斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、荒川区元気クラブとして、来年度の一般会計予算に反対の討論をいたします。
 藤澤区長は来年度の予算編成に当たって、施政方針説明の中にその理念と考え方を盛り込まれました。私たち元気クラブはこの施政方針の中から、区長の時代認識、区政の喫緊の課題が何か、来年度予算での主要施策の考え方などをおおむね読み取ることができたと思っております。めりはりもあり、重点も明確な、その意味で藤澤区政の個性が強くあらわれた施政方針であり、予算であるとお見受けいたしました。さて、この個性をどう評価するのか。この間の議会における議論はまさにさまざまでありました。私はこの反対討論において、まず総論について私たち元気クラブの評価を申し上げ、次に、争点となった予算をめぐる幾つかの問題について述べたいと思います。
 藤澤区長は現下の情勢について、90年代の経済のグローバル化をてこに成長を遂げてきたが、ネットバブルの崩壊とその後の同時テロで停滞色を強めてきたアメリカの景気はさらに減速した。世界同時不況の様相が強まる中、日本経済にも深刻な影響を与えているとして、中国への生産拠点の移転に伴う国内製造業のさらなる空洞化、国際的賃金格差による価格競争の懸念を挙げ、現在の日本が直面しているのは、単なる循環的な不況ではなく、長期的かつ構造的な変革への圧力だという認識を示されています。そして、そこから構造的な日本経済の現状を打開するためには、国際分業のシステムをスムーズに行えるようにし、区内製造業についても、国際的な価格競争を勝ち抜けるように転換を進めるという考えを打ち出されました。
 藤澤区長が表明されたこのような情勢認識やある種の危機感、また構造的な日本経済の現状打開が切迫した課題であるとする点は、私たちとほぼ共通の認識であるかと思います。まだ議論の余地は多いと思いますが、こうした情勢認識に基づいての区内産業についての踏み込んだ姿勢は、これまでの区政にはなかったものと評価しております。藤澤区長は地域産業の振興が荒川区の活性化に不可欠であると表明されていますが、私たちがかつて発表した「元気クラブの荒川区基本構想」が、産業を中心として荒川区活性化と財政再建の道筋を解いた考え方とも共通のものを感じます。
 しかし、このような共通認識の反面、危機的な状況を打開する方策は何かとなると意見は明確に異なっております。この違いは決してあいまいにすることのできない問題であります。それは、残念ながら現在の危機的な経済のもとでの地域経済と区民生活とが国の政策に大きく左右されざるを得ないからです。藤澤区長は、国においても小泉総理が強力に推進してきた構造改革が本番だ、各分野における構造改革が着実に実行されることによって旧来型システムが変革され、日本社会と経済は混迷と閉塞感から抜け出すことができると所信を表明されています。
 私たち元気クラブは、この小泉構造改革に一貫して反対を唱えてまいりました。それは1985年のプラザ合意以来の、いわゆる国際協調路線によって、我が国のほんの一握りの多国籍企業の国際競争力強化のために税制や行政の仕組みを変え、アメリカの市場開放圧力を受け入れ、各種の規制撤廃を進めて国民が共生するために必要な国内のルールまで乱暴に取り払おうとしてきたやり方の最も強力な推進者だからであります。そして90年代以降には、グローバル化のもとで日本の富がアメリカに還流するシステムを維持させられ、我が国はさながら経済金融植民地の様相を呈してまいりました。
 グローバル資本主義のもとでは、株も通貨も債券も商品として売り買いされ、現在では1日200兆円が取引される巨大な市場を形成しております。2日分で日本のGDPに相当するという額ですが、その95パーセントは投機的取引だそうです。まさに世界は賭博場と化しているわけです。心は美しいけれど、余分なお金には余り縁のない荒川区民にとっては想像もつかない世界。実態経済の粋を行く我が物づくり中小企業の荒川区とは対極のカジノ経済が展開しているわけでございます。日本の通貨も株もこうした投機の対象となって売り買いされ、波のまにまに漂っております。小泉総理は、規制をなくしてすべて市場経済の原理に任せようというアメリカに対し、ニヤニヤして恭順している場合ではございません。自国の国民経済にとって不利益なことでも黙って市場に任せる、政治は介入しないというのなら政府は要りません。小泉構造改革は国民経済を破壊し、荒川区民を幸せにしないというのが私たちの結論です。小泉構造改革路線を支持し、そこに展望を見出そうとされる藤澤区長とはこの点で今後も大いに争ってみたいと思います。
 さて、藤澤区長は、小泉構造改革によって日本は混迷と閉塞から抜け出せると確信していると述べられました。私たちは、戦後の不健全な日米関係を対等なものに転換し、経済や産業の面でも、外交や安全保障の面でもアジアと共生する道以外に混迷と閉塞から抜け出せる道はないと確信しております。日本の貿易額は、中国を含むアジアがアメリカを抜いて第1位。日本の将来にわたる発展と大多数の国民の豊かなくらしはアジアとの関係にかかっており、このことは今や区内産業、地域経済に直結した問題であります。昨秋の同時テロ以降、世界を席巻してきたグローバリズムには陰りが見え始めた。日本はアメリカ流のシステムを考え直すときだとする論調が目立つようになりました。元大蔵省財務官の榊原英資氏、三井物産戦略研究所長の寺島実郎氏などがその代表ですが、いずれも日本の将来のパートナーとしてアジアとの関係を重視し、主張しているのが特徴であると思います。
