河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月27日 2014年11月27日

 私は、あらかわ元気クラブとして、来年度の一般会計予算に反対の討論をいたします。
 712億に上る予算総額の来年度予算が、区民生活の必要さ、緊急さにこたえ、また、荒川区の未来にとって本当に創造的なものになり得ているのかどうか、こうした観点から検討したとき、残念ながらこれらどの点をとってみても全く不十分としか言いようのない予算編成の姿勢に、私は強い失望を抱かざるを得ません。
 まず第1は、何と言っても大きすぎる基金積立の額です。総額30億4800万円、諸支出金総体で構成比の4.3%を占める基金積立、果たしてこれが健全な予算と言えるでしょうか。基金は長期的な展望に立った区政を考えるとき、必ずしも否定的にばかりとらえられるものではありません。むしろ、区の独自性や計画的な区政を考えれば、一般的には必要不可欠のものであります。
 しかし、ここ数年間の土地高騰による固定資産税収入の増大がもたらした異常な都財政の膨張、それに伴う23区財政の膨張、これをチャンスだとばかりにどの区も軒並み基金を積んできました。荒川区もその例外ではありません。総額300億となる基金総額が果たして適正と言えるのでしょうか。何といってもその限度を超え、健全さを失っているというのが率直な感想です。
 私はこの数回の予算・決算の討論の中で、繰り返し基金の問題に触れてきましたが、都民・区民の懐を痛め、犠牲を伴って捻出された固定資産税収入であることを考えたとき、その裏を返せば、そこには都民や区民が住むことをめぐって起こっているいろいろな矛盾、つまり土地・住宅にかかわる問題で、緊急な対策が求められているということにほかならないのです。
 極端な基金積立に走るより、圧迫されている区民の生活基盤を充実させるために、十分に財政を使うべきではないでしょうか。荒川区の現状を見るとき、基金を積む以前に改善を要する緊急課題が、むしろ山積しているのではありませんか。
 必要さや深刻さから見たら大いに立ちおくれている産業振興、小・零細自営業者に対する積極的な支援策はどうなっているのでしょうか。
 進む高齢化が口々に言われますが、対策はきめ細かく十分行われていると言えるのでしょうか。
 基金を積む以前に、これら急いで行うべき各種の事業を差しおいて「将来に備える」とばかり説明される、限度を超えた基金の増大には反対であることを述べておきます。
 第2の反対理由は、今回の予算の積極性のなさです。メニューばかり多くて哲学がありません。起こってしまったことへの後追い的な手当てばかりで、根本的な問題を解決するための構想というものが感じられません。こういう独創性、積極性のなさ、本当に何とかならないのでしょうか。
 例えば産業経済費です。2%台から3%台にやっと乗ってきた構成比ですけれど、その内実は融資の増額。融資が悪いとはいいませんが、融資だけしか事業がないとするのなら、それは政策がないということとイコールです。産業経済費の施設整備改善融資、従業員住宅資金融資などは融資ではなく、作業環境整備に対する助成制度や独自の住宅建設など、もっと直接的な施策に思い切って取り組むべきではないでしょうか。
 何ができるかということに安易であってはなりません。大型店対策などについても、調査研究を始めるところだとおっしゃりたいのでしょうが、おくれて始める調査、研究は、他の教訓から学び、思い切りすぐれて本質をつくものでなければ間に合わないのだということをつけ加えておきます。
 第3に、職員を減らし続けるにも、もう限度があるという点です。
 他区を横目でにらみながら、各種の施策のメニューをそろえることに必死のようですが、「人」の要素がついてきません。定数削減も、もう限度です。仕事を充実させようとすれば人が伴うのは当然のこと。いい加減に定数削減へのこだわりを捨て、とりわけ高齢者福祉や教育、そして専門家を必要とする他の分野でも、人の充実を優先して考えるという思想に方向転換することが必要です。
 委員会で質疑をした各項についても、最後に意見を述べておきたいと思います。
 まず情報公開についてです。
 請求件数32件、公開が19件、部分公開と非公開合わせて11件。こんなことでいいのでしょうか。いつまで続けていくのでしょうか。
