斉藤ゆうこのあらかわ日和

荒川区の来年度予算は大地震と原発事故から一年を経た現下の経済環境、財政環境からみて妥当なのか

2012年3月15日 本会議での来年度予算案反対討論

2012年3月15日、あらかわ元気クラブ斉藤ゆうこは荒川区議会本会議で、来年度予算案への反対討論を行いました。発言の全文を掲載します。

 私はあらかわ元気クラブとして「平成24年度 荒川区一般会計予算」に反対の討論をいたします。
 一般会計874億7千万円、三つの特別会計を合わせて1317億円の来年度予算ですが、この予算と実行する政策とが、東日本大震災と福島原発事故から一年を経た現下の経済環境、財政環境からみて妥当なものなのか。さらに、震災対策にとどまらず、多方面の教訓を残した今回の大惨事に充分学んだ地方自治体としての予算たり得るのか。この2点に照らして、私は西川区長の来年度予算に反対し、意見を述べたいと思います。

■荒川2丁目複合施設について
 まず、第1に、土地の取得と施設建設のあり方について。
私は、昨年3月の予算反対討論でも「特定の分野に偏った西川区政の『財政出動』は、区民経済への効果に疑問がある。区民は潤っていない」と土地購入・施設建設ラッシュを批判してきました。平成19年からこの24年3月迄の間に、荒川区は実に41件約96億6千万円もの土地を購入しました。
 この中には、すでに何らかの施設などの形になったものと、そのまま寝かしてあるものの双方があります。来年度予算には、その象徴とも言える「荒川2丁目複合施設」の約19億円の基本設計と実施設計が計上されましたので、私はこのままの形で計画をすすめることには反対であることを明確にしておきたいと思います。この周辺の土地購入の経過について、去る3月12日の土地開発公社評議員会で質疑があり、都営住宅跡地の譲渡で老朽化した荒川図書館の建て替えを、と始まった計画が、メッキ工場の土地の全面取得にまで発展し、これが、子ども関連施設、吉村昭文学館を含む複合施設へと次々に膨れ上がった経緯が出されました。

 今年度も、複合施設の拡張用地として隣の土地を購入していますが、買い足しを重ねる当局は、複合施設に3割、防災用地に7割を当てる計画で、さらに新たな隣地を購入するための費用を土地開発公社の来年度予算に計上し、事業計画を提案しました。
しかも、この土地の上には現在、印刷工場が操業しており、地主は区に売却する意向ですが、借地人である工場側との間で移転計画は合意はしておりません。地場産業の中小企業の事業継続と雇用をおびやかす問題に発展しかねないと思い、区の政策的な判断を求めました。この評議員会では、区の土地取得と事業計画について、さまざまな議論があり、結果として10名中4名の委員が、この土地購入を含む土地開発公社の予算と事業運営に反対を表明しました。

 私は基本設計・実施設計の予算が計上された「荒川2丁目複合施設」はこのままの概要では認めがたく、計画を凍結・変更すべきと考えます。対案はすでに昨年11月の一般質問で申し上げた通りで、図書館と幼稚園を含む施設とし、適地性のない吉村文学館は日暮里につくるというものです。

 保育園不足ばかりか幼稚園不足も言われていますが、荒川区は南千住幼稚園と、この地区の二峡小学校の中にあった峡田幼稚園とを廃園にした経過があることを忘れる訳にはいきません。この計画の中に幼稚園を復活させ、吉村先生の文学館は時期を見て、日暮里のしかるべきところにつくるのが適切であると確信します。吉村昭氏は「私が生まれた町、東京の日暮里町で・・・・」と書き、語られています。「荒川区生まれ」ではなく「日暮里生まれ」なのです。私は、吉村昭氏とその作品の価値を高く評価し、より相応しい姿で後世に残したいが故に、文学館の荒川2丁目での建設に反対を致します。

■保育園不足について
 第2番目に保育園不足について。
 区立保育園の不承諾は418人と昨年を上回り、南千住と日暮里では認可保育園に入れなかった子どもが数多く出ました。区は「増設中であるから来年は解消に向かう」と言いますが、個々の家庭にとっては、この年度に子どもが保育園に入れるかどうかが死活問題なのです。育児休業明けに入れると思っていた保育園に入れず、一カ月以内に迫った職場復帰に支障をきたすかも知れないお母さん、お父さんの不安と焦りは大変なものがあります。予算委員会でも申し上げた通り、「ライバルの状況はどうか?」「自分の敗因は何か?」というような言葉が出てくる程に事態は切迫してきました。

 小さな子どもを抱えた若い世代が保育園入園をめぐって同じ状況の人たち同士で競争を繰り広げなければならない現状は尋常とは言えません。人口20万人を超えて保育園足りず。新住民や子育て世代に強い怒りの声があります。「この現状では、とても幸福を実感するどころではない」と私も子育て世代から苦情を言われました。

 現場の保育課は、この2年間、大変な苦労を重ねていると思います。保育園建設、誘致の立ち遅れの原因は、適正規模人口の検討なく民間マンション建設を呼び込み、小規模戸建て住宅建設を野放しにしたこと、ファミリー世帯の流入・定住による税収増と保育園・幼稚園・学校・学童クラブなどの施設建設・整備にかかる費用との財政ハランスの検討が欠けていたことにあります。区の政策的責任は否めません。
保育園不足解消を焦って、草刈り場となっている保育市場に参入してくる悪質な事業者を呼び込まないよう、その点も警告しておきます。

