の強い要望を受け入れ、税制改正と言えば『税率段階の簡素化』『フラット化』が主要な流れとなり、所得の再配分機能は低下してきたと言えます。
 「所得税などの国税とは違って、地方税は『応益負担』で良い」という考え方があります。今回の改正はこうした考えの下に、地方税の税率を一本化したものです。しかし、『応益負担』というならば、すでにどこの自治体でも、施設の使用料や交付書類の手数料をサービスの対価として、ほとんど所得に関係なく区民の皆さんからいただいています。これが地方自治体が行うサービスに対する『応益負担』ではありませんか。その上、地方税にまで一本化を導入するのは、税に対する公平感を著しく損なうものであります。
 今回のように区民税・都民税と言えども、課税所得が200万円以下の人と、700万を超える人とが、同じ10%の税率で荒川区に税金を収めることになる条例改正を、区民は果たして公平と思うでしょうか。「所得税と併せれば、ひとりひとりの負担は変わらないように調整した」というのが今回の改正のミソなのですが、税に対する不公平感は解消していないばかりか増大するのではないでしょうか。
 国税も、地方税も、もっとも公平感のある税制は応能負担の累進課税であり、この体系は国においても、地方においても、維持すべきと考えます。大企業が「税負担が重いなら海外に拠点を移す」などというのは、まことに愛国心に欠けた言い分であります。国のためにすすんで税を負担するのが大企業の愛国心というものではないでしょうか。
 昨日の発表によれば、昨17年度の決算ベースで、法人税と所得税は予算見込みの44兆円を上回り、49兆円となったようです。これは、トヨタなど、この間減税の恩恵を受けてきた大企業の収益が好調なこと、また株の配当などで利益を得た人々の所得が増大したことの反映である、と報道されています。
 このように、所得格差の拡大が明確となった今こそ、この間緩和してきた累進課税を再び強化すべきであり、地方税といえども、この時期に税率一本化で高額所得者に減税するのは、時期にかなわない逆行した政策ではないでしょうか。

 さて、今回の地方税法改正の背景はいうまでもなく、『三位一体改革』と称する財政構造改革にあります。『三位一体』などという、キリスト教社会の人々が聞いたら驚くような名称をつけるコイズミ-タケナカのセンスには呆れ返るばかりですが、要するに小泉流の『税財政構造改革』の象徴が、この『三位一体改革』であります。
 何が一体なのかと言えば、国庫補助金と地方交付税の削減と、国から地方への税源委譲が一体に改革される、ということなのです。つまり、この荒川区においても、現在進行している各種の補助金削減による影響と、今回の税制改正による影響とで、区財政がどのようになるのか、一体のものとして考え、議論しなければならない、ということになります。
 今回の委員会審議では、残念ながら、こうした荒川区の区民生活と税財政を検討する議論ができませんでした。それは、荒川区の組織と議会の委員会構成がそのようになっていないからです。
 委員会審議の後で、財政課長に数字を確認致しましたところ、平成16年から18年までの国庫補助金削減は3年間のトータルで約11億4千万円。削減された内訳は、区民生活に深いかかわりのある公立保育園の国庫負担金、特別養護老人ホームの負担金、児童手当・児童扶養手当などです。
 一方、今回の地方税率一本化での見込まれる増収は約12億1千万円。これが所得の高い区民に減税し、中・低所得層の区民に増税した結果、区のフトコロに入ってきた増収分ということになります。
 区当局から見るとプラスマイナスでトントン、というのですが、全体として見れば、国から地方への税源委譲を建前としながら、実際には必要な国庫補助金の削減が狙い、ということです。地域経済が潤い、区民のふところが豊かになり、結果として荒川区の財政が豊かになる、というのが、区民が幸せになる最も健全な財政運営ですが、今回の改正はそうなっておりません。本来の意味での財政健全化とは言い難いと思います。
 ところで、税務課は平成6年まで当時の区民生活部にあり、その後総務部に移り、17年度からまた地域振興部、名称変更した現在の区民生活部へと移っています。企画-政策経営部の中にある財政課とは別の体系です。そして現在の委員会構成のもとでは、2つの部が別々の委員会の所管であるため、一体の議論ができません。税と区財政の問題について、本当に区民の生活や負担に関心を寄せ、その中から財政健全化を探っていこうとするなら、現在のような区の組織は一見親切そうに見えて不適当だということを、この際申し上げておきたいと思います。

 さて、最後になりますが、税制全体のあり方については、ここ一両日、自民党の中川政調会長の発言が報道されています。「所得の再配分機能が落ちている。もう一度回復させる議論が必要だ」というものです。中川政調会長はまた「消費税増税に併せて所得税と個人住民税を併せた現行50%の最高税率の引き上げを検討すべきだ」との見解を示しました。谷垣財務大臣も同様の発言をしており、これらは「格差拡大への批判をかわす狙い」と報道されております。さらに、今日の新聞報道では、政府・与党は来年の参院選に配慮して時期を明記せず、「消費税の『社会保障目的税化』を検討項目に上げた」との報道もされています。
 大型間接税である消費税は逆進課税の最たるものです。しかも、簡易課税の廃止や免税点の引き下げなどで、区内の中小事業者は例外なく打撃を受けています。ちょっと話が横道にそれますが、先日、荒川区の認証保育所になっているNPO法人の総会に行って驚きました。年商3千万円から1千万円への免税点引き下げで、消費税の支払いが発生して、予算のやり繰りが大変!どうしよう、というのです。導入後18年経って、弱者保護を取り払った消費税の負担はこんな所にも現れていたという訳です。
 中川政調会長の発言を待つ迄もなく、逆進税制と非難されてきた大型間接税・消費税と、その導入と引き換えに累進緩和されてきた所得税などの直接税の見直しは必至であると思います。しかし、同時に『社会保障目的税』の議論も急速にクローズアップされ、2~3%とかの数%の小幅ではなく「まとまった幅」での消費税増税が2009年以降に想定されてきました。医療制度や介護保険改悪での国民の不安を背景に、財界の長年の念願である消費税の大幅増税がついに姿を現した、と言えます。

 いま、定率減税の廃止で中・低所得層は、この間賃金がちっとも上がらないか下げられているにも関わらず、減税がなくなり、負担感を募らせています。「なんで高額所得者の減税は据え置きで、我々の減税は容赦なく廃止なのか!」という声は区民大多数の声です。
 租税国家である現在の我が国において、税は進んで納めるもの。それには税に対する公平感が肝要です。アメリカの「年次改革要望書」と「経団連の要求書」にもとづく税財政改革ではなく、国税も地方税も、大多数の国民の利益となる税制の見直しを求め、また地方の立場から国の都合でない税制のあり方を追求することを呼びかけまして、区税条例の改正に反対の討論を終わります。