 「21世紀型危機」という言葉に象徴されるごとく、現在の日本が直面しているのは単なる循環的な不況ではありません。長期的、構造的な危機だからこそ、そこから抜け出す活路を求めてこのように意見が百出し、国においても地方自治体においても試行錯誤が行われているのだと思います。だれもが失業と隣り合わせの大失業時代、職を失い家族を失い、自殺を考える労働者や事業者の現状をどうするのか、政治が問われています。日の丸・君が代に託して、愛国の情を示さない私たちの祖国の将来を思う気持ちから、真剣に我が国の進路を論じ、構造改革によってではなく、国民経済を守る政府と、それを支持する地方自治体をつくっていきたいと考えます。藤澤区長は「国や都に追随するような区政から、荒川区が区民の目線に立った新しい施策を大胆に打ち出し、国や都を引っ張っていけるような区政に変えてまいりたい」と述べておられます。ぜひそのようにしていただきたい。区内産業を発展させ、大多数の区民が豊かに暮らせる荒川区をつくるため、大いに小泉首相、石原都知事に物申し、国や都の政策を変えていただきたと要望いたします。
 さて、予算委員会で争点となった幾つかの問題について、これまでの質疑を踏まえまして簡単に討論をいたします。
 まず第1に、清掃事業における政策転換についてですが、私たちはこれを基本的に支持いたします。集積所に出されたごみはだれのものかをめぐって町会や地域を騒がせた、いわゆる持ち去り問題を解決し、官民の分担と財政負担の問題を是正する上でこの方法は効果があると考えます。
 また、重点は移すものの、資源ごみの集積所回収をやめてしまわないことで、単身者や不規則労働をする人たちの資源ごみは従来どおり回収できます。私たちは、同時に、大量生産・大量消費・大量リサイクルの連鎖を絶ち、地方自治体と住民の負担を根本から解消するためにデポジット制の導入を地域で踏み切るこうした方向を持つこと。また、缶、瓶、ペットボトルの製造を野放しにせず、国に対し企業への規制を行うよう求めることを強く要望いたします。
 第2に、がん予防センターの見直しと検診費用の一律1割負担についてですが、この問題については既に附帯決議が付され、年度後半には予算を修正する意向も示されましたので、その対応を含め評価をいたします。いずれにしろ次年度には、実施計画においてもがんセンターの抜本見直しが予定されております。私たちは行財政改革の面からも、新たな健康づくり施策の拠点をつくる上からも、がん予防センターの廃止と転用を求めておりますので、その旨要望いたします。
 第3に、小・中学校へのクーラー設置についてです。クーラー設置に反対する議論の中には、石原都知事の「心の東京革命」を持ち出して、子供には我慢が必要だと主張する向きもあるようですが、心頭を滅却すれば火もまた涼しとの精神論でしょうか。ちょっと暑いと、クーラーをつけろ、クーラー、クーラーと騒ぐ大人が、子供には我慢を強制するとは何と非教育的な態度でございましょうか。子供に大切なことを教えるのは、もっとほかの方法があると申し上げておきます。なお、クーラーの使用については各学校で十分留意するよう指導されることを求めます。
 第4に、組織改正についてです。組織のあり方は区の戦略とも深くかかわっておりますし、区民の要望や相談への対応を受けとめて政策決定へと生かしていくという点にも大きくかかわってまいります。今回の組織改正の3つの考え方を支持し、その上で区長室については、職員の能力や資質を育てること。また、必要であれば職員の数をふやしても当初の目的が生きる対応をしていただくよう要望いたします。
 第5に、組織改正、産業振興対策室設置にもかかわっておりますが、本格的な産業支援の政策確立についてであります。私は総括質疑で、経済のグローバル化の中で国際競争にさらされることを余儀なくされている区内中小企業、商工業をどのように支援するのかを取り上げ質問いたしました。これは、施政方針で示された藤澤区長の認識を具体論として進めていく上での質問です。
 一口に高付加価値製品、サービスへの転換、また中国・アジアとの分業といいましても、産業によってその対処はさまざまに異なっており、深い研究や国の政策との絡みも出てまいります。私たち元気クラブは区内の労働組合や団体の協力も得まして、印刷産業や皮革産業についての空洞化の実態を把握してまいりましたが、今後さらに調査研究を深め、産業担当の職員の方たちとも一緒に勉強しながら、物になる対策、政策をつくりたいと考えております。また、産業経済の分野における中国・アジアとの共生をテーマに、有識者を招いた研究会なども開催したいと考えております。ともに努力をいたしましょう。
