河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月26日 2014年11月26日

斉藤ゆうこ

 あらかわ元気クラブの斉藤ゆうこです。
 私は、『区民が豊かに暮らせる荒川区』をめざして、現在策定中の新たな『荒川区基本構想』に対する幾つかの提言を行ない、当局のお考えを伺います。
 現在の『荒川区基本構想』は、上野和彦・東京学芸大学教授を座長とする基本構想審議会の議論を経て起草され、1999年区議会第2回定例会において全会一致で可決されました。しかし、この基本構想のスローガン『ともに築く生活創造都市あらかわ』は区の封筒からも姿を消し、最近はトンと見かけなくなりました。11月21日、新たな基本構想の審議会答申案が区報に発表されましたが、今回、基本構想を新たに策定し直すのであれば、7年を経て今日の荒川区が抱える問題を打開する方策を区民に示すものでなければなりません。また、「荒川区の将来像をどのように描くのか」「それをどうやって実現するのか」、そうした角度から区民が希望を持てる構想にすべきであることは言うまでもありません。
 そこで私は、基本構想の策定に向けて、あらかわ元気クラブとして3つの方面について提案をし、質問したいと思います。私は、西川区長が就任されて以来、区議会で唯一2回の予算に反対しました。地方議会は議員内閣制ではありませんから、国会で言う所の『与党』『野党』は存在しません。しかし、首長の予算に賛成か、反対か、という点で言えば、元気クラブは所謂『野党』であり、しかも、たったひとりの小さな存在に過ぎません。私は日々、自分自身の力不足を痛感しておりますが、「一寸の虫にも五分の魂」という諺もあります。故事ことわざ字典によれば、「小さくて弱いものや貧しいものでも、それ相応の意地や根性を持っているので侮ってはいけない」というたとえだそうです。西川区長に与しない私が行う提案の中にも、将来の荒川区にとって有益な主張もあろうかと思います。立場のいかんを問わず、自由に政策論争ができる区政を切に願って質問を致しますので、どうぞ宜しくお願い致します。
 さて、荒川区の将来像を描こうとすれば、私たちの町の過去から現在への変化と、諸条件に着目しなければなりません。
 戦後、隅田川沿いの大工場を中心に、町中に〈ものづくりの槌音〉が聞こえる町として栄えた荒川区は、1980年代の後半からの産業構造の変化とともに姿を変えてきました。中小企業を大事にしない今日の経済政策の下で、区内企業は廃業や倒産に見舞われ、事業所数の減少が今も続いています。景気の悪化や働く環境の変化から消費は活性化せず、大型スーパーの進出におされて地域商店街の衰退も続いています。事業所の数も減っていますし、従業者数の減少率はなんと23区で一番だということがわかります。
 一方、大工場の跡地や駅前再開発、最近では中小工場の跡地にもマンションが建ち、荒川区は〈都心近接の住宅地〉として注目されるようになりました。人口は微増に転じ、2000年以降、首都圏からの流入、都内からの転入が増加していることがわかります。
 そして、昨日も議論になった区財政は、20年前に1:2だった区税収入と都区財政調整交付金との比率が1:3となり、自主財源の比率は減少して財調への依存度が増しました。財政全般は、予算のマイナスシーリングを行わなくても収支のバランスが取れる状態になりましたが、真の財政健全化をめざして自主財源を増やそうとするならば、区民自身が豊かになることを抜きには考えられません。私は、好転した財政を国の社会保障改悪の穴埋めに費やすのではなく、地域経済が潤い、区民を豊かにするために投資すべきだと考えています。
 このような観点で諸条件を考慮に入れ、時代の波の中で姿を変えつつある荒川区の発展方向をどう描くのか、地域経済活性化の力をどこに見い出すのか。私は、荒川区の将来像を『地域産業と暮らしやすい住環境が調和した町』、『〈ものづくり・商店街・住宅〉が共存する活気ある下町・荒川区』として描きました。それは、減少したとはいえ、下町・荒川区は製造業の集積地、産業の拠点に変わりがないこと。そして「地域にとって将来も必要だ」と再評価されている地域商店街が今も残る町であることに着目したからです。こうした、東京のほかの町には見られない特色が荒川区にはあります。旧来からの区民の基盤である製造業や地域商店街の可能性を引き出して地域経済がもっと潤うようにし、そのことが、新たにここに住まいを求めてきた区民の「住んで良かった」という暮らしやすさや満足につながる。そんな将来像をめざしたい、と考えました。
