河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月27日 2014年11月27日

斉藤ゆうこ

 私は、今回4点について一般質問を行い、区長と区当局の考え方を伺います。わかりやすい答弁を期待いたします。
 まず、1項目めと2項目めの質問に当たりまして、今回私がなぜこのテーマを選んだのか、その問題意識と心境をお話ししたいと思います。
 「政治不信」という言葉が言われて久しい今日ですが、このところの住専問題、薬害エイズ問題は新たに国民の政治不信に拍車をかけたのではないかと思われます。さらに、対米関係で何ら打開策のないまま、政治的幕引きに奔走した感のある沖縄問題、景気の低迷、バブル経済とその崩壊、そして財政問題の顕在化という中にあって、国民の政治に対する信頼はますます失墜した状況です。
 我が国の経済、政治、社会のシステムの行き詰まりを皆が感じています。これをどう打開することができるのでしょうか。もうすぐ総選挙です。しかし、恐らく政治は大きくは変わらないだろうと多くの人々が感じています。
 こうした中で、どういう組み合わせの政権になろうと、着々と準備されている行財政改革と税制改革の方向は、今後地方自治体を圧迫し、住民に犠牲を強いることが予測されます。そして、一層の推進が叫ばれている規制緩和は、地域社会と人々の暮らし方に大きな影響を与えるでしょう。本当にこのままでよいのか。現在の流れに対して、最近私は大変思い詰めた気分になっています。しかし、失望、落胆、シニカルな態度や悲観主義に浸っているわけにもいかない。こういう政治の流れに手をこまねかず、対抗手段を考えなければなりません。
 よく区長や区当局は、「国の動向を見守りながら」というふうにおっしゃいますが、あの政府と国会の動向を見守っても何も出てきはしません。自治体も私たち地方議会も、もっと批判的な視点を持って予測される事態に対処すべきではないでしょうか。国や法律、国会に対して何ができるのか。今回の質問の1と2の項目に共通した私の問題意識はこの点にあります。今、地方は何をしなければならないのか、何ができるのか、こうした観点で区長と理事者の皆さんにお答えいただきたい。そして、議場の皆さんと御一緒に考えていきたいと思います。

