河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月26日 2014年11月26日

斉藤ゆうこ
 あらかわ元気クラブの斉藤ゆうこです。
 区長就任から約2カ月になる藤澤新区長に3点にわたって基本姿勢を伺います。明快なお答えをいただきたいと思います。

 12年ぶりの新区長の登場で、荒川区政がどのような方向に変わるのか、関心が高まっています。区民の期待にこたえて区政を変えることができるのか、大いに注目されるところだと思います。
 私たち元気クラブは、次の2点を藤澤区長に申し上げておきたいと思います。
 第1は、区民との直接対話などを通じて、これまで官僚や議員のフィルターを通してしか伝わりにくかったことを直接見聞していただき、区民の視線で大胆に施策を見直すことはよいことだという点です。
 議会における多数意思と区民の多数意見とが異なるということは、ままあることであります。こう決まっていたじゃないかとか、既定方針との整合性はどうなっているんだと。もちろんそれもありますが、さまざまな抵抗はあったにしても、それが区民の要求に沿った変更であるならば、区民は支持するであろう。大いにやっていただきたいと思います。
 第2は、自治体の首長として、これまでの「ある政党の地方議員」という立場とは違った、幅広い構えでやっていただくことを望みたいと思います。今後、特定政党の党籍や役職をどうするかは区長自身がお決めになる問題ですが、仮に党籍や役職にあったとしても、荒川区長としては、首長という立場で多様な考え方に理解を示し、バランスよく受け入れることは可能なはずであると思います。ぜひこういった面での能力を培ってほしいと思います。
 さて、質問に入りますが、まず第1番目に、行政と議会との緊張感ある関係づくりと、双方の政治倫理についてどのようにお考えか伺います。
 まず行政と議会との関係について。ここ数年、私は以前にも増して特別な状況が続いてきたことを肌身で感じています。私たちはいわゆる野党の少数会派ですが、こうした会派に対する行政の公平さという点で極めて不正常なものがあることを、ここで指摘したいと思います。もちろん、議会では多数が優先することを承知で、私たちはこの世界に身を置いております。2よりも6が多く、それよりも13が多い。委員会の案分も、質問時間も、議会だよりの紙面のスペースも議席数で配分されているわけで、この程度の算数の問題なら私たちも理解の範囲なのですが、理解を超える不可解なことも、半ば公然と行われてきたというのはどうしたものか。
 例えば質問の取り扱い。この答弁を元気クラブに出すわけにいかないから、与党会派に先に質問をさせよう--させようですよ。質問通告で趣旨を聴取した理事者が、質問順の早い与党会派に質問を提供する行為があります。さらに、元気クラブにはいい答弁をするなと。「するな」なのか、「しないでね」なのか、それはよく知りませんが、御丁寧に理事者を回って、ふれて歩く与党会派の幹部がいらっしゃるそうであります。
 何でわかったかといえば、そう言われていますからと、申しわけなさそうにおっしゃった方たちが何人もいらっしゃるからです。こういうのを行政と与党との信頼関係というのでしょうか。
 もっとひどいのは、元気クラブと話しているのを見られると疑われる。何を疑われるのでしょうか。枚挙にいとまがありませんが、こうした答弁への圧力、情報提供への圧力といったものが議会の一部にあり、そして、これに呼応してきた行政があることは事実であります。圧力をかける方にも問題がありますが、理事者は毅然としていただきたい。議会と行政とのこうした不正常な関係を正常化するために、行政の側からは今後一体どうなさるのかお伺いいたします。
 政治倫理の問題についてもお伺いします。
 私は、昨年9月の第3回定例会で、21世紀に、企業、議員、行政による癒着や腐敗のない荒川区を目指して、荒川区政治倫理条例を制定するつもりはないかと質問をいたしました。これは、さかのぼって、昨年3月の予算委員会で、警戒待機の職務時間中に、あろうことか、庁舎を抜け出して日暮里駅前のスナックで部下と飲食していた企画部長の行動について、事実関係の調査と厳重な対処とを求めたこととも関連して政治倫理を取り上げたものであります。