 そこで、第1に〈ものづくり・地域商店街・住宅〉が共存する活気ある下町・荒川区を実現するために、以下のように提案し、当局の見解を伺います。
 まず、発展途上国からの研修生を受入れる『アジアの技術センター・荒川区構想』を提案し、見解を伺います。
 一昨日のNHKテレビ「クローズアップ現代」は、国の『外国人研修・技能実習制度』が本来の目的を離れ、悪用されている実態を取り上げていました。愛知県豊田市の自動車下請け工場などを中心に、研修生として来日した外国人青年が、1時間350円の残業手当で長期にわたって監視労働をされ、トイレに行く回数で罰金を科すなどいう、奴隷まがいの環境で働かされた事例が報告されていました。研修生の青年たちは泣いて窮状を訴えていました。発展途上国の青年たちが、日本の国と企業に対して拭い去れない悪感情を抱いただろうと思うと残念でなりません。
 法務省は、この研修・技能制度を「安い賃金の労働者確保に悪用した」として、廃止を検討する方向だそうですが、地方自治体として何か別の方策を取ることはできないでしょうか。荒川区には、今もなお、ものづくりの技術や技能が集積しています。こうした地域特性を生かし、また友好都市提携などを生かして、『アジアの技術センター』と銘打ち、区内のものづくり産業が発展途上国から研修生を受け入れる場合に区が支援する制度をつくってはどうでしょうか。『技術の里親』として荒川区をアピールすることで、荒川区がものづくりを残す町としての価値を発揮できるのではないかと考えます。
 産業のもう一方の商業の分野では、大型スーパーの進出に押されて地域商店街の衰退が続いています。こうした状況の中、最近の世論調査では「大型店はこれ以上必要ない」「地域商店街の存続を望む」という声が半数を越えました。
 「地域商店街が残る町」を荒川区の将来像とし、商店街を町の魅力としていくためには、区が意識して商店街を残す政策が必要です。それには「規制と活性化支援」のふたつがキーワードになると思います。そこで、私は、『まちづくり三法改正』の趣旨を生かし、大型店出店の適地性を考慮したゾーニングや、総床面積規制=オーバーストア対策を盛り込んだ(仮称)『大型店の出店とまちづくりに関する条例』を制定すること提案します。土台、荒川区の個人商店が巨大資本の大型店と対等に競争できる訳がありません。市場原理がすべてだ!というなら、荒川区の商店街などひとたまりもない。それで良いのか、という問題です。本気で地域商店街を残そうとするなら、何らかの規制が必要なことは、自明であります。福島県の条例をはじめ、全国に展開する規制条例を研究し、荒川区の条例制定に踏み切ってほしいと思いますが、いかがでしょうか。
 また、商店街と地域の顧客との結びつきを強め、地域商店街の持続的な基盤強化につなげるキャンペーンを提案したいと思います。
 「地域商店街が必要だ」と言われながらも、顧客離れが続いています。「ホントは顔なじみの地元の商店街で買い物したいんだけど、残業して帰るともうお店は空いてない。空いてるのは大型店とコンビニだけ」と嘆く40代、50代の共働き主婦の声も聞かれます。働かされ過ぎなんですね。こんな働き方や消費生活の変化も、地域商店街に影を落としています。また最近、商店街でイベントを実施した時には、子育て世帯やファミリー層が大勢集まって楽しそうしているのを見かけますが、それが日常の消費行動に結びついていない、という実態があります。
 商店街の存続を図るには、将来の消費者を育てるために子育て世帯やファミリー層を商店街に呼び戻す必要があります。そのためには、大変ですけれど、『日曜もやってる商店街キャンペーン』とか『9時までやってる商店街キャンペーン』などの運動を積極的に推進し、支援していく必要があると思います。地域の商店街とお客様との結びつきを強めるために実行してはいかがでしょうか。