 まず、第1番目、国家財政の破綻は国民の多くの知るところとなりました。241兆円の国債残高、特別会計等の借り入れや地方の債務残高も合わせると、何と442兆円という数字です。今年度予算に占める国債費は16.4兆円、全体の22%に上りますが、このうち利払いだけで11.7兆円、しかも、来年度も赤字国債の発行が見込まれていますから、借金は一向に減らない構造です。毎日新聞は「全治10年の重体」という見出しで来年度予算の解説をしていましたが、見通しの立たない泥沼状態だと言えます。
 「国民1人当たり191万円の借金」などと脅かされますが、なぜこれほど財政赤字が激増したのか。92年8月以来の5次にわたる総事業費59.5兆円に上る景気対策、公共投資の結果であることは歴然としております。今年度予算でも公共投資は4%の伸び、幹線道路や特定港湾事業など、大手建設会社や大企業向けに使われてきました。この間、不況だ、リストラだと国民は犠牲を背負わされてきましたが、こうした政府の財政支援や低金利政策に支えられて、実は銀行や大企業は莫大な利潤を上げてきたというのは3月期決算の数字で示されたとおりであります。
 ところで、国債発行の相手方は一体だれなのかといえば、それは金融機関、証券会社、生保会社がほとんどという実態です。私は、こんなに財政赤字で大騒ぎをするくらいなら、いっそ国債など紙切れにして返上してもらったらいいのにと思います。黙って座っていて毎年7パーセントもの利子が国から入ってくる。この利払いに追われて国の借金は減らない。こんなばかな話はありません。徳政じゃありませんが、銀行や証券会社が国債をチャラにすれば、たちどころに財政赤字など解消です。
 さて、こうした国家財政のもとで示されている行財政・税制改革の方針とはどのようなものなのか。私は、経団連がことし4月にまとめた長期ビジョン「『魅力ある日本』の想像」を読んでみました。前書きには、「日本のこれまでの経済発展を支えてきた政治、経済、社会のシステムがさまざまな面で行き詰まり、社会全体に活力や方向が失われつつある」と率直な財界の危機感が述べられており、「メガ・コンペティション(大競争)への対応といった時代の新たな要請に対しても十分こたえていない状況」と不満が表明されております。そして、「対応を怠れば日本の将来は危うい」と豊田章一郎さんは言っているわけですが、日本の将来を心配しているというよりは、まあ、大企業の将来の環境を御心配なのでしょう。
 この本の中で注目すべきは、「規制の原則撤廃」「効率的かつ公平な社会保障システムの構築、そして「効率的な政府を実現する」として、「新首都建設の推進」「小さな政府の実現」「税財政改革の推進」に触れていることです。限られた時間で説明は難しいですから、ぜひこの本を読んでいただくと、よく財界が今何を考えているかおわかりになると思いますが、要するに、一言で言えば、全世界的規模に拡大した市場経済のもとでの自由な経済競争、経済活動を保障するため、あらゆる面でコストを下げてほしいということでしょうか。
 この意向を受けて出されたのが、自民党行政改革推進本部が6月に出した「橋本行革ビジョン」です。ここでのキーワードは2つ。すなわち、超高齢化社会と大競争時代に備えるであります。「我が国がなおワールドセンターとしての地位を維持していくべきだとすれば、この面からも効率的でスリムな政府と活力ある社会・経済システムの構築は待ったなしの課題」と結論づけられたこの方針の中では、行・財・税制改革の方向として明確に企業の公的負担の見直しをうたっております。そして、税負担はもとより、社会保障関係の企業負担分の見直しを具体的に提起しています。経団連の要求する法人税引き下げ、社会保障負担率引き下げとぴったり一致した方向であります。また、規制緩和の一層の推進を強調し、創造力と活力など、文言まで経団連のビジョンに配慮をいたしております。
 それでは、一体どうやってこの国家財政が破綻したもとで企業コストを下げてあげようというのか。経団連と橋本行革ビジョンに加えて、この7月10日に出された財政制度審議会の中間報告もすべて同じ結論を持っております。「財政再建は国の役割のゼロベースからの見直しで」というのがその方針で、国民負担率などというわけのわからない概念を持ち出して、医療保険、年金、福祉からの国の責任の撤退、国民の負担増を求めているのです。消費税の税率アップも含め、企業を身軽にして、そのツケを国民に負わせようという仕組みなわけです。これにはさすがに自民党内からも、大企業側に立った印象になる、個人や中小企業といった弱者の立場を大事にすべきだという異論が出たそうです。当然のことだと思います。
 長々と述べましたが、これが国の考えている行・税・財政改革の方向であります。昨日、藤枝区長は区財政の現状について努力を表明されましたが、国のこうした行・税・財政改革が進められれば、荒川区の厳しい財政をさらに困難にするおそれがあると私は考えます。国民健康保険会計や、問題の公的介護保険はその象徴だと思います。そして、各種の補助金の見直しなども含めて、もし区が肩代わりをして一般財源を投入すれば歳出抑制の足かせになりますし、これを切れば住民を圧迫するという構造、つまり、地方自治体と住民との犠牲のなすり合いということになるのではないか。この点を区長はどのようにお考えでしょうか。
 8月に出された特別区長会の国に対する要望書は、税制改革における税源配分の見直し、恒久化された国庫補助負担率について、安易な地方への負担転嫁を行わないこと、首都機能移転問題への慎重な対応、そして超過負担の解消を重点要望として求めています。いずれも私たち地方にとって切実な問題です。先ほど私が述べた国の行・税・財政改革の方向が具体化すれば、こうした要望の解決どころか、もっと深刻な矛盾が国との間にあらわれざるを得ないのではないでしょうか。
 3点について区長の見解を伺います。
 国の行・税・財政改革は区や区民にとって将来重大な影響を及ぼすことが予測される危険な動きであり、危機感を持って対処すべきだと考えますが、その認識はいかがか。
 第2に、来年4月に予定される消費税5%導入は区財政の面から見てもマイナスの影響があると思いますが、これをどう評価するか。
 最後に、2000年までに建設に着手、2010年までに新首都での国会開催などと経団連は勝手なスケジュールを描いておりますが、大規模な公共投資という経団連の要請にこたえた首都機能移転に対し、どのように反対をされるお考えかをお伺いいたします。

