斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、議案第35号、荒川区立学校設置条例の一部を改正する条例に反対の討論を行います。
 今回の条例は、荒川区で初めて公立幼稚園の廃園を行う条例提案です。昨年来、廃園の是非と実施時期をめぐって、地域でも議会でもさまざまな議論があり、とりわけその中で実施時期の1年延期を求める陳情が賛成多数で採択されたことから、この問題の行方が注目されてきました。
 今回提案された条例について、まず私は、教育委員会が根拠にしている2つの点について反論を申し上げたいと思います。
 第1に、教育委員会が廃園計画を進める理由として繰り返し述べてきた財政負担の問題です。子供1人当たりの経費が公立100万円に対して、私立は20万、約5倍も経費がかかると強調し、公立の人件費は年間1人1000万円、行政経費のむだを省くという観点から、一刻も早くやりたい、緊急に廃園を進めたい、非効率極まりないと12年実施を行う理由に挙げられました。子供1人当たり100万円対20万円、こんなに違うとおっしゃるけれども、区が直営で運営する公立幼稚園、片や民間の企業が経営する園への公費補助、これは違って当たり前の世界であります。
 当然のことながら、公立の経費のほとんどは人件費です。民営化万能論の根拠は、この人件費がむだである。民間に任せれば税の支出は少なくて済むというものです。つまるところ、民間の安い人件費で賄えるならそれでよいという考え方です。
 率直に言って、私立幼稚園の経営は大変な低賃金構造によって成り立っています。私は、数年前、バブル期に多角経営に乗り出して失敗し、本業の幼稚園が差し押さえられ、倒産に至った豊島区のある私立幼稚園の若い先生たちから相談を受け、この園にかかわりを持った経験があります。先生の中の1人が荒川区内の自営業者の娘さんだったので、私のところへ相談に来たというわけです。
 私は、この園の実態を知って驚きました。名門と言われたこの園の先生たちは短大卒で就職し、経験2年から8年で皆20代でしたが、平均手取り賃金は13万から15万円、送迎バス、昼食つき、習い事教室という形での長時間保育といういわゆる三種の神器を備えた運営に、少ない人数で身を粉にして働いておりました。
 少なからず地域の幼児教育を支えている私立幼稚園のこうした低賃金構造を是とするのでしょうか。その上で公立の人件費との比較をするというのでしょうか。税からの人件費支出を減らすことが必要だ、区民の負担になるという主張は一見もっともなように見えますが、引きかえに、安い賃金、不安定な労働条件の人々を大量に生み出すことが、国民経済にとって果たしてプラスと言えるでしょうか。
 民間委託、民営化で財政支出は減らせても、勤労者や国民の生活は決して豊かにはなりません。結局納税力が低下し、財政に響いてくるというこの循環です。現在の不況の実態であると思います。こうした観点から、人件費削減の議論をもう一度見直すべきであると、そのときが来ていると私は考えます。
 また、100万対20万という公私の比較は単純には行えない。財源構成から見て、荒川区の単独の負担としてはどうなのかという点を私は再三申し上げてまいりました。公立については、国、都、財調ですべてが賄われ、区負担はゼロ。それに比べて私立には年間2億4000万円からの区財政が支出されております。区財政の厳しい折、これだけの区独自負担をし、まさに荒川区独自の政策的経費として、区民に負担をお願いしてまで私立幼稚園を手厚く保護してまいりました。このことも財政問題の一つの側面であることを忘れないでいただきたいと思います。
 さて、第2番目に、教育委員会は廃園を進める理由として、教育環境の整備充実という点を挙げられました。小規模化で教育環境が悪化している、何とかクラスがえを行えるようにしたい、そのために廃園とまでは聞こえなくもなかったんですが、とにかく小規模化から子どもたちを救うことこそ教育環境の整備充実だと強調されました。
 10年前、荒川区で初めての小・中学校統廃合が行われました。私の一人娘はこの小学校の卒業生でした。このときの考え方と全く同じことを今も教育委員会は主張しています。その一貫性たるや、ほめられなくなくもないのですが、今、時代は、社会は、一体そのような状況でしょうか。中学生の事件に加えて、小・中学校での荒れる教室、学級崩壊ということまで報道されています。心の教育の大切さが言われ、子どもたちの教育に関心が一番高まっているときです。大人社会の価値観の反映と言われて、教育がどうなるのかが日本の未来を左右すると言われています。その中で少子化という状況をしっかりと見つめ、新たな条件の中でこれからの幼児教育を考えるとき、公立幼稚園という大切な資源を生かしていこうというお考えは教育委員会にはないのでしょうか。
 公立幼稚園で行われてきた自由保育、一人一人に手をかけて、目をかけて、伸び伸び個性を育てていくという内容が再評価されるときではないんでしょうか。少ない子どもたちを社会が大切に育てていくという考え方が今必要ではないかと思います。
 教育委員会自身も、この間の委員会質疑の中で、小・中学校の35人学級、30人学級という事態も将来あり得ることとして認められました。小規模化はマイナスの教育環境だから統廃合という考え方は、もうおくれた考え方になってきたのではないか。教育委員会が時代に敏感であるならば、そろそろ改められた方がよいと申し上げておきます。
 私はこれらの問題を踏まえて、今後教育委員会が荒川区の幼稚園をどうしていくのか、この基本姿勢こそが問われていると思います。3歳児保育が初めて施行され、3園で45名の定員を倍以上も上回る92名の応募、ここには地域からの公立3歳児保育への大きな期待が込められていると思います。
