河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月26日 2014年11月26日

 私は男女共同参画社会基本条例の取り下げに賛成の討論をいたします。
 荒川区の男女共同参画条例は、昨年末の懇談会設置以来、全国の注目を集め、女性団体43団体が横断的につくる国際婦人年連絡会から抗議や要望書が届く事態になりました。連日、荒川区の条例問題が新聞に取り上げられ、世間を騒がすことは荒川区政にとって好ましいものではありません。また、17名の委員のうち、8名が報告書に同意できないという意思表示された経過を見ましても、懇談会の報告書を踏襲した条例をつくることは、決して委員の方々全体の努力に報いるものとは言えません。したがいまして、今回、藤澤区長が条例の取り下げに踏み切られましたことは極めて賢明な判断であると思い、賛成をするものであります。
 条例の中身についてですが、「逸脱の防止と是正」と題した18条は、そもそも逸脱とか乱用とかをだれが判定するのか物差しなどありません。男女の区別を差別と見誤って否定の対象とするというような文言は、差別や人権をめぐる部落問題、外国人やハンディキャップのある人の問題など、過去の人権問題の経過から考えても極めて解釈が難しく、かえって人権を損ないかねないものです。
 また、第7条の「母子の生命と健康の尊重」には「胎児の生命を十分に尊重」との文言が入っております。この問題は、現行法である母体保護法との関連や性と生殖にかかわる女性の健康と権利という視点から、今後、地域で行われる施策にも深い関係を持ってきます。この条文をあえて入れることは適切ではありません。
 さらに、第6条の乳幼児期の母子関係の重要性は、一面当然のことではありますが、現在、深刻化している育児ノイローゼや児童虐待とも深くかかわる問題であり、この条文も同様に問題のあるものであると思います。
 提出された条例案には、男女の特性というような解釈の分かれる文言も使われております。このような文言をあえて条例に使用することは、国の法律がつくられた過程での議論や法律の趣旨を踏まえたものとは言えません。
 少子化、出生率の低下が大きな背景となってこうした問題も議論されておりますが、働きながら子育てをするということには、今では職場での支援が整備されずに仕事との板挟みになっている人たちも多く、専業主婦の子育てには育児ノイローゼや虐待などという問題があり、妊娠や出産、育児に希望を持ちたくても持てなくなっているというのが現状ではないでしょうか。少子化対策というならば、こうした問題の解決が先決なはずなのに、母親と家庭の役割ばかりを強調する、そうした考え方で条例をつくろうというのはそもそもの間違いではないでしょうか。
 私は、今後も荒川区と区議会が今回のような騒ぎの舞台にされるのは区民にとってよいことではないと考えます。区民生活が困難なとき、ましてや助役収賄問題の最中に、この一部の方たちの思惑で男女共同参画条例がいつまでも政争の具にされ続けることは避けなければならないと思います。いずれにしろ、特定の人たちの思惑でつくられ、区内外の批判にさらされたこの条例を取り下げるのは適切なことだと思います。
 最後に申し上げますが、私は教科書問題と男女共同参画で、歴史の歯車を逆に回そうとしている学者や政治家たちが同じグループの方たちであるという認識を持っております。この関係者3名が中心となった懇談会の委員構成こそ、今回の混乱の原因ではないでしょうか。中立であるべき行政が一部の議員と一緒になって、これらの人々を招き入れたことを区民は快く思っておりません。18条に象徴されるような、この方たちの独自の主張を受け入れて荒川区が条例をつくり、私たちの荒川区を彼らの政治活動の舞台として利用されることは、地域にとって利益になりません。このようなことは今後二度とあってはならない。そして、今後も一部の人たちに利用されるような条例制定は行わないことを強く要望いたします。
 最後に、今回の条例をめぐって、真の男女平等参画とは何なのか。私たちの議会の中でも、地域の中でも関心が高まり、認識が進んだことはとてもよい糧になったのではないかと思います。今後もこうした流れを促進していきたいということを申し上げまして、取り下げに賛成の討論といたします。