 質問の中で私は、ある契約をめぐる不可解な動きが3月の予算委員会で取り上げられた。この企業が、ある議員の紹介であることを口にしているという情報もある。また、契約をめぐって、ある幹部職員が○○万円のリベートを受け取ったという怪文書が流れた事実もある。庁内でのうわさにすべて根拠がないと片づけることはできないと申し上げました。
 しかし、この問題に対するこれまでの行政の感度は非常に鈍く、対応のあいまいさが目立ちました。一体これはどうしたことなのでしょうか。私はこうした問題の背景に、議会の一部と特定の幹部職員との密接な深い関係があるとも指摘いたしましたが、わかっていながら放置しておいてよいものなのか。この問題については、多くの職員や区民の知るところとなり、新たな情報も入ってまいりました。なぜこんなに綱紀が緩んでいるのでしょうか。
 昨年の質問では、お隣の北区の政治倫理条例を紹介いたしました。議員は自己の地位による影響力を不当に行使して自己の利益を図ってはならない。区が行う売買、委託及び請負の契約に関し、特定の個人及び企業その他の団体のために有利または不利な取り扱いをしないこと。政治活動に関し、企業その他の団体から、政治的、道義的批判を受けるおそれのある寄附等を受けないこと。特に区と現に売買、委託及び請負の契約関係にある企業からの寄附等は自粛することなどと定めてありますが、これは議員提案によってつくられた条例であります。政治倫理は、行政、議員、企業の相互関係の問題です。3点そろって初めて悪いことができるわけですから、私たち議員もみずから襟を正さなくてはなりません。
 我が議会の中にも、区の事業委託を受けている業者が公然と特定議員の後援会役員を務めているなどという例もあります。北区の条例に照らせば、さしずめイエローカードということになるでしょうか。李下に冠を正さず、瓜田に履を入れずということではないでしょうか。
 昨年の質問の後、国でも、あっせん利得処罰法が正式に成立いたしました。区民のためにならない、荒川区のためにならない腐敗や癒着は、この際、一掃する必要があると考えますが、新区長はどのようにお考えでしょうか。荒川区独自の条例をつくることなども含め、区民の不信感を取り除くことに取り組むべきだと思いますが、姿勢をお示しいただきたいと思います。

 第2番目の質問に入ります。
 藤澤区長は所信表明の中で、選挙公約でもあった「7つの安心社会」を改めて掲げられました。10年不況で生活や営業面での不安が増し、高齢社会での社会保障問題、子育てや環境問題での不安に加えて、災害や犯罪などの社会不安、戦後を振り返ってみますと、21世紀に入った日本は本当に大きな問題を抱えるようになったと感じます。地域社会が抱えるさまざまな不安に対し、7つの安心を対置して提案し、不安の解消を政策化したことは的を射たものであると思います。

 さて、私は、藤澤区長の「7つの安心社会」に加えて、きょうは8つ目の安心社会を提案し、御見解を伺いたいと思います。
 私が提案する8つ目の安心社会は「共生安心社会」です。荒川区には1万人を超える外国人が住んでいます。そのうちの圧倒的多数が韓国・朝鮮籍、中国、フィリピンなどのアジア系の区民です。とりわけ、私たちの荒川区は、歴史的に形成された産業構造などの地域特性から、韓国・朝鮮系の人々が長く区民として暮らしてきたまちという特徴がある地域です。このことは、一昨年、教育委員会が刊行した「荒川の民俗」の中にも描かれています。私たち日本人と、荒川区の特徴である多くのアジア系区民の皆さんとの共生という視点も、区政に欠かせないのではないかと思うのです。
 今、アジア系区民の中に不安の影を落としていることの一つに、日本の歴史認識の問題があります。
 そこで私は、歴史認識を踏まえた「共生安心社会」の実現に向けて、どのように努力されるのか、藤澤区長にお伺いしたいと思います。
