河内ひとみのあらかわ日和

2014年12月3日 2014年11月26日
西川区政2期8年 総括と課題を問う

2012年9月11日、あらかわ元気クラブ斉藤ゆうこは荒川区議会本会議で、2期8年にわたる西川区政の総括と課題を問いました。議会発言の全文を掲載します。

 あらかわ元気クラブの斉藤ゆうこです。西川区政も2期8年と長くなりました。任期2期目の2008年はリーマンショックの年でした。この4年間、荒川区は急激に変化しました。産業構造も区民の姿も変わり、区民の要求も多様化してきました。一方、西川区長は2期目から区議会の圧倒的多数を「西川与党」とし、支えられることになりました。「安定的な区政」と言われる反面、この弊害も大きくなってきているのではないか。と考えます。批判やチェックが効かない区政になれば、区政はよどみ、停滞するからです。

 そのような中で、基本構想「幸福実感都市あらかわ」を掲げ、3期目をめざすという西川区政は果たして変化に追いつき、課題に対応できるだろうか。そこが問われていると思います。これまで通りの政策や考え方では立ちゆかないこと、これまでの延長線上では打開できない問題が山積していることは、誰の目にも明らかです。新たな「荒川区の将来像」を描くことが必要なときだろうと思います。

 私たち、あらかわ元気クラブは「あらかわ元気クラブの荒川区本構想」を度々リニューアルさせて提案し、また、4年前の区長選挙では『現場の知恵と力が生きる区政』を掲げ、『仕事と生活の安定のために財政出動する』ことを柱とした荒川区の将来像と産業、医療・介護・福祉、子育てなどの現状打開の政策を明らかにしてきました。

 「区政は区民を幸せにするシステム」は西川区長が示す荒川区政のドメインです。故人となったある荒川区のリーダーは「善政を施される・・・・」といみじくもおっしゃっていましたが、人は自らの力によって自らの幸福を追求するチカラを持ち、権利を持っています。上から「施す」ではなく、区民に持てるチカラを十二分に発揮してもらい、地域を変えていく区政。その妨げになる国の制度・政策を区民と一緒になって変えていく区政が、荒川区には益々必要になってきました。「総幸福度」なるものに違和感を持っている区民も少なくないことも申し上げておきたいと思います。

 こうした視点から、2期8年の西川区政の総括と課題を問いたいと思います。

(1)日中国交正常化40周年 今日的意義と自治体交流について
 まず初めに、日中国交正常化40周年の今日的意義と荒川区の自治体外交、民間交流について伺います。

 今から40年前の1972年9月29日、日本と中国は国交を正常化し、北京に於いて「日中共同声明」が発表されました。当事者として、日本国内閣総理大臣・田中角栄、外務大臣・大平正芳、中華人民共和国国務院総理・周恩来、外交部長・姫鵬飛の4名が署名しています。それから6年のちの1978年、「日中平和友好条約」が締結されました。この時の当事者は、日本国外務大臣・園田直、中華人民共和国外交部長・黄華、この2人が全権委員として署名しています。

 これ以降、日中の経済、貿易・投資関係、人的交流は飛躍的に拡大し、地方自治体間の友好都市協定の締結が全国で行われるようになりました。つまり、日中共同声明と平和友好条約は今日の日中関係の基礎を成すものであり、荒川区と大連市中山区との友好都市交流もこうした一連の流れの中に位置付けられています。

 国交正常化から40周年の今日、もう一度その原点に立ち帰り、今日的な意義を改めて考え、地方自治体としての施策をそれに相応しいものとしていくべきではないでしょうか。

 さて、ご承知の通り、40周年を迎えた日中関係は、友好的とは言えない状況を呈しています。尖閣問題はそのひとつです。尖閣諸島が日本の領土であることは明白な事実です。我が国は1895年、10年余りの調査を経て尖閣諸島の領有を宣言しました。この手続きは国際法における「先占原則」に沿ったもので、当時の中国・清朝も含め、国際社会からの異議は何らありませんでした。第二次大戦後、尖閣諸島は沖縄県の一部として米軍の施政下に置かれ、1972年に日本に返還されています。