 さて、6番目に深刻な雇用対策、失業問題への対応について申し上げます。藤澤区長は本会議の答弁で、本来、国や都の所管とされている雇用施策にも、区としてできる限りのことをしていかねばならないと考えているところでございますと述べられ、雇用のミスマッチについてなどの認識を示されました。私たちは現在、東京都に対して失業者の深刻な実態に見合った対策を求める請願と署名活動を展開し、各地域の職安を尋ねまして、職を求める人たちと話し合いをし、またハローワークの所長や担当者から実情をお伺いしているところです。こうした実情を伺う中で、小泉改革によって失業が加速されていることは間違いないと確信いたしました。
 請願の内容は3項目ですが、1つには、職を求める失業者支援のための雇用対策基金を創設すること。2つ目に、国による雇用創出の枠にとどまらず、直接雇用を含む雇用創出事業を行うこと。そして、新たな産業や地域企業が必要とする水準にこたえられる技術を身につけるための本格的な職業能力開発訓練制度をつくって再就職を支援してほしいということを求めております。また、国に対しては、失業等給付金の支給期間の延長など拡充を求めてほしいと要望しております。東京都のみならず、市や区でも直接に独自の予算を組み、対策をとっていただきたいのです。また、産業振興対策室の中に、雇用、労働問題の窓口を設置し、他機関との調整も行っていただくことを要望いたします。この問題につきましては後日、藤澤区長に直接要請を行いたいと考えております。
 最後に、区民と行政と議会の関係について申し上げます。
 藤澤区長は区民との対話を重ね、新しいスタイルをつくろうと努力をされています。また、区長行政と我々議会との関係も変わってまいりました。区長が変わっても政策が変わらないというのなら、区長を変える必要も意味もございません。私たちも、果断な改革を進める藤澤区長と新たな関係をつくることが求められているのだと思います。要は、外務省ではありませんが、荒川区議会の中に鈴木宗男先生のような存在をつくらず、また、その影響力を恐れる官僚をつくらないことだと思います。風通しがよく、区民のために論議活発な行政と議会との関係でありたいと思っております。
 最後に、大変恐縮ですが、きわめて問題のある事業について申し上げざるを得ません。
 1つは、病後児保育の委託についてであります。これは、病後児保育事業を社会福祉法人、上智社会事業団に委託して実施する今年度からの事業であります。この事業の中では、水道光熱費や消耗品、施設の減価償却費、これは電話料などですが、こうした必要経費を一切見込み、そして委託料は利用者が一人もいなくても月額一定額56万1000円を払うと定めたものであります。人件費については看護婦と非常勤保育士。これは上智社会事業団で従来雇用している方の人件費を丸々区が持つというものであります。果たしてこのような事業が子供たちを保育園に預け、病後児を預けるという形での利用として足りるものであるか、また適切なものであるかどうか大いに議論が必要だと思います。
 聞くところによりますと、この病後児保育についての区内保育園アンケートをしたところ、自分の保育園ではない上智保育園に病後児を預けるかという問いに対して「要望がある」と答えた回答はゼロだったと伺っております。にもかかわらず、年間769万円の支出を行って委託するこの事業については、保健福祉委員会におきまして厳しく問題があると指摘いたしましたが、来年度予算にも計上されております。ぜひこの事業について徹底的に検討を加え、やめていただきたいと要望いたします。
 もう1点、区の印刷物の区内発注についてであります。荒川区では、区の印刷物、また区の発注するさまざまな消耗品、文房具などについて区内の事業者に発注するということを旨としてこられました。印刷物についても同様であるという回答を得ておりましたが、経理課から資料をいただきました。荒川区報だけが例外です。時には1600万に上る最大の区の印刷物である区報は、この10年間、一貫して区外の3つの印刷会社に発注されております。その他の小さな予算の印刷物についてはすべて荒川区内の事業者に発注しているということです。そして印刷関係の労働組合の協力を得まして、この方たちが進めている東京都23区での同様の発注について調査をいたしましたところ、やはり同様に特定の印刷業者が受注をしております。荒川区は随意契約でございます。こういうあり方についても、ぜひ転換を求めたいと思います。
 3番目に、ふえてきた事業委託の内容、単価、サービスの検討が必要になってきたという問題についてであります。この問題については決算で検討してまいりたいと思いますが、あらゆる事業について委託が行われる、これを議会としてどのようにその適切さについてチェックをするのかということがますます大きな課題になってきたと考えます。決算に回して厳しく議論してまいりたいと思います。
 さて、最後になりますが、私は藤澤区長の区政運営について、時代認識をしっかり持つこと、そして必要があれば果断に変更や転換を行うこと、区民が何に苦しんでいるかに敏感な区政であることというこの3つを委員会の中でも必要なこととして注文をいたしました。ぜひそのような区政であること、そして議会と厳しい議論を通じてよりよい区政をつくっていただくことを要望いたしまして、反対の討論といたします。