 歴史認識といえば、かつて荒川区議会にはアジア調査・研究会という勉強会がありました。懐かしいですね。当時、5つの会派の有志13名が集まってこの会をつくり、1998年4月に、ユーゴ、エジプト、中国などの大使を歴任した中江要介氏を招いて勉強会をいたしました。この中で中江先生は歴史認識の問題に触れて、根本は東京裁判にあるというお話をされました。その中で、東京裁判は勝者が敗者を一方的に裁いたものであり、日本は悪者にされたんだということを前提にいろいろ言っている中から、自虐史観とかいって、それを批判するナショナリスチックな反論が、ある程度共感を呼ぶようになった。そして、東京裁判を一方的に押しつけられた反省というのなら、唯一の道は、日本人が日本人の手で東京裁判の再評価をすべきだというふうに述べられました。全くそのとおりであると私は思います。
 中江先生は、戦争の反省も、戦争の評価も、戦争認識も、日本の中でお互いに冷静に反省するということをしないで、「よかった」「悪かった」という論争ばかりしているとして、アジアの日本の再軍国主義化に対する不安は、まさしく、日本の中の戦争に対する反省の仕方にけじめがなかったからだとおっしゃって、1989年の冷戦終結時と、戦後50年を迎えた1995年に2度のチャンスがあったのに、それを生かして歴史認識を確立すべきだった、これを欠いておいてアジアに、あの戦争はよかったなどという考え方をさらけ出す。それが、そもそも日本がなかなかアジアで信頼されない理由ではないかと結論づけられました。
 引用を長くいたしましたが、きょうの状況を考えると、示唆に富んだお話だったと改めて振り返ることができます。
 私は先日、区内で「新しい歴史教科書をつくる会」の代表、西尾幹二氏のお話を聞く機会がありました。私はこの方の本を幾つか読み、かつて、お話も聞いたことがありますが、相変わらずの、何ともいえない独特の論理を再認識いたしました。それは極めてうっくつした欧米コンプレックス、劣等感に裏打ちされた、アジア蔑視の思想と言えるものではないか。浮世絵が欧州近代絵画のモチーフになっていると力説するあたりは、西尾という人物の、複雑で屈折した心情を物語る西欧コンプレックスの発露であると私は拝察いたしましたが、あながち間違いではないと思います。日本の優位性を主張したいがために、他国をおとしめる論法が一貫しており、これが日本人の心情にくすぐりを入れているようです。
 私は、我が国の文化や伝統のよさを描くのなら、こうした方法ではなく、東アジアという普遍的な流れの中での日本の特性、特徴に着目すべきだと考えます。対立させなければ自信がないのは、本当の自信がない証拠ではないでしょうか。
 西尾氏の講演の結論は、日本は正しい戦争をしたということでした。強かった国、すばらしい国という記憶が世界にある間は日本は守られている。なめられ始めたら急降下だと講演は終わったのでありますが、改めて、国民的歴史認識の不確立を感じさせられました。
 さて、共生という問題についてですが、昨年12月5日の日経新聞夕刊に「私の20世紀」という企画があり、後藤田正晴元副総理のインタビューが紹介されていました。後藤田氏はこの中で、21世紀のあるべき日本の姿として、平和、自立、共生を挙げておられました。共生について、来年、つまり、ことしですが、来年は日米安保条約締結から50周年を迎えるが、日本国内では、最近、米国支配への反発や中国の台頭への警戒心から、もう少し強い国になりたいという傾向が出てきた。これは危ないよと述べ、国際的にも、国内的にも、弱者に配慮する共生を絶えず考えることが必要だと述べておられました。ここで言う国内の共生とは、必ずしも外国人との共生のことを指していないと私は考えますが、それにしても、共生という言葉に深い意味を持たせた発言ではないでしょうか。
 この後藤田氏は、かつて歴史認識に触れ、確かに謝り外交というのは一日も早く清算しなくてはならない。そのためには、厳しい歴史認識の上に立って謝るべきは謝る。そのかわり、未来志向で堂々と国際社会で歩いていけばいい。厳しい事態に遭遇したとき、それを乗り越えるだけの強さを民族が持っていなければだめだ。その強さの根源がどこから来るかというと、過去を率直に見るだけの勇気のある態度が大事ではないか。過去の事実を正しく認識することで、初めて未来が開けると語っています。
 私は今、改めてこの言葉の重みをかみしめています。日本人の私たちが過去の事実を直視する勇気を歴史認識の基本とし、地域でも「共生安心社会」の実現に向けて取り組んでいく必要があると思いますが、いかがお考えでしょうか。