 今回のような事態の責任はこれまでの歴代政府にもあります。台湾漁船が接近したり、中国人活動家が上陸するなどの問題が起きても、日本政府は「領海侵犯」「不法入国」などで処罰することはなく、常に「穏便な解決」を図ってきました。靖国神社への参拝で対中関係を悪化させた小泉政権でさえ、尖閣諸島に不法に上陸した中国人を逮捕せず、「国外退去処分」としただけでした。「我が国固有の領土である」と言いつつ、当然行うべきだった実効支配を強める措置も取って来ませんでした。

 このような態度は「尖閣諸島をめぐる領土問題が存在する」こと、つまり中国と「係争中」であることを暗に認めるようなものであり、この問題で中国に付け入られる余地を自ら作り出していたのです。中国との経済関係の利益欲しさに、戦略もなく、民族の利益の根幹に関わる領土の問題をあいまいにしてきた歴代政府の責任が厳しく問われます。

 さらに、日本は対米従属の中国包囲網に加わっているという問題もあります。今回のような事件を口実に、アメリカの利益のための世界戦略に追随し、中国に対する包囲・牽制に加担を強めていますが、そのような自主性も戦略もない対応ではアジアの他の国々の信頼も得られないことは言うまでもありません。

 私は、本年4月23日から27日まで、中国・北京市を訪問し、中国国際交流協会・中国社会科学院・中国国際戦略学会などの諸団体との意見交換を行いました。この中で、私たちは「尖閣諸島は明確な日本の領土である」ことを述べ、しかし、「この問題で日中両国の関係をことさら悪化させようとする企ては日本の国益を損なうものであり、断固反対していく」ことを主張しました。

 これに対し、中国の諸団体からは、「歴史認識、領土問題といった意見の異なる問題を強調し、取り上げるのではなく、一致する問題から手を携えていくことが、日中両国の大局的に利益に合致する」との意見表明がありました。それでは、「日中共同声明」と「平和友好条約」とは、どのようなものであるのか、その特徴を理解するために、条文を少し引用したいと思います。

 日中共同声明の第7項には「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する」と書かれています。また、平和友好条約の第1条には、「1.両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるものとする。2.両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」とあり、第2条には、「両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する」とあります。そして第3条には、「両締約国は、善隣友好精神に基づき、かつ、平等及び互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則に従い、両国間の経済関係及び文化関係の一層の発展並びに両国民の交流の促進のために努力する」と書かれています。

 この共同声明と条約の締結は、当時の東アジア、アジア・太平洋地域の安定と平和的な発展に大きなインパクトを与えるものでした。当然のこととして、アメリカと当事のソ連の両超大国からはさまざまに圧力や妨害もありました。これを乗り超え、日中両国が反覇権条項「いずれの覇権も許さず、自らも求めない」ことを明記したことの意義は大変大きかったと思います。今日の状況に照らすと、益々その意義が生きて来るように思います。

 日中友好はそれ自体が目的ではなく、言わば、我が国・日本が米国から独立し、アジアで自主的に平和的に生きていくことの一つの手段です。当然、日中関係には対立面と協調面との両面があり、また、米中のアジアにおける関係にも同様のものがあります。要は、国がそのような戦略を持って様々な局面で対応しているのかであり、地方自治体としても、そうした観点が大切だと思います。

 荒川区は、中国大連市中山区との友好交流を続けて来ました。国に対しては、アメリカに追随しない外交で中国と対応することを求めると同時に、このような時こそ、地方自治体として自主性を持ちつつ、相互理解に努力することが大切であると考えます。この間の区民交流の実態を振り返り、友好都市関係の発展を積極的に推進すべきと考えますが、いかがでしょうか。また、北京市のいずれかの区との交流も必要と思いますが、見解を伺います。

【五味 企画総務部参事/答弁】

 日中国交正常化に関するご質問にお答えします。1972年の日中共同声明から40年、日本と中国の多くの人々の努力により、日中の友好関係が築かれてきました。今や約13億人という巨大な人口を抱える中国は、日本の最大の貿易相手国となり、経済をはじめ観光、文化といった様々な面において、活発な交流がなされております。今日、日本と中国の間には、解決すべき諸問題があることは事実です。しかし、アジアの隣人として、中国が日本の将来にとって重要な国の一つであることもまた事実であります。