 条例を制定したときに「情報非公開条例」にならなければいいのですがといった懸念は、まさにそのとおりになってしまいました。あれも出さない、これも出さないでは「開かれた区政」などという言葉はもう使わない方がいい。むしろ、こんな制度があることの方が犯罪的ですらあります。真剣な反省を求めます。
 多くの委員から意見の出されたひろば館も、区民に最も身近なところで一番評判の悪いものの一つではないでしょうか。
 安上がり行政の最たるものです。どの区を見ても、他区のコミュニティセンターはこんなお粗末なものではありませんよ。管理人をおかないで利用者にさんざん不便をかけ、どなたでも利用できるとか、楽しみ方いろいろなどというのは、とんでもないことです。あんなパンフレットをよくつくったものだと本当に感心してしまいます。管理人の全館への再配置、責任体制の明確化とともに、設備や環境の整備を急いで行うことを求めます。
 高齢者福祉こそメニュー先行の最たるものという感じが否めません。
 高齢者住宅の借り上げや、高齢者集合住宅の建設、特別養護老人ホームや通所センターの建設は、本当に急がれる事業です。既に、どの街づくりにも高齢者福祉の視点は欠かせません。地域をついの住みかとする街づくり、荒川区にはふさわしいし、実現できる条件もあると思うんです。そんな中で「入居できる人とできない人との不公平が生じる」というような発言には、私は根本的な不信感を禁じ得ません。一体何を考えているのでしょうか。
 土地取得の難しい23区の条件のもとでは、現在のような特養に対する国の補助基準を変更させることも含めて、働きかけを強めるべきだということは、もう既に前回の決算委員会で申し上げましたが、事業を進めようとするとき起こってくる障害は、積極的に取り除こうという進取の精神が求められているのではないでしょうか。
 メニューはそろえたけれど実際には進まないということのないよう、条件をつくり出し、また、条件のあるところからこうした住宅建設、施設建設を積極的に進めてほしいと要望しておきます。また、委員会で提案した給食サービスの方法については、実行可能なことですからぜひ具体化していただきたいと思います。
 さて、リサイクル事業については、やはり、とりあえず急いで、流行だから何とかしなくてはという発想が見られて、大変残念です。独自の調査や、住民団体との突っ込んだ話し合いはされていません。区として何を分担して独自事業とし、何を住民にやってもらい、それを支援するのかという区分も、どうやら明確ではないようです。ちょっといいかげんじゃないですか。リサイクル推進は、区民参加の行政を行うすぐれた実験場でもあります。行き当たりばったりで、リサイクルブームに乗ろうという発想では、まじめにリサイクルに取り組んでいる区民団体からがっかりされるのではないでしょうか。10年間の予算計画を立て、住民と徹底的な討論をして事業を進めている目黒に、もっと学んでほしいと思います。
 最後に教育費です。
 私は地道ではありますが、教育委員会がその姿勢に一定の前進を見せつつ取り組んできた、在日外国人の子供たちの本名就学の事業を真剣に評価し、これからも推進してほしいと願う一人です。国際化が行政のお題目にならず、本当に試されるのはこうした取り組みです。この地域に暮らす民族の違い、風俗、習慣の違う人々と私たちが違いを認め合い、本当に理解し合うことなくしてどうして世界の平和などが語れるでしょうか。私も、教育委員会とともに、今後とも外国人の子供たちが本名で通える地域の学校づくりに努力したいと考えています。
 また、旧真土小学校内に7月からオープンを予定している、不登校の子供たちの生活相談室のあり方については、具体的な提案をいたしましたので、今後もよりよい体制づくりを求めてかかわっていきたいと思います。
 4年間の任期を終えるこの議会で、私は予算に反対討論をしなければならないことを、本当に残念に思います。
 「大企業に依存しない街づくり」「開発優先をやめて、もっともっと肝心の区民生活充実に取り組もう」と私は区政の姿勢の転換を求めてきましたが、相変わらず基調の変化は認められないばかりか、「慎重で計画的」という区長の言葉の裏に、危険な消極性を感じるのは私一人でしょうか。もっともっと困難な条件を打開し、問題の本質に迫る区政がほしい、これでやれると確信の持てる街づくりの方向性がほしいと思います。
 まちの中にはそんなエネルギーがあるはずです。住民と議会、行政が、時には意見を闘わせ、時には都や国に対して結束して主張しながら、このまちのことはこのまちで決めるという、そんな主体性のある区政を求めて私の反対討論を終わります。