続いて、大型店オリンピックの区内出店計画に関連して、荒川区としての今後の考え方をお尋ねいたします。
 6月の第2回定例会で、私たち区議会は全会派一致で大型店出店計画に反対する決議を上げ、また、藤枝区長も出店反対を明確に表明されました。テレビでの放映もあり、荒川区はこの問題で今大変注目されている状況です。
 さて、問題は、反対と言った私たちと行政がその責任をどのように全うするかであります。こぶしを振り上げた以上、この問題の解決に向けて障害となっていることを一つ一つ取り組み、これを取り除くために私たちは全力を挙げなければなりません。
 9月9日、第2種に変更して届け出がされたオリンピックの出店に関する調整は、大店法の管轄下にあるのは御承知のとおりですが、日米構造協議から90年代の流通ビジョンへと大幅な規制緩和の流れが示され、そのスケープゴートとされた感のある大店法は、92年の改正、94年の運用見直しと規制緩和の一途をたどってまいりました。出店、増床、延刻などの手続は大幅に緩和、省略されております。来年度の見直しについてもさまざまな議論がありますが、ことし3月には来年度に再見直しを行うことが閣議決定されています。その内容は手続の簡素化ということ以外に明確ではありませんが、いずれにしろ、今、区と私たち、そして地域商業者の皆さんが直面している相手方との協議という舞台がさらに狭まり、厳しくなることは間違いありません。
 決議を上げた議会の責任としても、放っておくわけにはいかないと私たちの会派は意見書案を提出いたしました。区としても、今回のオリンピック出店問題で大店法という法の現状に直面され、いろいろとお考えになったのではないかと思います。
 そこで、3点お尋ねいたします。
 まず、これだけ空洞化した法律にもかかわらず、相変わらず通産相はその調整に関する権限を一手に握りしめて放しません。現行法では、区長は出店に対し意見を述べることはできても、それ以上の権限はありません。先ほど例を引いた特別区長会の要望書では、「地方分権推進法及び地方分権推進委員会による中間報告の趣旨を踏まえて、地方自治確立のために地方公共団体の権限と責任を一層強化し、地方分権をさらに推進されたい」として、財源の確保とともに、権限と責任の地方への移行を重点要望として求めていらっしゃいます。全く同感、賛成であります。
 そこで、区として現行大店法に対し、地方自治体に権限を委譲し、決定に参加できない現在のシステムを変更するよう働きかけるつもりはないでしょうか。見解を求めたいと思います。
 また、大店法の規制緩和が進む中で、地域商業者の皆さんは、全国的規模で熱心に街づくりとリンクした商業活動のビジョンづくりを進めてきました。地方自治体の都市計画マスタープラン策定などにあわせて、野放し、無秩序な大型店の出店計画が地域の調和を壊さないようにする観点から考えられた街づくり条例は、現行法制下で私たち地方が対抗し得る有効な手段ではないかと考えます。法との整合性やどこまでできるかについて、地方としての自主性ある立場から、行政の皆さんたちと私たち議員とが共同研究する場を持つことから始めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 さらに、地域商店の共同化支援、街づくり会社について見解を伺います。要は、中小商業者が、大型店が優位に立つ機能の点で、これを備えた事業体となることを支援していくと考えた方がわかりやすいかもしれません。前段の質問ともあわせ、地域商業者が大型店と対等に協議したり、商売をしたりする環境づくりという点が、自治体にでき得る、またやらなければならない仕事だと思っています。こうした点から中小商業者支援、街づくり会社に対するお考えを伺います。