 さらに、新たな観光スポットを開発し、全国に発信して元気な荒川区を創ることを提案したいと思います。東京に1つしかない〈都電荒川線〉と〈荒川遊園地〉はすでに荒川区の観光資源ですが、ほかにも、区外からの来客で賑わう〈布の街・日暮里繊維街〉、若い人たちにも人気の〈三河島の焼肉&韓国・朝鮮グルメ〉、水辺の公園が広がる〈汐入〉、工場跡地によみがえった自然と遊ぶ〈尾久の原公園〉などの楽しいスポットが区内にはあります。
 先日、「繊維の街・日暮里」「ファッションの街・日暮里」を全国にアピールし、繊維街の活性化をめざす「日暮里コレクション」が日暮里サニーホールで開催されました。服飾専門学校の学生や若きデザイナーの卵たちが才能を競うコンテストは、今後の繊維産業、ファッション産業の人材育成にもつながる、と地元繊維街の皆さんは毎年頑張ってきました。今年は、友好都市提携を結んだ中国・大連市中山区から大連モデル芸術学校のモデルたちを招き、「ASIAN MODE」をテーマにアジアの魅力を日暮里から発信しよう、との意気込みで開催されました。日中の若い世代の息吹が感じられるイベントでした。
 私はこの繊維街の近所に住んでいます。週末には区外から沢山の人たちが買い物に来ており、道を尋ねられることもよくあります。この日暮里繊維街から、三菱銀行の交差点を経て三河島駅に続く商店街を通り、駅周辺に展開する飲食店へ至るルートは、買い物をしながら歩ける距離にあります。いま、三河島の焼肉や韓国・朝鮮グルメは区外の若い人たちに人気です。済州島との友好都市提携も生かして、もっと内外にアピールできるハズだと思います。
 そこで、日暮里や三河島の再開発ビルに区としてスペースを確保して『観光案内ステーション』を設置し、日暮里繊維街から三河島駅周辺の商店街・飲食店街へと回遊する楽しいルートを充実させ、荒川区の魅力のひとつとして発信してはいかがでしょうか。「チャングム」を見たことのない人には話が通じないと思いますが、うちの近くには「スラッカン」という飲食店があります。観光はこのように流行に敏感なことも大事です。日暮里・三河島の観光案内ステーションに行くと女官服を着たチャングムが「いらっしゃいませ!」と応対に出てくる。その後ろからハン尚宮が「チャングム、お客様はどなたなの?」とのぞく。こういうオモシロイことをやれば話題になること請け合いだと思いますが、いかがでしょうか、ご見解を伺います。

さて第2に、荒川区の子育て世代が「住んで良かった!」と満足する町を実現するために、以下の点について区当局の見解を伺います。
 荒川区を元気な町にし、地域社会に投資するという位置づけで、子育て支援を格別に充実させることは、とても大事な問題です。
 私は、所得の少ない若年層に対して、単身者向けと世帯向け両方の区民住宅、借上げ区民住宅を用意すること。また、家賃助成や出産祝金などの積極的な現金給付を行うことで、若い世代が子どもを産み育てる環境を整備することを提案します。合併して南丹市となった旧・京都府園部町では、子宝条例と独自の出産手当で出生率をアップさせた実績があります。小学校を増設したほどの人気でしたが、この背景には経済的に苦しい今日の若年世帯の実情があります。特に、若年層に対する公的な住宅政策は皆無で、これでは常勤でも200万から300万の年収から抜け出せない圧倒的多数の若年層が結婚、出産を考えられないのもうなづけます。終身雇用と年功賃金が崩壊した今日、若年層の状況はかつての我々とは違います。こうしたことも考慮した政策が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、区民要望の強い3歳児保育の拡大を早期に行い、保護者が区立幼稚園と私立幼稚園とを選べる環境を整える計画を明らかにしてほしいと思いますが、教育委員会の見解を伺います。3園での試行から9年、子育て世代はもうシビレを切らしています。条件のある所から受け入れの拡大を実施していただきたいと思います。