 委員会では、町屋・荒川地区での早期実施を求める意見もありました。私は地元の保護者の皆さんと一緒に、従来から公立で3歳児を実施しないことが、日暮里などの地域によっては、他区私立幼稚園への入園、ひいては他区小・中学校への児童の流出と、日暮里の小学校の小規模化の原因となっていることを訴えてきました。昨年9月の委員会で、教育委員会自身もこのことを認められ、歯止め効果を言われました。しかし、現実には第二日暮里小学校では47人いた学区域内の就学予定者に対し、実際の入学は23人と半分に満たない数でした。二日小に入学しなかった24人のうちの13人は隣接区の小学校へ越境しているのが現状です。同じように、第三日暮里小学校では、学区域内の予定人数の3分の1しか入学者がいないという現実があります。この地域ではこのようにまだ区外への流出は止まっておりません。学校も地域も依然として深い危機感を持っています。こういう中で公立3歳児保育の拡大実施が有力な対抗策として強く望まれているというのが現状であります。
 教育委員会はなぜ、ちゅうちょするのでしょうか。そこには行き過ぎた私立保育園経営への配慮があります。私立幼稚園では、平成9年度の統計によれば、3歳児は定員330名に対し30名で、90%の充足率です。しかし、4、5歳児はどうでしょうか。56%から60%の充足率というのが実態で、つまり、私立の経営は3歳児保育によって成り立っていると言っても過言ではありません。
 一方で、区外への流出は、平成7年で847人、平成8年で770人、先ほども述べたようにこれだけ多くの子供たちが区外の3歳児保育を利用し、就園している事実があります。公立幼稚園での3歳児保育拡大はもう待ったなしです。これ以上の過剰な私立保護を続けるなら、背景に特定会派の後押しがあると言われても仕方ありません。
 私たちは児童数の減少のもとで、戦後最大規模の配置を未来永劫続けるという考えは持っておりません。今回の中学校3校統合についてもこのような姿勢で会派として対応しました。幼稚園もその例外ではないとはいえ、小学校、ましてや中学校との違いというものがあります。歩いて通える幼稚園を残し、少子化の中での心豊かな教育を目指して教育委員会はみずから責任のある公立幼稚園の位置づけを明確にして、やみくもな廃園を強行しないよう会派として強く申し述べておきます。
 最後に、平成の赤紙と名づけていただきました私のチラシでも述べましたとおり、私は、また私たちの会派は、議会の多数意思を無視して条例提案を強行した前代未聞の教育委員会の行動に厳しい怒りをもって反省を求めたいと思います。
 廃園計画の1年延期は明確な議会の意思です。区立幼稚園の廃園計画が具体化されたのはつい昨年のことであり、名指しされた幼稚園2園の保護者の間では、就園を予定している子供たちのこともあって、急な計画の具体化に大きな戸惑いと不安がありました。教育委員会と議会に何度も足を運び、その結果、廃園はしのびないけれど、せめて次の年度の入園予定者の子供たちまで受け入れる期間が欲しい、準備期間に責任を果たしたいと在園PTAの保護者代表が出されたのが1年延期の陳情でした。
 委員会は、正副委員長がこうした保護者の意思を確認し、議論を重ねた上で廃園を1年延期することを支持したのです。この陳情審査の委員会で、周知に余りにも期間が短く、保護者や地域が不安になっているではないか、また議会での陳情の審査も待たずに区報掲載したことは議会軽視ではないかとの指摘がなされました。教育委員会の姿勢に強い反省が求められたわけです。
 こうした経緯や教育行革への区民の心情を考え、教育委員会はせめて1年譲るべきだとしたのが昨年の委員会の結論でした。教育委員会はこうした経過を知りながら、議会の意思は必ずしも明確でないなどと言い張りました。この不遜な姿勢こそ議会と区民の不信感の源だということを肝に銘じるべきです。議会の多数意思を無視し、どうしても計画どおりの廃園を強行しようとする教育委員会の姿勢は一体何なのでしょうか。1年譲れない真の理由は何なのでしょうか。
 峡田幼稚園、南千住幼稚園の2園の廃園は、2園の保護者や周りの地域だけでなく、他のすべての園の保護者や地域にも大きな関心をもって見守られています。教育委員会は、そして藤枝区政は、こうした行革一辺倒のかたくなな姿勢でよいのか。区民や議会の意向も聞き入れず、条例提案を強行した教育委員会に強く反省を求めます。
 最後に、私は、昨年、ことしを通じた区民文教委員会の一人として議場にいらっしゃる議員各位、とりわけ昨年陳情に賛成した会派の議員お一人お一人に条例に反対していただくことをお訴えしたいと思います。
 昨年12月5日のこの本会議場での採決を思い起こしていただきたいと思います。皆さんが示された意思は条例反対の態度で示していただいてこそ、この議会と区民との信頼関係を失わずに済むのだと私は思います。いわゆる与党会派の委員の中には、住民への賛成は賛成、条例に対する賛成は与党会派としての信義の問題であって、別のことだという意見があります。そうでしょうか。与党会派の信義とは何なのか、行政との信義なのか、与党会派同士の信義なのか私にはわかりません。しかし、その信義が大切なら、区民との信義はどうなるのでしょうか。議員としては陳情採択の立法化に責任を持つことこそ当然の態度でしょう。区民の理解に苦しむような議会であってはならないと思います。私は自分自身がこの責任を果たせなかったことを陳情者の皆さんを初め傍聴席にいらっしゃる皆さんにおわびしなければならないと思っています。再度教育委員会に強く反省を求め、そして議会の信頼のためにも、昨年陳情に賛成した会派のすべての議員の皆さんがこの条例に反対されることをお訴えして私の反対討論を終わります。