 こういう時期だからこそ、両国の住民が、これまでにも増して、様々な交流を通じてお互いの理解を深めていくことが重要であると認識しています。人と人との、顔が見え、心が通う草の根交流において、大きな役割を果たしうるのは、住民にとって最も身近な、私たち区のような基礎自治体です。そして、友好関係を築く中にあっても、立場や意見を異にする場合には、毅然とした態度で、相手に主張すべきものは主張することが大切であり、そうした姿勢が、国家間の課題の解決にもつながっていくものと考えます。

 荒川区においては、オーストリアのウィーン市ドナウシュタット区や、韓国の済州市に続き、中国の大連市中山区と友好都市協定を締結し、国際交流を進めております。大連市中山区との交流につきましては、西川区長が経済産業副大臣時代に大連市の産業、経済の発展に尽力したことを縁に、平成17年4月に中山区長が荒川区を訪問したことを契機に交流が始まり、平成18年3月に友好都市提携を締結し、交流を進めております。平成18年度と19年度には、区民ツアーを実施し、約50名の区民の方々にご参加をいただきました。平成18年度から開催している日暮里ファッションショーには、毎年大連市モデル学校の生徒さんに参加していただいているほか、大連市の小学生が修学旅行で荒川区の小学校を訪問するなど、子ども同士の交流を行っております。

 また、現在、区内には、外国人の中で最も多い約6600人の中国国籍の方々が居住されており、荒川区国際交流協会では、これらの方々に対しても、様々な事業を実施しております。荒川区といたしましては、今後とも自治体間の交流を進めるとともに、草の根交流をしっかり支援し、中国をはじめ諸外国との友好の輪を広げてまいります。

(2)消費税増税の影響について
 野田内閣は、先の国会で「消費税増税法案」を成立させ、2年後に8%、さらにその2年後に10%への税率引き上げをめざしています。野田総理らを駆り立てているのは、所得収支の悪化に貿易赤字が加わった我が国の国家財政が、国債の暴落、銀行の資産減少につながり、金融危機を招きかねない、という危機感にかられた投機筋の利害にほかなりません。このような動機による消費税の増税は国民大多数の利益とは相反しています。第一、消費税を増税したからといって国債が暴落しないという保障はどこにもありません。世界金融危機はこれを生み出したシステムの必然として、今日も連綿とつながり、続いているのですから。

 財政字解消の財源に消費税を充てるなら、税率は25%必要との試算もあります。過去の消費税率引き上げでは、逆に税収全体が減少したことを見れば、消費税増税に依存した財政再建が不可能なことは既に証明されています。財政再建を説くのであれば、まず20年で295兆円に及ぶ所得税・法人税の減税で大いに優遇されてきた担税力のある高額所得者層や、総額400億円の内部留保の多くを有する巨大企業に適正な負担を求めることが先決である、と私は思います。

 私たち超党派の地方議員は「消費税増税にモノ申す東京自治体議員懇談会」をつくり、去る5月29日、参議院議員会館内で総会を開催し、各党の衆・参国会議員の参加を得て、消費税増税に対する各界の方々にご意見を伺いました。発言した小売商、製造業、サービス業、医療・介護などの中小事業者団体、 消費者団体代表、建設関係・教育関係の労働組合・団体などの方々からは一様に、「消費税10%の負担には耐えられず、経営、生活が破壊される」との悲痛な叫びが聞かれました。

 荒川区民の大多数からも「こんな景気の悪い時に消費税を上げたら、商売も生活も大変なことになる。政治家は何を考えているのか」という声が聞かれます。とりわけ、法律上の納税義務を負う区内の中小事業者は、もうこれ以上の負担に耐えられなくなっています。

 法律で『事業者を納税義務者』と定める日本の現行消費税は、事実上の「事業税」です。この間、長期デフレの下で利益を縮めながらギリギリの状態で営業を続けてきた中小事業者は、この法律の仕組みによって、たとえ経営が赤字であっても、毎年消費税を納税しなければなりません。アメリカの州税である小売売上税のように、日々の売上と税額が分離されて毎月納税する仕組みとは異なり、一年間の決算を経て、年間の総売上高から仕入高を差引いた『粗利』に5%を掛けた額をその年の納税額として確定し、滞納をしないためには借金をしてでも納税しなければなりません。

 他方で、輸出大企業は法律で『輸出は対象外』『つまり税率0%』と定められているにもかかわらず、国内取引と同様に仕入税額控除方式が適用されるため、仕入れに掛かる消費税分を差し引くと納税額はマイナスになり、トヨタ、ソニー、日産、東芝、キャノン、本田、パナソニックなどの上位10社で年間約8600億、輸出企業全体では年間約3兆円にのぼる巨額の還付金を受けています。

 99%を占める中小零細企業から否応なく取り立てた消費税を、ほんの1%の巨大輸出企業に還付している。これが日本の消費税の実態です。  このような不公平極まりない日本の消費税の仕組みが、荒川区内の中小事業者を痛めつけていることを当局はご存じでしょうか?