 また、保育園についても同様に、公立保育園と私立保育園のバランスある共存を維持していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。荒川区では、「新たな行革プラン」の中に『公立保育園の民営化』が書かれた経過がありますが、実際には具体的な検討はなく、区の既定方針として決定された事実はないと思います。しかし、最近、「既定方針を変更して現在の公立保育園を幾つか残し、他を民営化したらどうか」とか「園の民営化はすぐには出来ないので、給食の民営化をすすめる」とか、区の意向に関する話があちこちから伝わって来ます。
 また、保育園給食の民営化については、今年度実施された2園に続き、さらに2園が提案されていますが、実施を名指しされた園では、毎年混乱と不安がおきているのが実情です。荒川区は保育園給食をどこまで民営化するのか。毎年、来年はここ、今度はここ、とやられていたのでは、保護者はたまったものではありません。私はもともと、「小さな赤ちゃんの保育園給食まで民営化する必要があるのか」という意見ですが、区は全園に給食民営化を拡大する明確な方針をお持ちなのですか? すべて民営化ではなく、ある程度の直営の園を残して両者を共存させる考えはないのでしょうか。どこまで民営化するのかの方針を保護者や区民に提示せずに、毎年、順番に保護者を不安に陥れるようなやり方は改めるべきではないでしょうか。
 乳幼児医療の無料化を拡大する問題ばかりでなく、荒川区の子育て世代が幼稚園や保育園のサービスについての区の将来計画を知り、見通しを持てるようにすることが、若い区民の安心な暮らしと子育てにつながるのではないでしょうか。当局のご見解を伺います。
 子育て支援に関する提案の最後に、ハンディキャップのある子どもや、親が病気や障害になって厳しい状況に置かれた子どもを受け入れる『地域のシェルター』を、区の施設を活用して設置し、専門職員を育成して支援することを提案します。
 〈子育て支援〉の手は、困難な状況にある子どもたち、親たちにも届かなくてはなりません。病気やハンディキャップがある子どもたち、親が病気になったり、入院したり、一時的に不在になったりする子どもたちもいますが、いま、地域には受け入れる場所がありません。親の入院、交通事故、退院後も家事や育児に支援が必要なケース。こういう時に、子どもはどこに行き、誰を頼れば良いのでしょうか。主任児童委員や民生委員の方たちにも伺いましたが、児童相談所は一杯だし、地域に受け入れ場所がない、という悩みは同じでした。また、就学前、就学後を問わず、ハンディキャップのある子どもを持つ親の肉体的、精神的な負担はとても重いものがあります。子どもを預けて他の子どものための用事をしたいことも、少しからだを休めたい時もありますが、そうした場所がありません。ハンディキャップのある子どもの保育には専門的な対応が必要だ、と一時保育をしている保育士から聞きました。とすれば、たんぽぽセンターのように通い慣れた場所で、人を配置して応援できる体制をつくるのが、もっとも良いのではないでしょうか。聞いたところ、たんぽぽセンターには、障害児の心理や言語療法など分野を受け持つ専門職の職員がいますが、新規採用がとだえているため、退職を控えての人材育成もままならないとのことでした。区内に大事な施設や人的資源を持ちながら、もったいない話だと思います。区のこうした資源を生かし、困難な状況にある子育てにも支援の手が届くようにしてほしいと思いますが、いかがでしょうか。

 質問の最後に、地域の歴史と文化を輝かせ、国際理解をすすめる荒川区を実現するための提案を行い、区当局の見解を伺います。
 まず、日暮里駅周辺に(仮称)『戊辰戦争記念館』を開設し、彰義隊などの歴史展示を行うことを提案致します。明治維新という歴史の転換点に、上野の山で闘われた戊辰戦争は、私たちの町に様々な痕跡を残しています。日暮里の『羽二重団子』は私の同級生のご実家ですが、弾の跡や彰義隊の衣装が残るゆかりの場所です。また、下御隠殿橋を上がった経王寺の門には、やはり当時の痕跡を残す弾の跡があります。日暮里などわが町の近辺の人たちが彰義隊とどのような関わりをもったのか。私は、森まゆみさんの「彰義隊遺聞」を興味深く読みました。また吉村昭氏の著作には朝日新聞に連載された「彰義隊」があり、執筆に当たって荒川図書館に来観されています。