大きく3項目めの質問は、今年度の議員海外視察の成果を踏まえて、荒川区とアジア諸国や諸地域との長期的視点に立った友好的な環境づくりについて質問いたします。
 8月12日から24日までの海外視察は、大変有意義で貴重な体験であり、今後の区政に反映できるさまざまな要素を私たちは持ち帰ることができました。一部でおっしゃるように、見聞を広める程度のことに公費を使うことはないなどという御心配は無用の、通り一遍ではない視察であったと思い返しております。もとより私は、88年の海外視察開始の際、これでいいのかと批判をし、参加しなかった一人ですから、このときにチェックポイントとして挙げた目的や行き先、企画立案の方法、区政への反映や報告、費用の問題などの改善に真剣に取り組みまして、まだ改善の余地はありましたが、納得のいく視察であったと思っております。また、仲間うちだけでなく、意見の違う他会派の皆さんとともに視察をし、議論を闘わせることが大切だと痛感をいたしました。
 報告については、今回の団は視察各項目についてあらかじめレポートの分担を決め、報告書を書くことになっておりますので、ぜひごらんいただくことにいたしまして、今回は3点について質問をしたいと思います。
 まず、第1番目に、アジアの域内に、将来、第2の友好都市提携を結ぶことを目指し、多面的な交流や区民の交流を支援する取り組みということについてお伺いしたいと思います。
 私は、前回、2月の一般質問で、「アジアの技術センターとしての荒川区」というコンセプトについて、また、中小企業の海外への進出支援について区の見解を伺いました。こうした方向を発展させることや、区民の各層が文化交流だとか各種の友好事業などでアジアの地域を訪問し、仕事をし、そして交流するということを多面的に支援していくことが必要だと思われます。
 私たちが今回視察した中国の栄口市は、大連と瀋陽という都市からそれぞれ2時間の距離にあるところですが、ここではお隣の足立区が中小企業による異業種交流グループとして再三この都市を訪問し、そして現地の副市長を代表とする企業家の連合会をつくりまして合弁事業に取り組んでいます。ここのきっかけ、それは栄口市出身の一人の足立区民であったというふうにお伺いしました。こんなふうに第2の祖国として中国をとらえる日本人、恐らく東北にかつて満州国というのを建設した私たちの国の歴史からいって、たくさんいらっしゃるのではないかと思います。足立区はこういう機会をとらえ、こうしたきっかけをとらえて、そこの支援から中小企業同士の交流、合弁というところへ発展させていった。こういう視点が肝心ではないかと私は考えています。
 アジアの域内に第2の友好都市提携を結ぶことを目指して、多面的な交流支援をどうお考えでしょうか。お伺いしたいと思います。
 2番目に、アジア諸国に対する理解を深めるための副読本づくりについてお伺いをしたいと思います。
 私たちがアジアに行って非常に痛感したこと、それは、やはりアジアの子供たちが自国の歴史、そして日本とのかつての関係について詳しく教科書などで学んでいることに対し、日本の子供たちがそれとは大変ギャップのある状況に置かれているということです。
 これは95年の荒川区民企画講座の記録集です。講座「今考えよう、私たちの戦後50年」と題して、アジアの教科書展が開かれました。ごらんになっていない方はぜひお読みいただきたいと思いますが、ここではマレーシアやシンガポール、中国、韓国などの教科書が紹介されております。この中で私たちが大変考えざるを得ないのは、先ほど述べたような日本の子供が使っている教科書とのギャップ、したがって、事実に基づいた歴史認識というところで大きな落差が出てくるのではないかという点です。
 今回、戦後50年の正しい歴史認識ということで、私たちはこの項目も携えてアジアを訪問しました。事前学習会の中で、元外務省の高官であった中江要介先生は、アジアに友人を持たない日本、これをどうしていくのかということを述べられました。