■震災対策・防災危機管理対策について
 反対の第3番目の理由として、震災対策における『街づくり面の弱点克服『が重点になっていないこと、また、防災・危機管理対策として、放射能汚染対策の位置づけがないことを上げたいと思います。
 予算委員会で明らかになった『防災力第1位』の宣伝は茶番でした。このニュースは今年の新年会の随所で配布されていましたが、こうした小細工を弄して区政の功績を区民に宣伝しようとする現在の区の考え方に危機感を感じ、また愚民政治の臭いを感じます。

 首都直下型地震を想定したとき、東京都の「総合危険度ランク」が示すように、火災の発生、建物の倒壊、避難の困難さなど、荒川区には改善すべき街づくり面での弱点が数多く存在します。まず、区政の重点として、これらの弱点を区民と共有し、克服のための施策を実行していく姿勢が肝要です。木造密集地域のみならず、「地域防災計画」の修正方針にも書かれている、液状化対策、津波浸水対策、駅前再開発の超高層住宅の安全対策などを「防災危険度が高い」問題として区民に提起し、改善に力を入れるべきです。

 放射能汚染対策については、今後深刻化する食品等の汚染への備えがありません。昨日も岩手県沖、銚子沖で続けざまに地震が発生し、福島に加え、東海村の原子力発電所の稼働に異常がおきていないかどうか、すぐに報道がされていました。このようなことから見ても、震災と原発事故=放射能の広域拡散との連鎖はすでに常識となったと言えましょう。 また、雪解け水よる河川や海の状況変化、除洗作業による影響などで、今後も環境への放射能汚染が強まる可能性が指摘され、東京都でも隅田川や東京湾の測定をすすめています。こうした変化に敏感に対応するのが、安全・安心の危機管理対策ではないのか。「ただちに影響はない」と繰り返して国民の怒りを買っている政府の「愚民政治」的対応の二の轍を踏まぬよう、政策を改めることを重ねて要求します。

■消費税増税の影響について
 最後に、歳入で指摘した消費税の問題について申し上げます。
 東日本大震災・福島原発事故から一年、政治の責任が厳しく問われる中、民主党・野田政権は3月末に「消費税増税関連法案」を提出すべく準備をすすめています。『社会保障と税の一体改革』などと銘打ったものの、社会保障に関する見取り図は先送りし、増税だけが先行する最悪の形となりました。

 野田総理らを駆り立てているのは、所得収支の悪化に貿易赤字が加わった現在の国家財政が、国債の暴落や銀行の資産減少につながり、金融危機を招きかねないとする投機筋の利害にもとづく危機感にほかなりません。このような動機による増税は国民大多数の利益とは相反します。10%で国家財政の穴埋めができる筈もなく、消費税に依存した際限なき大増税に道をひらく事になります。すでに「付則」という形で将来の更なる税率アップに言及しています。これは地方自治体の税収や財政にも直結する問題です。

 消費税導入が国会で議論されていた1988年11月11日の荒川区議会福祉・区民委員会で、当時の吉野税務課長は、歳入で入る当時の消費譲与税と、歳出にかかる消費税負担とで、差し引き約10億6千万円のマイナスとの独自試算を示しています。これは3%で導入されると仮定した場合のシミュレーションでした。
その後、1997年に税率が3%から5%に引き上げられたことに伴い、そのうち1%が地方消費税となり、地方消費税交付金が創設されました。
しかし、地方自治体もまた消費者であり、土地や医療などの限定された品目を除き、すべての物品購入や契約、建設事業費などに5%の消費税がかかります。10%になれば2倍ということになります。

 来年度予算では、21億7600万円の地方消費税交付金が計上されており、今後については、まだ不明な部分もありますが、歳入と歳出について試算してみたところ、差し引きマイナスに傾いており、10%でも同様の予測がされます。
荒川区の再来年度予算が消費税10%を前提とする予算とならぬよう、反対運動に全力を上げたいと思いますが、「国と地方の長期債務はなぜ増大したのか?」「高額所得者・法人税減税の経過」「企業の内部留保の実態」などをつぶさに見れば、国家財政を悪化させても利益を得てきた人々が負担を負うべき事は明白です。
給料や年金の可処分所得が減り続ける中、老いも若きも荒川民民の生活は窮地に陥ります。とりわけ、税の価格転嫁がままならない中小・零細事業者が多い我が区では、地域経済への打撃ははかり知れず、税収の落ち込みが予測されます。

 1989年の消費税導入以来、たび重なる高額所得者減税と法人税減税によって、所得税・法人税は約295兆円も減少しました。こうした支援を受けて、企業の内部留保は約400兆円を超え、増え続けています。このような負担の不公平を放置したまま、安易に消費税増税を推進することは到底容認できません。政府はまず、こうした歪みの是正に着手すべきです。荒川区としても看過できる問題でないことを反対討論の最後に改めて問題提起し、注意を喚起して私の討論を終わります。