日暮里再開発がすすむ中、こうした私たちの町の歴史を後世に残していくためには、今荒川区が何らかのアクションをおこす必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 次に、済州市、大連市との友好都市提携を区民レベルで発展させるため、区内の高校・大学等と連携し、相互訪問など、将来の友好につながる若い世代の交流を支援する事を提案します。また、料理・映画・音楽など文化の各分野で区民団体との交流を区として支援していく必要があると思いますが、いかがでしょうか。9月に大連市中山区への区民ツアーに参加しましたが、日暮里繊維組合と並んで、荒川区文化団体連盟が書道連盟など各団体の代表の方々こぞって参加をされ、区民レベルの交流に大きな役割を果たしたことを拝見しました。今後も、区民の交流の裾野を広げて行く核になっていただきたいと思いますが、交流を継続していくには、自主的な努力だけでなく、区としての支援も必要になつてきます。映画や音楽と共に、料理を上げたのは、中華料理の飲食店組合を中心に、区内の見近な所に多くの中国料理店があり、レシピや食材の提供、コックさんなどの人的交流も可能なのではないか、と思うからです。こうした区民各界、各層の交流支援で友好都市提携を幅広く、次世代まで展開する構想を描いてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
 さらに、再開発ビルなどでの公共スペース確保や商店街の空店舗などを民間借上げしてして、町の中に国際交流の拠点を設置した方が良いと考えますが、いかがでしょうか。
 以上、新たな基本構想策定に向けて、元気クラブとして3点にわたり提案を致しました。当局のご答弁をお願い致します。

区長(西川太一郎)
 斉藤ゆうこ議員の国際交流に関するご質問にお答えいたします。
 はじめに、友好都市提携を区民レベルの交流に発展させるための支援についてのご質問でございます。
 これまで、機会あるごとに申し上げてまいりましたが、私は、荒川区における都市間交流は、区内の団体や企業、区民の皆様に主体となっていただき、様々な分野で多様な形で、友好交流の輪が広がっていく、地に足の着いたものにしなければならないと考えております。区の果たすべき役割は、そうした交流を着実に進めていくために、必要な環境を整え、的確な調整や支援を、可能な限り行っていく事にございます。
 ご案内のとおり、本年2月には、区議会の全会一致でのご議決をいただき、済州市、大連市中山区との交流が本格的に動き出しました。また、高校生や民間レベルでの交流を積み重ねてまいりましたウィーン市ドナウシュタット区とは、友好都市提携10周年という節目を迎えました。本年度は、まさに区民主体の交流をいかに拡大していくか、そのために区は何をなすべきかが問われた年であり、この間、積極的な取り組みを行ってきたところでございます。荒川区が国際交流協会とともに企画した、ウィーンと大連への区民訪問ツアーには、定員を上回る参加があり、それぞれの都市の住民との友好を深めました。その後、参加された有志の方が、訪問した都市で活躍する日本人音楽家の区内でのコンサートを企画しているほか、先週11月22日の、日暮里繊維街活性化ファッションショーには、大連市中山区との連携により、大連モデル芸術学校からモデルが参加し、大連コレクションを発表するなど、様々な方面から注目を集める中、大いにこのイベントを盛り上げていただきました。さらには、大連少年野球団と荒川区の少年野球チームが親善試合や交流懇親会を通して、今後の相互交流を約束しあったりと、区民レベルの交流の芽が着実に育っている状況が、そこここで見られるところでございます。
 斉藤ゆうこ議員からは、若い世代の交流促進や、ドラマ、映画、音楽、料理など、生活文化の分野に及ぶ幅広い交流についてのご提案がございました。荒川区といたしましても、あらゆる世代の区内の団体、企業、区民が主体となって、産業、観光、文化・芸術、スポーツ、青少年活動など、より幅広い交流を積極的に展開してまいりたいと考えております。荒川区国際交流協会などとも協議し、より効果的に民間交流を支援する仕組みづくりを含めまして、検討してまいりたいと存じます。
