斉藤ゆうこのあらかわ日和

<荒川区都市整備部建築課による報告>
・区内に姉歯設計事務所等が関与したマンションが1棟あったので調査した結果、構造計算書に偽造が行われていたことが判明した。
・11月24日に、構造計算の再チェック、耐震強度評定を、専門機関である東京建築検査機構に外部委託した。29日に調査結果の概要報告を受け、30日に分析結果をマンション管理組合理事者に説明した。

■物件:『グランドステージ町屋』 荒川区荒川5-34
鉄筋コンクリート構造、9階建て 30戸 
平成14(2002)年2月竣工
■建築主:(株)ヒューザー 代表取締役 小嶋 進
■設計:(株)森田設計事務所 森田信秀、造設計下請 姉歯建築設計事務所
■施工:東鉄工業(株)建築支店
※ヒューザーとの協議で、工事下請には木村建設(株)が当たっていた。
■確認機関:荒川区
■調査結果:構造計算書の改ざんが巧妙に行われていた。改ざん方法は、構造計算ソフトを再入力しなければ偽造が発見できないものであった。
建物の構造耐力は震度6強まで対応できるため、倒壊の恐れはないが、より安全性を確保するため、耐震改修が望ましい。

・12月2日にマンション居住者への説明会を実施し、30世帯中29世帯、47人が出席、売主のヒューザーからは2名が出席した。
・町会と相談し、12月6日にマンション近隣住民に説明の文書を配布した。
・過去5年間さかのぼり、区が建築確認を行った建築物について、構造計算書の再点検を実施する。

<委員会での私の質疑応答メモ>

(ゆうこ)
 この問題にはふたつの側面がある。それぞれ区の考え方を聞きたい。
 ひとつは対策面だ。今後、マンションに居住している区民に対して、区としてどのような対策を取るつもりか。
 もうひとつは建築確認事務の経過と問題点の解明だ。事務の性格、事務の流れ(フロー)、事務に携わる職員の体制や育成問題、そして根拠となる法律や法改正との関連で事務にどのような変化が生じたのか。この際、私たち委員会としても建築確認制度を把握し、問題の所在を明らかにし、問題点の解明をしたい。
 今日は第1回目の報告ということなので、今後は文書での資料提出もお願いしたい。

(荒川都市整備部長)
 対策の面についてお答えする。第一義的な責任は建築主であるヒューザーにある。瑕疵担保責任という観点からヒューザーの責任が問われる。区はできる限りのお手伝いをしたいと考えている。

(山本都市計画課長)
 どう保障するのかについて、マンション管理組合の意向を聞きながら、区がヒューザーとの交渉の全面に立っていきたいと考えている。
 説明会の中でヒューザーは「企業としての体力が弱体化している。倒壊危険性があると判定された7棟が先決で手が回らない」などと表明した。区としては1週間から10日の期限を切って保障等についての回答を求めている。
 「耐震工事か、買い取りか」、どうしたら良いかを居住者にアンケートなども取り、管理組合としての態度決定を行う予定。

(菊地対策本部担当課長)
 建築確認事務についてお答えする。この事務の性格は『自治事務』であり、建築主事が処分庁となっている。
 建築確認の流れは・・・

◆設計事務所の建築士が設計を行う。
◆構造設計については、専門の下請けの設計事務所に出される。
(※姉歯建築設計事務所はこの下請け当たる)
◆設計事務所から、区または民間機関に建築確認申請が出される。
◆検査係が、構造設計、構造計算などを図面に照らして検査する。
他に設備、道路についても同様に図面に照らして検査する。
◆消防庁に同意を求める。
◆同意後、区に書類が戻され、確認済証が発行される。
(※『建築計画のお知らせ』の標識が立つ)
◆建築主が施工業者を決定し、工事が始まる。
◆中間検査で、材料のチェック等が行われる。
◆建築検査が行われ、検査済証が発行され、竣工となる。

 職員の体制については、建築確認事務が民間にわたったため、2年程前に減らしている。審査担当が1名減、道路担当が1名減。構造担当は3名から2名になっている。育成については、構造担当の研修を行っている。

(斉藤建築課長)
 根拠法、法改正について。平成10(1998)年に建築基準法の大改正があり、建築確認事務は民間解放された。(注:建設大臣等の指定を受ける『指定確認検査機関』制度の創設)検査の充実をめざし、民間機関でも建築確認が行われるようになった。