 元静岡大学教授で税理士の湖東京至先生は、「事業者を納税義務者と法律で定めた日本の消費税の性格は、その名前とは裏腹に事実上の直接税であり、事業税である」と説明しています。消費税法をひも解き、仕組みを調べれば、このことは一目瞭然です。

 消費税ほど滞納が多い税金はなく、国税の中で消費税の滞納は常に第1位です。平成12年度は消費税の滞納額が5979億円で、滞納発生件数が93万件。納税義務を有する事業者は200万件位ですが、約半数が滞納しています。国税全体の滞納額の合計が 1兆3414億円で、そのうち消費税が44.5%でした。平成16~20年度は45%前後を推移し、平成21年度には50%にのぼっています。免税水準が3000万円から1000万円に下げられた平成17年度以降は、60万件を大きく超える発生件数が続いていますが、売掛金の差し押さえまでする厳しい取り立てにもかかわらず、一向に滞納が減らないのは、事業者に「納税するお金がない」からです。

 かつて「我々消費者が預けた税を事業者が滞納するなどケシカラン。益税ではないか」という議論があり、当時のサラリーマン新党の方が訴訟をおこしたことがありますが、1990年の東京地裁は訴えを退け、「消費者が事業者に支払っているのは税ではなく、商品やサービスの代金の一部である」との判決を下しています。湖東京至税理士は、「個店やスーパーで買い物をしたとき、レシートに書かれている5%分の数字は、税を払っているのではなく、『値引きならぬ値増し』、つまり納税義務を負い消費税をおさめなければならない事業者が値増しした結果の、物価の上昇分に過ぎない」と説明しています。消費税法を紐解くと、どこを読んでも、法律上、『転嫁』の文言や規定はありません。むろん義務づけもない。だから、納税義務者ではない消費者に『税を預ける行為』は存在せず、消費者は物価上昇の影響を受けているに過ぎない。税を預かっていなくても、納税義務者である事業者は納税せざるを得ず、ここに滞納の原因がある、ということなのです。

 ここに、国税庁と東京国税局がホームページで公表している統計があります。いま申し上げた数字が見て取れます。輸出大企業の本社が管内にある愛知県豊田税務署(トヨタ)、広島県海田税務署(マツダ)、神奈川県神奈川税務署(日産)、大阪府門真税務署(パナソニック)、そして東京では、梅ちゃん先生の蒲田税務署(キャノン)などには黒い▲の印があり、徴収額がマイナスになっていることも判ります。つまり管内にある全ての納税義務を負う事業所から取り立てた消費税の総額より、ある輸出大企業1社への還付金の額の方が大きい、ということです。この対比で、荒川区内の中小事業者がこうむっている不利益が実感していただけるかと思います。

 「広くあまねく国民に平等に負担をして頂く消費税」と政府は主張し、マスコミもこの論調を堅持してきました。しかし、私が述べた、税務署と事業者なら誰でも知っている納税の仕組みは、今日も正確には知られていません。しかし、法にのっとって仕事をする荒川区行政の皆さんには、消費税法の仕組みを正確に把握して頂かなければなりません。そうすれば、今回の政策が、歴代区長や西川区長が行ってきた施策に逆行し、産業振興策、中小事業者支援策を水泡に帰しかねない事が理解頂けると思います。

 まず、「納税義務者は事業者である」という法の認識をお持ちですか?「円滑な転嫁」などと言いますが、「転嫁」という言葉は消費税法のどこにもなく、法律で義務付けられてはいなという認識がありますか?赤字の区内中小事業者にも倍額の納税を強いる、消費税増税政策の本質をどのように把握されているのか、伺います。

 痛めつけられ、商売の継続が死活問題となっている中小零細事業者の痛みを知るハズの最も身近な基礎自治体として、納税義務者じゃない消費者・低所得者に給付金を支給するなど、とんでもなく的ハズレなバラマキ政策であることを、政府や関係者に教えて上げて下さいよ!そういう義務があるんじゃないですか?

