河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月27日 2014年11月27日

 私は、あらかわ元気クラブとして、来年度の一般会計予算に対して反対の討論をいたします。
 歳出にかかわる幾つかの事業執行に反対というだけでなく、荒川区を取り巻く厳しい環境と区民生活の現状に機敏にこたえた予算であるとは納得しがたいということがその理由であることを述べたいと思います。
 まず、冒頭に、今私たちのまち荒川区がどのような環境に置かれているのか、その認識について述べなければなりません。それは、みずからのまちの現状と、それを取り巻く状況についての適切な認識を持つことが、今後の区政の方向性や予算編成の前提となると考えるからであります。
 この2月議会では、区長の所信表明に始まり、一般質問、予算委員会の議論を通して、さまざまな形でこの問題が浮かび上がってきました。歳入の構造的な問題としての区税収入のさらなる減少化、財政力の弱さ、これと関連して、地域経済の活性化や住宅政策、そして国や都の動向が予算に及ぼす影響、特別区制度改革、清掃工場問題、これらはすべて我がまちが置かれている環境と深くかかわったものです。
 私たちのまちを取り巻く環境、経済や政治の動向や社会の変化をどう見るのか。この認識は一致しているようで、まだまだ生煮えであると私は思います。したがって、荒川区が抱える数々の困難とどう闘ってこれを打開していくのかについても不十分で、一つ間違えば以前の区政の二の舞や小手先の対症療法になりかねないのではないかと感じます。行政だけの責任ではなく、私たち議会もお互いに議論を闘わせ、住民の皆さんに呼びかけて世論を巻き起こしていく必要があるのではないでしょうか。
 今荒川区は、我が国の経済の低迷の影響を最も集中的に受けているまちの一つではないかと思います。失業、倒産、低賃金、営業不振などで国民経済の60%を占める個人消費は冷え込み、公共事業費の削減や4月からの消費税率引き上げ、特別減税廃止と社会保障、医療保険の負担増で、国民の消費は一段と冷え込むことが予想されます。所得の低い層が集中する荒川区民の懐はますます厳しいものとなり、まちの中の中小零細事業者やそこで働く人たちにとって本当に苦しさの募る年になるだろうというのが実感です。
 国は、橋本内閣の6つの改革を犠牲を押しても推進すると言ってはばかりません。地方行革、補助金カットが進み、超過負担の構造は放置されたまま、引き下げられた補助率も据え置かれたままです。税制改革の影響がこの間地方財政に容赦のない打撃を加えてきたのは、既に認識の一致するところと思います。こうした中で地方分権が議論されていますが、結局のところ、多少の権限移譲はするが、財源はつけない、金は自前でやれということになるでしょう。肝心な財源移譲はなく、お金が不足するなら、借金は認めてやるからそれで予算を組みなさいよというのが国の基調、これは変わらないと思います。
 さらに、一般質問でも述べたように、6つの改革のうち、経済と社会保障の構造改革はとりわけ荒川区と区民に厳しい環境を強います。既に地域商業と街づくりに大きな影響を及ぼすことが現実のものとなった大店法の規制緩和を始めとして、各種の事業分野での規制緩和の推進は業種そのものの存在を脅かし、雇用にも悪影響が必至です。また、公的介護保険制度の導入、医療保険の改悪に始まる社会保障の解体が進めば、負担に耐えられない区民が激増することは間違いありません。中小零細事業者と高齢者が多い荒川区、所得の少ない区民が多く暮らす荒川区の区民生活は、弱肉強食のこうした改革に最も打撃を受けるだろうことが予測されます。
 東京都の財政健全化計画も同様で、補助率の導入や国保料の度重なる値上げ、そして公共料金引き上げは区財政と区民生活を圧迫するでしょう。
 長々と述べてまいりましたが、荒川区を取り巻くこういう経済・政治環境の厳しさについて深刻な認識を持たないと、区としての未来を切り開く打開策を持つことも、区民生活を守ることもできないと私たちは考えております。元気クラブはこの予算議会で、こうした情勢にふさわしい予算だと言えるのか、区として国や都に対しても、区政政策面でも情勢に対応してどのような態度をとっていくのかを一般質問や予算の総括質疑、各款の質疑を通じたテーマとして当局にただしてまいりました。しかし、生活保護や産業振興の問題も含めて、区当局や幹部職員の皆さんの姿勢からは、まだまだこうした認識不足が感じられます。本当に区民の深刻な生活や営業の実情がおわかりになっているのでしょうか。ぜひとも感度を改めていただきたいと思います。
 また、特別区税収入には、こうした現状を反映して、見かけ上の数字とは異なり、実際には4億円の落ち込みがあることが予算にも示されています。目前に迫った都区制度改革では、財政力の弱い我が区が依存せざるを得なかった財調の制度改革が予定されております。財政事情の厳しい中で、清掃工場建設や車庫整備といった画一的で高いハードルをかけ、これをやっとクリアしても、荒川区には厳しい財政問題が待ち構えているのです。東京の中の最貧区と言っても過言ではない我が区は、住民の所得、貧富の格差拡大が進み、23区の財政力の格差拡大が増大する中で、都区制度改革、清掃工場、車庫問題にどういう態度をとるのか、もう明確にすべきであると思います。一体だれのための都区制度なのか、都区制度改革なのかが問われております。歴史的な産業構造のもとで、矛盾が蓄積する東京下町地域が生きられないような制度改革には反対であることを区長ははっきりと打ち出し、清掃工場問題にも対処されることを望みたいと思います。