 そして、資料として私たち団が勉強したこれは朝日新聞の記事ですが、後藤田正晴元副総理、今、日中友好会館の館長をされています。この方が「人も経済も深い交流を」と題して、「中国・台湾とどう付き合うか」という記事の中でこう書かれています。「中国側には、日本は過去の歴史に関する認識が不十分だという反発の空気がある。逆に日本では、軟弱外交だとか、謝ってばかりいるという声が、一部で強い。確かに謝り外交というのは、1日も早く清算しなければいけない。そのためには、厳しい歴史の認識の上に立って、謝るべきは謝る。そのかわり、未来志向で堂々と国際社会で歩いていけばいい。厳しい事態に遭遇したとき、それを乗り越えるだけの強さを、民族が持っていなければだめだ。その強さの根源がどこから来るかというと、過去を率直に見るだけの勇気のある態度が大事ではないか。過去の事実を正しく認識することで、初めて未来が開ける」。後藤田さんは、中国脅威論、こういう主張は誤り、過去を見詰めて未来を開けという非常に貴重な提言をしておられます。
 私たちはこういう学習をしながらアジアの各国を訪問したわけですが、そうした中で非常にいろいろなことを学びました。最も象徴的だったのは、シンガポールにおける1942年からの占領、中国や韓国での戦争の行為がいろいろ私たちの中では取りざたをされてき、そして、その認識はある程度ありますが、シンガポールは実は1942年から45年の解放まで日本が占領していたわけです。このシンガポールでも日本に対するさまざまな記述が見られました。
 こうしたことを踏まえて、現在子供たちが使っている教科書、アジアの子供たちの教科書との間には大きな開きがあります。そこで、荒川区の教育委員会として独自の副読本づくりに取り組まれるお考えはないか、この点をお伺いしたいと思います。
 この質問の最後ですが、南千住寮に居住する中国帰国者と子供たちへの支援策についてお伺いしたいと思います。
 実は、今回視察をした中に中国の東北地方がありました。もちろんその前に私たちは南京の虐殺記念館にも行ってまいりました。大変緊張をいたしました。団員みんながそうだったと思います。その中で、私たち団の中からは、金久保団長もおっしゃったように、申し訳なくて、何か具体的に行動せざるを得ないという気持ちになった、これが本当に率直な気持ちです。公明さんは従軍慰安婦の補償問題について、基金ではなく、国が補償をという意見書を今回提案されました。私もぜひ身近な問題に引きつけて何か具体的な行動ができないかと考えてまいりました。
 南千住6丁目には23区の施設がございます。この施設について、国交正常化の翌年から大変多くの中国の帰国者の方たちがここへお住まいになっています。子供たちは瑞光小学校に通っております。瑞光小学校には日本語学級があります。この日本語学級の先生、それから寮の方から詳しいお話を伺いました。時間の関係で残念ながら披瀝することはできませんが、ぜひ関心のある方にはお話ししたいと思います。この子供たち6人、いきなり日本語もできません。中国語しかしゃべれないんですが、普通学級の中にぽんと編入されています。日本語学級の先生は本当に生活のことから含めて支援が大変、お父さんやお母さんが複合就労で働きづめ、もちろん日本語はわかりません。こうした状況の中できている中国の引揚者、これは2つの祖国を持つ人たちです。
 かつての日中戦争の結果、こうした人たちが多く国交正常化以降帰国されるようになったわけですが、今、自民党の田中眞紀子さんが国での法制化について国会で取り組んでいらっしゃいます。なかなか難しい、そういう状況です。その中で特別区の区長会は、中国引揚世帯に対する施策の充実として、この実態の把握と定着対策について一層充実されたいという要望を出しております。都内に集中した日本語の未熟で日常生活習慣の相違などにより自立ができない、困難に処遇している、こうした人たちに対する支援という視点をどうお持ちなのか。教育と、そして区全体の面からお尋ねをしたいと思います。