 さらに、最近、地域の共生不安を助長させる背景として歴史教科書問題があります。6月7日の朝日新聞で、日本の歴史教科書に35項目の修正要求をしている韓国の崔相龍駐日大使がインタビューに答えておられます。テーマは歴史認識と安全保障、教科書問題を考えるとなっています。
 大使は、教科書と歴史認識問題について、日本には広範な誤解がある。我々が言っているのは内政干渉ではなく、我々の植民地時代に起こったことを教科書に事実として書いてくださいという願いだと述べ、せっかく日韓関係が日本文化の開放など未来に向けて交流しようというそのとき、今回の問題が起きたこと、そして1998年の小渕・金大中共同宣言で明確な謝罪があり、その後、韓国は一度も過去を反省しろだとか、謝罪しろだとかと言ったことはないとして、日本の誇りは自己中心の押しつけではないと思う。他国の気持ちに配慮するということと両立するはずだと結んでおられます。自国の誇りは他国への配慮と両立する。深く受けとめるべき指摘ではないでしょうか。
 荒川区内には、このような思いを抱き、有言、無言で教科書問題を見詰めている多くのアジア籍の区民の目があることを忘れてはならないと思います。
 後藤田正晴氏と崔相龍大使の発言に見る2つの視点から、地域における共生安心社会について質問をいたしました。背景には、歴史認識の問題が避けて通れない問題としてあります。私が、きょう、中江要介氏と後藤田正晴氏の見解を引用したのには理由があります。自由主義史観研究会の藤岡信勝氏によれば、中江氏、後藤田氏、そして教科書検定委員だった野田英二郎氏、この方たちは売国奴なのだそうです。しかし、こうして保守系の政治家や外交官などの中にあるリベラリズムが攻撃され、力を失ったとき、日本という国はかじ取りを誤るのではないか、私は本当にそう思うからです。それは歴史が証明しているのではないでしょうか。議場のすべての自民党、保守党系の議員の皆さん、そして行政の皆さんに考えていただきたいと思います。
 我が国と民族にとっての真の誇りとは何なのか、そして、真の国益とは何なのか、姿勢を正して議論すべき時が来ている。ここにいる私たちもそのことを問われていると思います。アジアに信頼のある日本、安心して共生できる荒川区、国では外交が、そして地域では国際交流を通じた相互理解が肝心かなめではないでしょうか。
 ことし9月18日は満州事変70周年、そして来年は日中国交正常化30周年の節目の年に当たります。戦争に動員されていった我が国の労働者や農民たちの痛みと苦しみ、そして、国を奪われたアジアの人たちの痛みと苦しみを、いま一度深く胸に刻むときではないでしょうか。
 失われた10年の中で、日本人は自信を喪失しました。しかし、その解消のために、自国の誇りと称して他人の頭の上に足を乗せるようなことはしてはならない。それは民族の真のプライドではないと思います。

最後に、社会的必要さから3つの大切な問題に取り組んでいる民間団体について、これらの事業を、活用、支援することはできないかお伺いしたいと思います。
 第1に、薬物依存からの脱却、社会復帰を支援する民間組織、東京ダルクへの支援についてお伺いします。
 ダルクは、日本でただ1つの薬物依存者のための社会復帰施設として知られています。シンナー、覚せい剤、麻薬といった薬物の乱用は、中学生・高校生の中へと拡大し、深刻な社会問題になっています。薬物依存は家族や親戚までも巻き込む大きな問題です。しかし、日本には、病院や刑務所を退院、退所した後のケアを行う公的施設がありません。したがって、全国20カ所にあるダルクが一手に薬物依存からの回復のための重要な役割を担っているのです。
 ダルクの発祥の地は、ほかでもない、この荒川区です。1985年6月に東日暮里4丁目でダルクホームとして出発し、その翌年の1986年、現在の東日暮里3丁目に移転、ダルクデイケアセンターとなり、今日に至っています。当初、この施設は地域の理解が行き届かなかったこともあり、大変苦労をさせられていました。しかし、最近では、地元からも、大事なことをしているねと、高い評価を受けるようになりました。その間、大変な努力があったと思います。