 そして、今回の予算に見られる苦しいやりくりや都区制度改革への対応を当面のものとしながらも、やはり根本問題は、地域経済活性化を柱とした財政力強化をどう実現するのか、そのための対応策が今度の予算の中にあるのかであります。自主財源をふやす根本策としての地域経済活性化は効果が出てくるまでに時間がかかります。たびたび問題提起をし、決断を促してまいりましたが、残念ながら今回も姿勢の不明確さは否めませんでした。
 財政力の強化をめぐる今回の予特の議論はなかなか有意義でありました。しかし、冒頭述べたように、区税収入を重視する余り、納税力のある層をそうでない層と取りかえようとするなどという短絡的な方向は戒めていただかなければならないと警告しておきます。
 4区工業フォーラムで新しい都市型工業を模索し、今回新しい支援策も盛り込んだ荒川区、地域商店街の発展のために、大型店に対しても独自の姿勢をとってきた荒川区であればこそ、そのことをむだにしない地域産業活性化を軸にした発想に徹するべきであると思います。中小零細企業の淘汰を見殺しに、低所得者、高齢者を追い出したようなかつての区政への逆戻りだけは避けていただかなければならないと思います。
 この間、私たちは職員によるプロジェクトチームなどによる調査をもとにして、21世紀に区民が希望を持てる新たな基本構想を策定してほしいと要望してきました。この点については行政のサイドにも同様の問題意識もあり、豊かな区民生活をつくる検討委員会が発足し、税財政制度、商工業振興、住宅施策などを中心とした調査分析が始められました。ぜひ深く研究を進めていただき、私たちとも議論を闘わせながら、事実に基づき、地に足のついた検討結果が得られるよう求めてまいりたいと思います。
 いずれにしろ、状況の深刻さに比して、素早く対応していくにはもう既に立ちおくれたと私は考えます。おくれを取り戻す発想と姿勢が本予算の中には残念ながら見られない。格段の努力を求めたいと考えます。
 討論の最後に、予算の質疑と重複する部分もありますが、今回の予算案及び事業内容の中で、我々が予算反対の根拠とする部分の幾つかを述べておきたいと思います。
 まず、歯どめのない職員定数削減と非常勤職員への代替は、労働問題と区民サービス低下の両面から反対であります。根本的な転換を求めます。
 使用料、手数料については、私たちの判断基準は、まず実情に合っているのか、区民がその負担に耐えられるのか、そして区民活動が元気をなくさないのかであります。高齢者住宅の値上げなどもってのほか、区民会館を始め、日常的に親しまれ、区民が利用する施設の値上げにも反対です。保養所については、位置づけが間違っているのではないかと申し上げておきます。
 産経費の融資事業削減にも反対であります。金融機関、信用保証協会への強い対処と真の弾力運用を求めます。また、借りかえや一本化をすぐに実行することを要求いたします。
 常磐新線への出資金の考え方や第2浅草幹線への対応は本当に問題がありました。一体こういう区の姿勢で、困難と闘い、国や都にはっきりと荒川区の立場を主張できるのでしょうか。今後の大きな教訓であると思います。
 また、教育委員会のあり方については、新体制になりますので、ぜひこれまでの総括をして、地域の気持ちのわかる教育行政にしていただきたい。学校開放の体制整備もできない、学校のトップによる父母の活動への検閲まがいのことがまかり通る学校では、まことに将来は暗い。親も登校拒否になってしまいます。
 また、今回の統廃合、それ自体に私たちは賛成をいたしましたが、まさにこれから問題は山積であります。他区への越境に歯どめをかけ、子供たちを呼び戻せる学校をつくりたいというのが地域の多数意見、切実な声であります。この問題は公立幼稚園の3歳児保育実施とも深く結びついています。また、狭い校庭を余儀なくされてきた日暮里の地域特性もあります。統廃合での温水プール設置、地域開放の陳情も出ておりますが、改めて日暮里の子供たちの教育環境を真剣に考えていただきたい。戦後最大の児童数のときの学校配置を未来永劫続けるというわけにはいかないと考え、今回は賛成をいたしましたが、今後の課題は尽きない。教育委員会が地元に心を寄せ、仕事をされることを望みたいと思います。
 また、国際交流事業に関連して、日中国交正常化25周年の記念事業をという提案がありました。教育委員会も答弁されましたように、我が国の戦後史の中で、日中国交正常化、友好条約の締結は歴史的な意義があります。また、これからの日本の生きる道を考えるとき、平和外交の基本からも、中国やアジアとの友好は避けて通れない問題であると思います。国民的課題であればこそ、地域から盛り上げることは当然であり、地方議会もこれと無縁とは言えない、私はそのように考えております。ぜひとも取り組みをお願いしたいと思います。
 最後になりますが、私どもあらかわ元気クラブは、1997年度の予算に関する要望書を昨年の暮れに提出いたしました。この中では、21世紀に向けて区民が希望を持てる新たな基本構想を策定すること、地域経済活性化の担い手として街づくり会社の設立を支援すること、そして、一般質問でも申し上げた福祉のまち荒川構想を一つのコンセプトとすること、また、財団法人がん予防センターを廃止し、従来の業務を適切な機関に移管すること、そして、高齢者給食や学童クラブ給食に取り組むモデル校を指定し、直営で地域に役立つ学校給食を実践していただくこと、これらの重点要望をもとにした要望書をお出ししました。
 区政の姿勢変更を求め、今後の議論の活性化のため私たちの会派も努力するということを申し述べて、反対討論を終わります。