 さて、この愚策によって、給料や年金の可処分所得が減り続ける中、老いも若きも荒川区民の生活は窮地に陥ります。とりわけ、中小零細事業者が多い我が区での地域経済への打撃ははかり知れず、その結果、大切な自主財源、税収の落ち込みが懸念されます。

 消費税導入が国会で議論されていた1988年11月11日の荒川区議会福祉・区民委員会で、当時の吉野税務課長は、歳入で入る当時の消費譲与税と、歳出にかかる消費税負担とで、差し引き約10億6千万円のマイナスとの独自試算を示しました。これは3%で導入されると仮定した場合のシミュレーションでした。その後、1997年に税率が3%から5%に引き上げられたことに伴い、そのうち1%が地方消費税となり、地方消費税交付金が創設されました。

 しかし、地方自治体は、土地や医療などの限定された品目を除き、すべての物品購入や契約、建設事業費などの『値増し・単価上昇』が起こることに対応して支出が増えることになります。法律にはありませんが、10%の税率が『転嫁』された価格で契約すれば、支出増が予測されます。まさか、「法律にはないから転嫁するな、価格をまけろ」とは言えませんからね。

 今年3月の予算反対討論で「来年度予算には21億7600万円の地方消費税交付金が計上されており、歳入と歳出について試算してみたところ、差し引きマイナスに傾いており、10%でも同様の予測がされる」と申し上げました。当局は「今回の改正には不明な点が多く、影響額はまだ判らない」との見解でしたが、法が成立した現在、区財政への影響をどのように試算しているか、伺います。静岡市議会では仲間の議員が2定で行った同様の質問に対し、影響額が答弁されていますが、いかがでしょうか。

【石原 産業経済部長/答弁】

 消費税の増税は、高齢化で毎年増え続ける社会保障の安定的な財源を確保し、特定の世代に負担が偏ることのないような形で、将来にわたって社会保障を支えていくことを目的としています。したがいまして、消費税による負担の増加は、将来の国民の生活の安定に資するものであり、結果として地域経済の安定にも繋がっていくものと理解しています。

 一方、中小企業が多数を占める地域においては、消費税の転嫁が困難となり地域の経済活動にマイナスとなるという指摘があることは承知しております。区といたしましては、消費税増税が中小企業の経済活動に過大な負担となることのないよう、様々な機会をとらえて国等に消費税の円滑な転嫁対策等を要望するとともに、引き続き中小企業の経営基盤の強化に向けて支援をして参ります。

【北川 総務企画部長/答弁】

 消費税に関する質問のうち、区財政への影響について、お答えします。国が示す資料によれば、消費税の5パーセント引上げに係る地方分は1.54%で、これを地方消費税分1.2%と地方交付税分0.34%により配分することとされております。特別区の場合、地方交付税の直接適用がないため、地方交付税分は都区財政調整を通じた配分が考えられるところですが、財調上の取扱いは未定であり、今後の都区協議の中で決定してまいります。

 また、消費税率の引上げに伴い、財調の需要額や区の歳出への影響も見込まれるところですが、社会保障財源化の取扱い等詳細は不明であります。したがって、区の歳入、歳出に影響があることは確かですが、現時点では、その影響額を推計できる状況にありません。

(3)深刻な保育園不足の責任と打開策について
 区立保育園の不承諾は418人と昨年を上回り、南千住で153人、日暮里で96人と、認可保育園に入れなかった子どもが数多く出ました。区は「増設中であるから来年は解消に向かう」と言いますが、個々の家庭にとっては、この年度に子どもが保育園に入れるかどうかが死活問題です。

 この中で指数が20以上、つまり保護者が現に雇用契約が継続中であり、常勤・フルタイム勤務のケースは特に深刻です。南千住で71人、日暮里で28人がこのケースに当たります。育児休業明けで職場復帰を控え、に入れると思っていた保育園に入れず、一カ月以内に迫った職場復帰に支障をきたすかも知れないお母さん、お父さんの不安と焦りは大変なものがあります。委員会でも申し上げた通り、「ライバルの状況はどうか?」「自分の敗因は何か?」というような言葉が出てくる程に事態は切迫してきました。