最後に、学校給食の問題について再度お伺いします。
 O-157問題と関連して、学校給食に対する区の基本姿勢を再度問い直したいというのがその趣旨です。
 第1に、手づくりを推進してきた荒川区の直営給食をどう評価するのか、改めてお伺いいたします。
 第2に、安全と手づくりを重視する観点から民間委託計画を中止すべきと考えますが、いかがでしょうか。率直に言って、荒川区の民間委託計画の実行時期がこの事件の後に計画されていたとしたら、本当に民間委託を推進した皆さんも当局も不安はなかったのかと私は思っております。御意見を伺いたいと思います。
 以上で質問を終わります。

区長(藤枝和博)

 最初に、国の動向が地方自治体に及ぼす影響に関する御質問にお答えいたします。
 我が国の地方自治は、地方分権推進法の制定など、新たな時代を迎えようとしているところでございます。さらに、都区制度改革の実現を目指す特別区といたしましては、今まさにより一層の主体性の確立と地域の個性を生かした独自性の発揮が求められているところでございます。
 一方、国の財政状況、あるいは国が推進する公的介護保険等、多岐にわたる改革が区民の生活や荒川区をはじめ各自治体の行財政運営に大きな影響を及ぼすことも事実でございまして、事態を深刻に受けとめているところであります。
 このため、区といたしましては、これまでも国に対して機会をとらえて積極的に意見を申し述べてまいりました。また、特別区長会といたしましても、さまざまな要請行動等を行ってきたところでございまして、私も区長会の役員としてたびたび各省庁を訪れ、特別区としての意見、考え方を主張しておるところでございます。
 今後も区は、引き続き情報収集に努め、国の動向を的確に把握するとともに、区政運営や区民サービスに重大な影響を及ぼすような動きに対しましては、区民福祉の向上という自治体の使命に基づきまして、区として言うべきことは言う、また、主張すべきことは強く主張するという姿勢を持って臨んでまいる所存でございます。
 次に、首都機能移転問題に関する質問についてお答えいたします。
 首都機能の移転問題については、ことしの6月に行われた国会等の移転に関する法律の改正を受けて、年内にも国会等移転審議会が設置される予定であることや、地方の自治体や地元経済団体等による新しい首都の誘致活動が活発化するなど、その動きが本格化してきたところでございます。しかしながら、首都機能の移転の必要性について十分な論議がなされないまま、候補地の選定準備などの既成事実だけが先行する現在の情勢はまことに遺憾でありまして、当区にとりましても深刻な事態であると考えております。
 区はこれまで、地区別区長会として国に対し、首都機能移転問題に対する慎重な対応を要望するとともに、地方分権や都区制度改革の推進を強く働きかけているところであります。首都機能の移転は特別区にとって、行財政や地域形成において極めて重大な問題がありますので、今後とも区議会や東京都との連携を図り取り組んでまいる所存でありますので、御理解のほどお願い申し上げます。

企画部長(三ツ木晴雄)