 ことしに入ってダルクの主催者である近藤恒夫さん、この方は荒川区東尾久にお住まいなんですが、この方が吉川英二賞を受賞されました。また全国的に事業の重要さに対する注目が高まっているといったところです。しかし、にもかかわらず、このダルクに対する公的な財政支援は、現在に至っても全くなされておりません。荒川区議会でも各会派の議員が、荒川区における薬物依存症対策を何度も何度も質問し、また、元気クラブの今村まゆみも、かつてダルクの支援と活用を質問しましたが、一向にらちがあきませんでした。この間のやりとりで、行政は、ダルクの利用者は荒川区民だけではないから、荒川区が支援のために財政を支出するのは公平さを欠くと主張してこられました。それなら23区共同で、また、東京都に働きかけて、何らかの財源措置を取るようにしたらどうなのか。なぜそういう考え方がなかったのでしょうか。
 ダルクからのお便りには、いつも財政の逼迫が訴えられ、運営の苦しさが語られています。全国に先駆けて東京ダルクが開設された地元区として、薬物依存からの社会復帰施設の意義を積極的に評価し、他団体にも働きかけて財政支援を実現する姿勢をはっきりさせてほしいと思います。御答弁をお願いいたします。
 また、墨田区の中学校などからは、学校教育の中で、依存から抜け出そうと闘ってきた人たちを招いて体験談を聞く予防学習ということに取り組んでいます。地元区として、もっと積極的な活用を考えてほしいと思いますが、いかがでしょうか、お伺いします。
 第2に、DV、いわゆる夫婦間暴力による被害に取り組む民間組織への支援についてお伺いいたします。
 この問題は、先般、公明党の金久保議員が本会議質問で取り上げられ、社会問題として行政の対応の必要性を主張されました。その後、私も予算委員会で質問をいたしました。最近になって、荒川区で男女平等推進センターに登録する女性団体が本格的に相談活動を開始され、また、町屋駅の近くに、被害者の女性たちの自立支援、雇用創出と交流の場づくりを兼ねた自然食レストラン「Saya-Saya」をオープンしました。サヤサヤというのは、インドネシア語で私。私と私の自立的な関係ということを目指しているのだそうです。
 ここは、夫の暴力から逃げ出し、自立を模索する女性たちが、生活保護の受給で本人の力を削ぐのではなく、自分で働いて、社会とのかかわり合いの中で、できるだけ生活できるようにしていこうという、自信を取り戻していくための大切な場という位置づけになっています。
 しかし、問題はやはり財政です。3人の常勤者と、ローテーションで働く20人のアルバイトの人たちの人件費を支払うと、月に50万円の赤字だそうです。スタートから苦しい運営を強いられたということになりました。厚生労働省の中小企業雇用創出人材確保助成金という長い名前の助成金を申請していますが、もしこれが対応されることになったとしても、半年後から、給与の3分の1補助を1年限り行うという限定されたものです。今週、金曜日の夜7時半から、NHKの「首都圏ネットワーク」という番組でしょうか、25分の枠が組まれて放送がされる予定と聞いています。取材は殺到しているのですが、台所は火の車というのが実情です。
 また、区はこのグループに対して、女性センターが組む講座の講師をお願いすることを検討されているようですが、練馬区では既に23区で初めてDV特別相談を無料で行っています。地元にこの「Saya-Saya」のようなしっかりしたキャリアのあるグループがいて、活動しているわけですから、荒川区でもこのような対応ができないものでしょうか。そろそろ本格的な支援を決めていただきたいと思っております。回答をお願いいたします。
 最後に、未認可保育室の支援、活用についてお伺いいたします。
 荒川区には、25年前にスタートしたじゃがいも共同保育所を初め、カナリヤ保育園、かがや保育園という、それぞれ個性と伝統のある保育室があり、最近、西日暮里にのびのび保育室が加わって、四園の未認可保育室があります。25年といえば、四半世紀ということになります。公私立の保育園に入れない子供たち、低年齢の子供たちを中心にして、地域の親たちの悩みにこたえ、相談に乗り、アトピーの問題を抱えている子供たちの除去食をつくり、子育てを一生懸命支えてきたプロフェッショナルたちです。