 また、国際交流拠点の設置についてでございますが、荒川区として交流拠点を設置する必要性等を、具体的な国際交流事業を推進する中で、議会等のご意見もいただきながら、総合的に検討すべき問題と考えますので、今後の検討課題とさせていただきます。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

教育長(川嵜祐弘)
 地域の歴史と文化を輝かせ、国際理解をすすめる荒川区の実現についてのご質問のうち、「戊辰戦争記念館」の開設に関するご質問にお答えいたします。
 ご質問にございますとおり、日暮里駅周辺は、台地に残る寺町が、上野や谷中などと共に江戸時代以降の歴史と文化を色濃く残す地域であり、現在も戊辰戦争の名残をとどめております。
 区といたしましては、このような地域における歴史と文化を後世に伝えていくことは、大変重要なことと認識しており、これまでも、荒川ふるさと文化館で幕末をテーマとして、区内に残る彰義隊に関する文化財の展示や、彰義隊をテーマとして経王寺や寛永寺を見学する史跡めぐりを行うなど、日暮里周辺の歴史と文化を伝える催しを度々開催してきたところでございます。
 「戊辰戦争記念館」の開設につきましては、用地や財源の確保など極めて大きな課題があることから困難であると受け止めておりますが、今後とも戊辰戦争と彰義隊などにつきましては、日暮里の貴重な歴史として、荒川ふるさと文化館の専門員を中心に更に研究を深め、光をあてて参りたいと考えておりますので、ご理解くださいますようよろしくお願いいたします。

産業経済部長(高野政義)
 はじめに、「アジアの技術センター荒川区」についての質問にお答えいたします。
 区内のモノづくり企業は、産業構造や社会経済環境の変化等の影響により、近年、企業の総数は減少いたしましたが、長年にわたり培われた高い技術や卓越した技能を有する企業がございます。
 このような区内企業において、自国の経済発展に高い志をもった多くの開発途上国の研修生が技術・技能の習得に取り組まれることは、区内企業を国内外に広くPRし、外国との経済交流を促進するとともに、わが国が国際社会の一員として、国際協力や国際貢献を推進する観点からも、重要なことと認識しております。実際に、タンザニアからリヤカーの製造技術を学ぶために来日した研修生を受け入れ、高い評価を得た区内事業者もございました。
 一方、研修生を長期間にわたり受け入れ、効果的な研修及び実習を行うため、企業には、一定程度の企業規模と十分な受入れ態勢の整備が求められております。しかし、区内のモノづくり企業においては、従業員9人以下の企業が約9割と小規模な企業が多く、また長期にわたる景気の低迷等の影響により厳しい経営環境におかれております。このようなことから、現時点で、区内企業による開発途上国からの研修生の受入れを制度的に支援することは、時期尚早であるものと存じます。
 現在、国は、現行の「外国人研修・技能実習制度」を悪用した低賃金労働や賃金未払いなどの不正雇用が多発していることから、当該制度の見直しを行っているものと聞いております。区といたしましては、国の見直しの動向等を踏まえ、慎重に調査・研究するとともに、先ほど例にあげましたような研修生の受入れに取り組まれる企業に対しては、国等の関係機関と連携し、積極的に情報提供を行ってまいりたいと存じます。
 次に、「大型店の出店とまちづくりに関する条例」についてでございます。
 区内商店街は、個人消費の低迷や消費者ニーズの変化、大型小売店等との競争激化などによって、現在、大変厳しい環境に置かれております。このため、区といたしましても、多くの区民が荒川区は買い物の便利な地域であると考えていること、また、商店街が防災・防犯等を支える地域コミュニティの中核を担っていることなどに鑑み、区は商店街の振興に努め、また、商店街で事業を営む者は商店街の活性化を図るため、相互に協力するよう努めることなどを定めた産業振興基本条例を昨年6月制定いたしました。
 現在、この条例の理念を具現化するため、産業振興懇談会の中に、若手商業経営者や消費者等で構成する商業振興懇談会を設置し、新たな商業振興施策の検討を進めるとともに、条例の趣旨の周知に努めているところであります。