<他の委員の質疑に対する区の答弁メモ>
・(区の責任をどう考えるのか、区長は深くお詫びする、と言っているではないか、との質問に対して)建築確認を出した責任があり、区として一定の保障は行う考えだ。但し、区の保障は税の出動という問題なので、充分考慮して対処したい。
・マンション耐震問題対策本部の体制は、課長1名、建築1名、事務2名。
区が行う過去5年分の再検査の対象は、木造を除き約700件。現在は他の課にいる経験ある職員などにも業務の発令をし、応援を頼んで体制を組む。6名位の職員であたり、来年3月迄に完了を努力目標とする。
・構造計算については、職員の専門性が求められる仕事である。今回の構造計算書は、コンピュータで改ざんしたものを入力したもので、入力は正しいか、判定は難しい。画面にはプログラムの名称、認定番号、利用者番号などが現れ、判定は「正」と出てくるが、これではコンピュータの計画自体が正しいどうかの判定はできない。『認定ソフト』自体をいじれば正当な数値は出てこない。
・耐震性の判定は1:0.72。外部委託した機関によれば、判明した今回の偽造は初期のもので、鉄筋の数値を若干減らしたもの。目に見えない形の偽造になっている。また、この程度の偽造ではコスト削減にならないのに、なぜ偽造したのかわからないと言われた。建築士がこのような偽造に手を染めることは考えられない。地震があれば自分の設計したビルが心配で見に行く、というくらいなのが普通の建築士だ。
・区による建築確認と民間による建築確認の対比は・・・
平成15(2003)年 (民間)172件 (区)373件
平成16(2004)年 (民間)310件 (区)213件
・平成10(1998)年以降、計4名の職員を減らした。区の職員体制については、国による制度の検証の結果を待ちたい。

<私の再質問と要望>
(ゆうこ)
 これまで区で行ってきた建築確認を規制緩和で民間開放した背景には、日米構造協議でアメリカが主張した「日本の国や自治体の裁量行政はけしからん」という指摘がある。民間の建築確認はとにかく早いが、それだけでなく、建主が住民の反対や建築紛争に左右されずに着工できる、という点にある。現に区内でもそのようなケースがあった。(地域の意向に関係なく建物が建てられるということが)果たして公正なあり方と言えるのか。大型店の出店をめぐって大店法が規制緩和、撤廃されたのと動機は同じだ。
 業務が民間開放になり、区の業務が減るからこれ幸いと職員を減員してきた荒川区の行革方針については、「制度などに関する国の検証を待ってから」と言うだけでなく、自らの問題として考えるべきではないか。現在の職員体制はこれで充分と考えるのか?

(荒川都市整備分部長)
 現在の検査に関わる区の職員体制2名は、最低限のものである。もし、1名が移動や退職になれば、仕事の質が保障されるとは言えない状況である。

(ゆうこ)
 部としてきちんと人員について要望した方が良いと思う。
 残念ながら荒川区は自治体が偽造を見破れなかった全国17ケース(12/6現在)のひとつに入ってしまった。守屋委員長が「どうしたら再発防止できるか、ということが問題だ」と発言したが、その通りだ。委員会としては今回の原因がどこにあるのか、解明する責任がある。これは企業犯罪だから、偽造に走った企業を身ぐるみ剥いででも保障させることだ。そして、国と自治体は責任に応じて税の出動をするということでなければ区民の納得は得られない。こういうことになった原因や背景を一緒に解明し、住民に対して質の高い責任の取り方をしてほしい。

<委員会を終えて>
 対策本部を発足させ、奔走している都市整備部の対応を評価したいと思います。偽造を見破れなかったことで、元気をなくしている建築系の職員もいるようですが、この際、しっかりと自分たちの仕事をふり返って点検し、原因究明をして下さい。国に対して言うべきことは遠慮なく言いましょう。
 荒川区の場合は倒壊の危険はないとのことですが、居住者の方たちには怒りも困惑もあると思います。その後も問題は拡大し、自己破産して責任をのがれようとする企業、黒幕と言われるコンサルの問題など、構造的な様相を呈してきました。この問題についての情報やご意見をお寄せ下さい。
 法改正以降の建築確認の公・民比率、区内でのイーホームズによる建築確認の実態など、調査資料が委員会に提出されます。今後、必要に応じて委員会を開催して報告を受ける、時期については正副委員長一任、ということになりました。委員会開催については区議会事務局にお問い合わせ下さい。傍聴ができます。