 消費税率の改定の区財政への影響についての御質問にお答えいたします。
 まず、歳入への影響額でございます。このたびの税制改正により、平成6年度から住民税減税が実施されておりますが、このうち、平成9年度にはいわゆる恒久減税分として約16億円の減収が見込まれます。一方、地方消費税の創設により、22億円程度の増収が見込まれるところであります。これに消費譲与税の廃止による減収約10億円を加味いたしますと、歳入面では、トータルでおおむね4億円程度の減収になるものと考えております。
 他方、歳出への影響額については、現時点での試算ですが、消費税の税率改定分として約10億弱円の増加が見込まれます。
 歳入、歳出におけるこれらの影響につきましては、制度上は財調交付金算定の際の基準財政収入額及び基準財政需要額として算入されることになっております。しかし、現在の経済情勢から、原資となる調整3税の増加に多くを期待できないため、需要額の抑制措置等の実施が懸念されるところであります。
 したがいまして、区といたしましては、今回の税制改正によって財源不足が生じ、さらなる繰り延べ措置が行われることのないように、 東京都に対し強く主張してまいりたいと考えておりますので、御理解を賜りますようお願い申し上げます。

地域振興部長(小室敏夫)

 私から大型店出店問題に関する御質問にお答えをいたします。
 まず、第1点目の、大型店出店の調整権限に関する御質問でございますが、大規模小売店舗法に基づく大型店の出店調整につきましては、現在、年間全国で1000件を超える届け出が出されている状況にあります。この調整制度の趣旨は、これら膨大な数の大型店出店の調整につきまして、公平性の確保という観点から一定の基準を設定し、広域的な行政の一環として国や都道府県が権限を持っているものと認識をいたしております。
 こうした制度の基本的な趣旨からいたしまして、区市町村への権限委譲は難しいところがあろうかと存じます。
 次に、大型店の出店を秩序あるものとするための条例制定等の可能性に関する御質問にお答えをいたします。
 御案内のとおり、大店法は営業上の店舗面積を始めとする主要な4つの事項について規定しているものでありまして、その規定を超えた条例を制定することは法律上困難なものと考えております。
 しかし、法規制のない事項につきまして、地方自治体が総合的な街づくりの観点から指針等をもちまして、出店者側に対して街づくりへの配慮、あるいは秩序ある出店を行うように協力を求めていくという方法は可能ではないかと考えております。
 続きまして、共同化支援についての御質問でございますが、大型店に負けない商店街づくりのために商店の共同化を推進することは、極めて有効な手段であると考えております。また、御質問の地元商店街や第3セクターによる核店舗づくりのための街づくり会社も効果的な方法であると認識いたしております。
 区では現在、共同化のために研究を行っております商店街に対しまして、専門講師の派遣など積極的な支援を実施しておりまして、今後もその輪を広げていきたいと考えております。
 また、街づくり会社につきましては、商店街の若手グループの勉強会や21世紀会議の先進地の調査等に対しましても積極的に支援を行っているところでございます。
 区といたしましては、これらの意欲的な商業者が区内に広範に育つことが極めて重要であると考えておりまして、そうした面への支援策の強化に努めてまいる所存でございます。

地域振興部長(小室敏夫)

 最後に、アジアの域内に第2の友好都市を結ぶことに関する御質問でございますが、我が国はアジアの一員として、古くからアジア諸国との文化的、経済的交流を通じまして発展を遂げてまいりました。世界における経済や文化の面で、アジアの存在感、影響力が一層増す中、国家対国家だけでなく、荒川区としても今後さらにアジアの国の人々と人的・物的交流はもとより、文化、産業、経済など多面的で幅広い交流を行い、結びつきをさらに強めていくことが必要であると認識をいたしております。
 海外都市との友好提携につきましては、あらゆる国や都市の人々と友好的関係を築いていくということを基本姿勢とし、自治体や市民レベルでの交流の実績が積まれまして、相互の理解が深まり、気運が高まった時点で提携をすることが望ましいものと考えております。
 したがいまして、アジアの都市との友好都市提携につきましても、今後の交流の実績等に基づきまして検討をしていくべきものと考えておりますので、御理解のほどよろしくお願いいたします。

教育長(中村昭雄)