 また、区では、大型小売店の出店に際し、「大規模商業施設の出店に伴う地域環境保全のための要綱」に基づき、地域関係者や商業者等から意見聴取を行い、事業者が地域環境の保全に努めるとともに、地域や商店街の活動に積極的に協力するよう、強力に指導しております。
 こうした取り組みによりまして、意欲ある商店街の活性化や大型小売店等との共存・共栄が図られ、豊かな区民生活が実現できるよう、努めてまいりますが、大型小売店の出店を規制する条例を荒川区独自に制定すべきであるという議員のご提案につきましては、各種法令等との整合性の確保、地域住民や関係者との調整など、様々な課題があり、その実現は困難であると考えております。
 続きまして、商店街の基盤強化につなげるキャンペーンについてでございます。先ほども申し上げましたが、現在、区では、商業振興分科会におきまして、新たな商業振興施策の検討を進めており、その検討の資料とするため、消費者、商業者、商店街を対象としたアンケート調査を実施いたしました。
 この調査では、区内の消費者のうち、約7割の人が大型店・大型スーパーをよく利用すると答えていますが、一方で、「街の活気がなくなるから」「商店街の活き活きした街が本当の街だと思うから」などの理由により、区内商店街に頑張ってもらいたいと答えている消費者も約8割にのぼるとの結果が出ております。こうした結果から、商店街と地域の顧客との結び付けを強め、商店街の基盤強化につなげるべきであるという議員のご提案につきましては、区としても、今後の商業振興施策の検討・実施に当り、重要な視点であると考えているところであります。このため、商業振興分科会には、消費者の立場から商店街の現状やあり方等について発言していただく委員にもご参加していただいており、また、意欲のある商店街の活性化策の検討・立案に当っては、地域の消費者と商店街との議論の場を設けることも必要であると考えているところであります。
 こうした消費者との議論を通じ、商店街や個々の商業者が、例えば、閉店時刻の延長や日曜日の営業などの具体的な消費者サービスの向上に努めていくことが、持続的な商店街振興策になると考えているところであり、今後、区といたしましても、商店街を応援する地域の消費者の組織化などについて、検討してまいる所存であります。
 次に、観光案内ステーションの設置についてでございます。
 荒川区内には、区外からも多くの人々が訪れる様々な魅力ある観光スポットが存在しております。こうした区の魅力や来訪者に楽しんでもらえるような地域情報を発信していくことは、区の観光振興を推進する上で、極めて基本的かつ重要な視点であると認識しております。
 日暮里には、日暮里中央通りを中心に生地織物の店が軒を連ねる、全国有数の繊維関連製品の集積地である日暮里繊維街があり、区内外から多くの人々が買物に訪れております。一方、三河島駅周辺のコリアンタウンも、雑誌等で紹介されることも多くなり、本格的でおいしい韓国・朝鮮料理が食べられると、若い人たちを中心に人気を集めております。
 区といたしましては、こうした日暮里、三河島につきましても、荒川区を代表する主要な観光スポットとして地域の魅力の発信に努めていきたいと考えております。
 そのためには、日暮里、三河島を回遊性のある観光ルートとして結びつけ、面的な魅力の認知度を向上させることが、まずは重要であると存じます。したがって、マスコミ等の活用も含めた多様な手法で、この地域に関する情報を広く発信する等の創意工夫に努めることが、現時点での優先事項であり、観光案内ステーションの設置につきましては、その後に検討すべき課題であると考えております。
 私どもでは、今後とも、荒川区の魅力の発信に努め、区外からの来訪者の増加を目指してまいります。

子育て支援部長(和気剛)
 子育て世代に関する3点のご質問にお答えいたします。
 はじめに若年層向けの施策に対するご質問にお答えいたします。
 近年、若年失業者やいわゆるフリーターやニートの増大など、若年層が社会的に自立し、家庭を築き、子どもを生み育てることが難しい社会経済状況があります。こうした状況の中で若年層の生活が安定したものとなり、社会的に自立していくためには、若年層をも対象とした、良質な住宅環境が整備されていくことは、望ましいことであると考えます。