 小さな子どもを抱えた若い世代が保育園入園をめぐって同じ状況の人たち同士で競争を繰り広げなければならない現状は尋常とは言えません。『人口20万人を超えて保育園足りず』。この状況に、「子育てしやすい区」と荒川区を選んで転入した新住民や、荒川区で生まれ育ち、子育て世代となった多くの区民の中には、強い怒りの声があります。「この現状では、とても『幸福を実感』するどころではない」と私も子育て世代の人たちから真顔で苦情を言われました。

 もちろん、新たに仕事に就きたいと願う区民、指数が20に満たない就労状況の区民も保育園に入れなければ困りますが、今回の質問では、私が昨年~今年にかけて区民から相談を受けたケースのうち、指数20以上の保護者がぶつかった問題を紹介し、「新たな保育園をつくっているから待って下さい」では解決できない問題の打開策について伺います。

 4月に区立の認可保育園に入れず、認証保育所もすでに満員で、保育ママにようやく空きがあり、預かってもらうことができた。しかし、ひとりで保育を担当する保育ママの体力や家庭の事情から、保育時間に制約があり、保育ママがお休みを取る時には、家庭保育する人が対象の緊急一時保育の空き枠を探し、申し込み、面接をし、確保しなくてはならない。これまでなら認可保育園に預けられていた人が、保育ママではカバー仕切れない問題にぶつかり、「仕事が続けられるのだろうか」と悩んでいます。区立認可保育園に4月入所できなかった事例から見える、こうした問題点をどう打開するのか、伺います。

 さて、現場の保育課は、この2年間、大変な苦労を重ねていると思いますが、保育園建設、誘致の立ち遅れの原因は、適正規模人口の検討なく民間マンション建設を呼び込み、小規模戸建て住宅建設を野放しにしたこと、ファミリー世帯の流入・定住による税収増と保育園・幼稚園・学校・学童クラブなどの施設建設・整備にかかる費用との財政バランスの検討が欠けていたことにあります。

 この質問を通告したら、「教育委員会は教育委員会で、子育て支援部は子育て支援部で、都市計画は都市計画で、それぞれ人口推計を行ってきた」と当局はおっしゃいましたが、区としての総合的な判断はあったのか。 区の政策的責任は否めません。第3子以降の保育料を無料化とする施策などの子育て支援策の効果で、どれくらいの転入を見込んだのか。この8年間の政策に誤りはないのか、判断はあったのか、当局の見解を伺います。

【黒川 子育て支援部長/答弁】

 保育園についてのご質問にお答えいたします。荒川区における認可保育園への入園申込者数は平成18年度以降年々増え続け、本年4月においては、18年度と比較し、400人以上増加している状況にございます。

 とりわけ、南千住地域においては、汐入地区の再開発に伴い、乳幼児人口の増加が著しく、入園申込者数も大幅に増加しております。また、日暮里地域においても、民間マンションの建設に伴い、乳幼児人口が増加し、今後も大規模マンションの建設が予定さていることから、保育園の入園申込者数の増加が予想されます。こうした状況を踏まえ、区では、これまで認可保育園の整備や認証保育所の誘致、しおいり保育室の開設、保育ママの増員により、保育利用定員の大幅な拡大を図ってまいりました。

 本年4月には、日暮里駅前の私立認可保育園の開設を支援するとともに、7月には南千住7丁目保育園を開設することによって、保育需要の拡大に対応したところでございます。 この結果、本年4月における待機児童数は46人と、23区の中で三番目に少ない区となったところであります。

 今後、来年4月には、夕やけこやけ保育園を開設するとともに、認証保育所の誘致や保育ママの増員を検討するなど、保育需要を的確に把握し、適時適切な対応を図ってまいる所存でございます。

【北川 総務企画部長/答弁】

 適正人口政策に関わるお尋ねにお答えいたします。荒川区の人口の推移を見ますと、平成16年以降、約1万7千人あまり増加し、本年8月1日現在で約20万5千人となっております。この間、荒川区は、子育てのしやすい街、犯罪が少なく安全安心で住みやすい街、等のイメージが定着し、多くの若年者の流入があり、街の賑わいや活力を高めてきたと感じております。