 最近、民活の流れの中で、三鷹市や横浜市などが、空き施設で行う保育を、これらの保育園などに委託したということが報道されています。国の待機児ゼロ作戦がこの背景ですが、荒川区でも、力量があり、やる気もあり、子育てについて取り組んできた、きめ細かい実践をしてきた、こうした未認可保育室の活用ができないものでしょうか。
 御多聞に漏れず、未認可保育室も財政難です。きのうは旧真土小学校をお借りして、じゃがいも共同保育所があの炎天下でバザーをしておりました。1年1回これをやらないと運営ができないのです。私立認可や新たな民間事業者活用ばかりを考えずに、地元の保育室の力に目を向けていただきたい。お答えをお願いしたいと思います。
 いずれにしろ、この3つの組織、団体については、どのような支援をしていただき、区と連携していただくのか、藤澤区長はぜひとも担当者とともに各団体に会って直接話を聞いていただきたい。私の質問は、その問題提起にすぎません。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上で3つの質問を終わりにいたします。

区長(藤澤志光)
 斉藤議員の質問にお答えをいたします。
 行政と議会との関係はもっと緊張感があるべきではないかとの御質問に、まずお答えをいたします。
 改めて申し上げるまでもなく、執行機関たる行政と議決機関たる議会はそれぞれに果たすべき役割を持っております。区民から貴重な税をお預かりし、区民福祉向上のために予算等を執行する行政と、それを区民の代表としての立場でチェックする議会とは相互に牽制し合う関係にあり、自治法等においても、それぞれにそのための権限が与えられているところでございます。そうした仕組みの中で、区民福祉の向上と区政の発展のためという共通の思いのもと、行政と議会が緊張感を持って、その責務を果たさなければならないという点につきましては、同様の認識かと存じます。
 なお、御質問にありましたような内容につきましては、事実関係を含め承知していないところでございます。
 次に、行政も議会も政治倫理の確立に努めるべきであるとの御質問にお答えをいたします。
 いわゆるあっせん利得罪法が成立し、本年3月より施行されたところでございます。この法律は、地方自治体の議員や首長も含め、行政機関の締結する契約、あるいは特定の者に対する行政処分に関して、請託を受けて公務員にあっせんし、その報酬として財産上の利益を受けたときは3年以下の懲役とする旨の規定を主たる内容とするものであります。このように重い罰則を伴う法の整備がなされたわけでございますので、議員等につきましては、法の適用関係を前提として、個人が自立的に行動をされているものと考えております。そうした状況の中で、さらに倫理条例を定める必要があるかについては、議会において議論されるべき問題であるかと存じます。
 また、職員につきましては、現在、国家公務員倫理法の制定を踏まえ、一層の倫理確立に向けた規定の整備等を研究しているところでございます。
 なお、これまでも地方公務員法等、関係法令に基づき、職員の服務の維持に努めてきたものと考えております。
 ほかの質問につきましては、関係部長等に答弁をいたさせます。

地域振興部長(吉野政広)
 歴史認識を踏まえた共生安心社会の実現に向けて、地域でどのように取り組むかとの御質問にお答えをいたします。
 国の歴史認識につきましては、なおさまざまな意見が出されているところであり、先日も日韓両国政府が支援する日韓歴史家会議が設置されることになったと新聞で報道をされております。国内においても、さらに議論がされていくものと考えてございます。
 現在、区には多くの外国人の方々が定住しており、日本人と外国人が地域社会で共生していく上で大切なことは、異なる文化があることを前提に、ともに尊重し、認め合いながら、相互の信頼を強めていくことであると認識してございます。これまでも区では、川の手まつりでの朝鮮民族舞踊の参加や中学生同士のスポーツ交流を初めとして、相互の理解のもと、さまざまな事業を活発に展開してございます。今後とも安心して住める地域社会を実現していくために、外国人の方々と文化、産業、経済など、さらに多面的で幅広い交流を行うことが重要であると考えてございます。