 区におきましては、来年度、住宅マスタープランの改定にとりかかる予定であり、若年層への対策につきましても視野に入れながら、調査研究して参りたいと考えております。
 一方、出産祝金や家賃助成などの現金給付につきましては、現状におきましても、各医療保険において出産に関する給付が行われているところでございます。子育て世代に対する経済的給付の必要性は理解できるところですが、社会共通の課題として、国と地方自治体との役割分担のなかで解決すべき問題であると考えております。

 次に、区立保育園の民営化と給食調理業務委託の今後の展開についてのご質問にお答えいたします。
 区立保育園の民営化につきましては、現在、区立保育園20園のうち5園において、より効率的な管理運営とするため、公設民営方式を採用し、指定管理者による運営を行っているところでございます。
 この公設民営方式につきましては、あらかわ刷新プランにおきまして、今後、他の区立保育園にも、導入を検討していくこととしております。
 検討にあたりましては、保育需要の動向、保育士等職員の退職の状況や新規採用の必要性、保育内容のあり方などを早急に幅広く検討し、保護者が安心して子育てができ、子ども達が健やかに育つような保育環境を整えていきたいと考えております。
 また、給食調理業務の委託につきましては、食育の推進、アレルギー児対応の強化、給食内容の充実を図るとともに、運営の効率化を図るため、調理業務を委託し、あわせて、栄養指導等を行う栄養士を配置することとし、現在、2園で実施しております。来年度以降も、調理職員等の退職の状況を踏まえ、公設民営化の状況と整合を図りつつ、順次、給食調理業務の委託を進めて参りたいと考えております。
 最後に、親が病気などの子どもを受け入れる「地域のシェルター」についてのご質問にお答えいたします。
 近年、核家族化、地域社会の希薄化など、子育てをめぐる環境が大きく変化したことに伴い、家庭のなかだけでは、子育てを十分に背負いきれなくなってきており、結果として児童虐待に至ってしまう深刻な事例も生じかねない状況にあります。親族や近隣など、身近な地域社会での助け合いが必ずしも十分に機能しにくくなっている状況のなか、親が病気になった子どもや、ハンディキャップのある子どもに対する支援の必要性は十分に認識しているところでございます。
 区におきましては、ハイツ尾竹において、保護者の育児疲れや病気に際して、子どもを一定期間、夜間を含めお預かりするショートステイ事業を実施しております。また、障害のある児童に対しましては、ホームヘルプ、ショートステイ、デイサービス、ガイドヘルプなどの事業を展開しているところでございます。
 ご質問にあります、地域のシェルターを設置することは、現行の施設や制度のなかでは困難な状況にございますが、子ども家庭支援センター、児童相談所、保健所、たんぽぽセンターなど、関係機関と十分連携を図りながら、養育困難な家庭に対する支援策を検討して参ります。

教育委員会事務局次長(友塚克美)
 区立幼稚園の3歳児保育に関するご質問にお答えいたします。
 区立幼稚園におきましては、平成10年度に3歳児に対する幼児教育の試行を開始してから毎年度、募集定員を超える応募があるため、抽選により入園者を決定しております。
 こうしたことから、保護者の方々からは、3歳児保育を実施する区立幼稚園を拡大するよう、ご要望をいただいておりますが、これまで幼児教育に対する需要には、区立幼稚園と私立幼稚園があいまって対応してきており、区内の私立幼稚園への影響を考慮いたしますと、3歳児保育の実施園や募集定員につきましては、現行の方式を継続したいと考えております。
 一方、本年10月に文部科学省が策定した「幼児教育振興アクションプログラム」では、幼児教育全般にわたる質の向上を図るため、「希望するすべての幼児に対する充実した幼児教育の提供」など、今後の施策展開にあたりまして留意すべき視点が示されております。 今後、教育委員会といたしましては、このような国の動向や、区内外の公立私立幼稚園への応募状況などを踏まえまして、これからの幼児教育のあり方について慎重に検討してまいりたいと考えております。