 アジア諸国にかかわる副読本についての御質問にお答え申し上げます。
 荒川区では、これまでも国際理解教育の一環といたしまして、全国に先駆け、アジアに目を向け、マレーシア、シンガポール共和国への中学校生徒海外派遣を実施いたしております。これまで派遣生たちは、両国を訪問し、文化交流やホームステイ等を体験し、同じアジアに生きる人間としての信頼、友情の心、協調、共感、連帯の心などを育み、友好親善を深めてまいりました。
 帰国後、派遣生たちが作成した報告書「ふれあい」は、各学校において両国を理解するための副読本的資料として活用されております。
 また、各学校において、社会科等の授業を通して児童・生徒がアジア諸国と日本とのかかわりや歴史的事実について学習し、十分理解を深められますよう、その指導の充実を図っているところでございます。
 教育委員会といたしましては、アジア諸国に関する副読本につきましては、その必要性も含め今後検討してまいりたいと考えております。
 次に、中国帰国者の子供たちへの日本語教育の充実についてお答え申し上げます。
 本区におきましては、御質問の南千住寮等に居住する中国帰国者の児童が在籍いたします瑞光小学校に日本語学級を設置するとともに、担当教員を配置いたしまして、日本語が十分理解できない子供たちのために、日本語指導及び学校生活への適応指導を実施いたしております。また、中国語の話せる指導協力者を週に2時間派遣いたしまして、それぞれの児童に応じたきめの細かな指導を展開しているところでございますが、基本的生活習慣の定着や、友達とのかかわりに対する一層の支援などが必要であると考えております。
 教育委員会といたしましては、今後も指導協力者の派遣により個別指導の充実を図るとともに、日本語学級の教師と関係機関、地域のボランティアとの関係を密にして、中国帰国者等の子供たちが安心して学校に通うことができるよう努めてまいりたいと考えております。

教育長(中村昭雄)

 次に、O-157問題に関連いたしましての学校給食についての御質問にお答え申し上げます。
 荒川区の学校給食につきましては、教育委員会と学校関係者とが連携を図りながら、素材からの手づくり給食を基本とし、また、衛生管理面でも国や都の基準をより厳格に適用する形で実施をいたしているところであり、評価をいただけるものと考えております。
 こうした取り組みの内容につきましては、給食調理業務の委託実施校におきましても同様に行われるシステムとなっており、現に本年度からの委託校におきましても、これまでどおり素材からの手づくり給食が、衛生管理面でも極めて良好な対応がなされる中で実施されているところでございます。
 もとより学校給食での食中毒の事故は、調理業務を行う体制が直営であれ、民間委託であれ、あってはならないことでございますので、今後とも安全に万全を期して取り組んでまいる所存でございますので、御理解のほどよろしくお願い申し上げます。

福祉部長(鈴木紘一)

 中国帰国者への支援の御質問にお答え申し上げます。
 日中の国交正常化以降、中国からの帰国者の方々は5000人を超える数となっており、荒川区にお住まいの方も相当の数に上るものと考えております。帰国者の方々の中には、既に各分野で活躍されている方も多くおりますが、言葉や生活習慣、社会の仕組みの違いなどから不安を感じている方もおられます。
 国や都では、帰国者の方々に対し、定着促進センターや自立研修センターの設置、自立指導員の派遣など、福祉、労働、住宅、教育などさまざまな分野での定着、自立を支援する事業を講じておりますが、帰国者の方々の日常生活をめぐるさまざまな問題の解決には、必ずしも万全でない状況と認識いたしているところでございます。
 そのため区長会として、国や都に対しまして、帰国者の実態の把握と総合的な定着対策の充実を強く要望いたしております。
 また、区といたしましても、帰国者にとって身近な自治体としての立場から、各種の相談や自立の支援に努めるとともに、国際交流協会との共催により、帰国者の方々も参加できる日本語教室を実施いたしております。
 今後さらにこうした方々を地域コミュニティやボランティアが支えるような手だてについても検討してまいりたいと存じますので、御理解のほどよろしくお願い申し上げます。