 次に、自国の誇りと他国への配慮との両立に関連して、アジア籍の区民との共生についての御質問にお答えをいたします。

 御質問にありますように、駐日韓国大使の御発言、多方面にわたっておりまして、両国の歴史観の違いなどについても指摘、言及をしているところでございます。国家としての歴史認識にかかわる問題でございますので、国政レベルで議論をされ、判断をされるべきものであるというふうに考えてございます。
 しかしながら、そうした議論を前提として、私たち一人一人も考えていかなければならない問題であろうかと思っています。過去におきまして、日本で開催されたオリンピック大会の表彰式で、優勝した日本人選手が帽子をかぶったまま表彰を受けたため、ひんしゅくを買ったという事例もございます。表彰式では自国の国旗とともに、他国の国旗も掲揚されていることを考えますと、自国の誇りも他国への敬意も欠如していたものと受けとめられたものでございます。自国の誇り、他国への配慮を語るとき、国民一人一人がこうした基礎的な事柄から身を律していく必要があろうかというふうに思ってございます。
 一方、国内におけるアジア籍の方々を中心とした区民との共生についてでございますが、人と人のつき合いという身近な個人レベルの交流が基本となるものでありまして、国政レベルの議論とは別に進められるものでございます。本年1月に発生をいたしました新大久保駅における韓国青年の身を犠牲にしてまでの日本人救出の人道的行動は、韓国の方々には誇るべき事件として永遠に記憶されるものと確信すると同時に、李青年が荒川区民であったことを私どもは大変誇りに思うとともに、敬意を表しているところでございます。
 また、荒川区には多数の外国人が居住しておりまして、その多くはアジアの方々でございます。身近な例でありますが、おしんこやキムチは、区内においては、日本と韓国の国境を越えてそれぞれの家庭で一般化しておりますが、ともに世界に誇れる伝統的な食文化でございます。このようなことを考えるとき、荒川区においては、区民と外国人との間では良好なコミュニティが形成をされているものと判断されます。
 区といたしましては、国籍や人種の違いを超えて、人々が相互に尊敬の念を持って、安心して暮らしていける地域社会の形成に努力をしてまいりたいと考えておりますので、よろしく御理解をお願いいたします 。

地域振興部長(吉野政広)
 次に、民間で努力しているさまざまな事業の活用と支援についての質問でございます。そのうちの、夫婦間暴力の問題に取り組む民間組織への支援の御質問にお答えをさせていただきます。
 夫婦間暴力の問題は、これまで個人の問題、家庭の中の問題として認識をされてまいりました。しかし、夫婦間暴力は女性に恐怖や不安を与え、女性の生活を脅かし、女性の尊厳を傷つけるばかりでなく、その子供たちにも大きな影響を与えるなど、重大な社会問題でございます。
 区といたしましても、これまでも女性問題に関する相談体制の充実を初め、人権への理解を深めるための施策を推進をしてまいりました。専門的知識なども持った民間団体と連携することも視野に入れつつ、今後とも女性に対する暴力の根絶に向け、鋭意取り組んでまいりたいと考えておりますので、御理解のほどをお願いいたします。

保健福祉部長(高野政義)
 薬物依存からの脱却に取り組む民間組織への支援に関する御質問にお答えいたします。
 シンナー、覚せい剤、麻薬などの薬物乱用が広がり、それが低年齢化し、薬物依存症者が増加していることは極めて憂慮すべき問題であると認識しております。
 区では、平成11年度に薬物相談関係機関連絡協議会を設置し、薬物乱用の予防、薬物依存症者の治療、リハビリテーションに向けて民間や他の行政機関と連携して取り組んでいるところでございます。東京ダルクにも連絡協議会の一員として加わっていただいており、この組織が、薬物依存症者の社会復帰に向けて行っている入所施設の運営事業、デイケア事業、相談事業などは、まことに有意義な活動であると考えております。東京ダルクは区内において15年間もの間、活動されており、また、全国的に展開している日本ダルク本部の東京地方における活動拠点でもございます。このように、東京ダルクは広域で活動し、他区の利用者が多数いるため、東京都や23区全体で助成すべき団体であるというのが区の基本的な考えでございます。
 先日の障害者団体と区長との対話集会におきましても、東京ダルク代表から話を伺っており、区長から23区の問題として問題提起をしていきたいという旨のお話をしたところでございます。
 一方、東京都においても、現在、東京ダルクの事業に対する運営費の補助を検討していると伺っております。したがいまして、区といたしましては、東京都の動きにも注目し、必要に応じて都等にも働きかけも行っていきたいと考えております。
 次に、無認可保育室の活用についての御質問にお答えいたします。
 保育室は、区が認定した認可外保育施設であり、小規模という利点を生かして、産休明けから2歳児までの低年齢児を対象に、施設ごとに特色あるきめ細かな保育を実施しております。現在、区内の施設は四施設であり、認可保育園を補完する役割をも担っております。
 現在、保育室に対してゼロ歳児については、1人当たり月額約9万円、0歳から2歳児については約5万円の児童補助、さらに、施設管理費等の財政支援をしておりますが、その経営は必ずしも安定したものではないと認識しております。
 区といたしましては、今後におきましても、ゼロ歳から2歳児の保育における保育室の果たす役割は重要であり、その支援については、東京都の認証保育所制度の活用ができないかも含め検討してまいる所存でございます。よろしくお願いいたします。

斉藤ゆうこ
 3分ほど時間がありますので、時間があれば答弁をお願いしたいと思います。
 まず、順不同ですが、3番目の3つの民間組織と団体に対する支援の問題です。
 幾らか検討も進められているところもあると思いますが、やはり切実に具体的な支援が必要です。そして財政支援は急がれていると思います。先ほどもお願いいたしましたが、社会的な必要さからどんどん拡大する問題を受けとめて、地域でこれらの団体は活動している。そもそも、行政が何かしなければならないことを、それが全くないために、民間組織が自力で自前でやってきた、そんなふうに受けとめています。
 区長と担当部局の皆さんが、それぞれの団体とゆっくり会っていただいて、どんなことをしたらいいのか、それぞれの役割分担はどうなのか、そして、財政支援についてはどんなふうなことができるのか、できないのか、じっくり話し合って進めていただきたいものだと思います。よろしくお願いいたします。
 さて、2番目の歴史認識問題について一言申し上げたいと思います。
 吉野部長、いろいろ例を出されて答弁をされましたが、ちょっと私がお聞きしていることとは違うのかなと思います。そこで、韓国の崔相龍大使が例示として出されている、小渕首相と金大中大統領との共同宣言をちょっと読ませていただきたいんです。
 両首脳は、日韓両国が21世紀の確固たる善隣友好協力関係を構築していくためには、両国が過去を直視し、相互理解と信頼に基づいた関係を発展させていくことが重要であることにつき意見の一致を見た。小渕総理大臣は今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期、韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えた、そういう歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し痛切な反省と心からのおわびを述べた。このように書かれております。
 これが1998年の認識というわけです。国がこういう認識を示しているわけですから、私も事実を直視し、そのことに基づいた、そして他国への配慮と両立するという問題を述べました。今後ともぜひ考えていただきたい問題だと思います。
 この点を要望いたしまして、歴史認識について、さらに議論を重ねていきたいと思います。区も、国の見解ということだけでなく、地域でも考えていただきたい。お願いして質問を終わりにいたします。