 一方、ご質問の適正人口という概念については、例えば市町村合併にあたって合併区域を検討する際などに使用されることがありますが、行政計画等の策定に際して推計される将来人口とは、考え方が異なるともの認識しております。人口の変動は、社会情勢や地価動向など、区が関与しがたい要因が大きく影響しており、区では、これまでも再開発やマンション建設などに対応し、随時、人口推計を行い、行政需要に対応した施策を展開してまいりました。今後とも、人口の動向等を踏まえ、適時適切に施策を実施してまいる所存でございます。

(4)100億にのぼる土地購入と施設建設について
 さて、東日本大震災は都区財政調整交付金や区の財政にも大きな影響を及ぼすことが予測されましたが、1年半を経て、これは現実のものとなってきました。区民も、この間の荒川区の土地購入や施設建設のあり方に厳しい目を向けるようになっています。

 私は、この間、「特定の分野に偏った西川区政の『財政出動』は、区民経済への効果に疑問がある。区民は潤っていない」と土地購入・施設建設ラッシュを批判してきましたが、改めてこの点について伺います。

 平成19年からこの24年3月迄の間に、荒川区は実に41件約96億6千万円もの土地を購入しました。この中には、すでに何らかの施設などの形になったものと、そのまま寝かしてあるものがあります。その象徴とも言える「荒川2丁目複合施設」について。この周辺の土地購入の経過について、去る3月12日の土地開発公社評議員会で質疑があり、都営住宅跡地の譲渡で老朽化した荒川図書館の建て替えを、と始まった計画が、メッキ工場の土地の全面取得にまで発展し、これが、子ども関連施設、吉村昭文学館を含む複合施設へと次々に膨れ上がった経緯が出されました。

 今年度も、複合施設の拡張用地として隣の土地を購入していますが、買い足しを重ねる当局は、複合施設に3割、防災用地に7割を当てる計画で、さらに新たな隣地を購入するための費用を土地開発公社の来年度予算に計上され、事業計画が提案されました。

 西川区政が標榜する『荒川版ニューディール』政策による財政出動は、果たしてこの4年間厳しい営業・生活環境の変化にさらされてきた区民の多くを潤す政策であったのか。厳しい総括が必要です。

 土地取得が先行した、不要不急の「箱もの」建設との批判が区民の中に根強いのも当然です。さらに、日暮里区民事務所の隣地を取得しましたが、活用計画は一向に見えて来ません。ふれあい館建設については、老朽化したひろば館の土地を売却し、適地にふれあい館を建設する費用に充てるというのが当初の構想だったハズですが、早々と土地を購入して貸駐車場にしてきたケースもあるというのに、遅々としてすすまない予定地もあります。また、予定価格の60%、50%を下回る低価格落札が横行する中で、唯一ふれあい館の建設工事に限って、予定価格の99%、98%という高い落札率であり、固定した区内企業が受注してきたという事実も予算委員会等で他の会派からも指摘されました。

 公共用地取得は、特定の分野に偏った財政出動であると言わざるを得ず、大多数の区民の幸福は実感されていないという事を申し上げ、当局の見解を伺います。また、これらの土地購入の財源についても伺います。

【北川 総務企画部長/答弁】

 公共施設の整備等の効果に関するご質問にお答えします。荒川区では、これまで財源確保に最大限努めながら、ふれあい館や保育園、特別養護老人ホーム、障がい者支援施設、児童遊園、防災ひろば、グリーンスポットなど、区民サービスの向上や、それぞれの行政目的を達成するために公共施設の整備を様々な手法を用いて、着実に進めてきたところでございます。

 ふれあい館について言えば、地域住民の交流をはじめ、生きがいづくりや健康増進、子育て支援の場となるなど、多くの方に大変喜ばれている施設となっています。また、特別養護老人ホームや障がい者の共同住宅を備えたスクラムあらかわは、住み慣れた荒川の地で生活が続けられることから、入居者並びにご家族の方から大変感謝されており、児童遊園は子ども達をはじめ、多くの区民の憩いの場や活動の場となっています。

 このように、公共施設は、まさに区民生活に直結した、地域に無くてはならない大切な施設であると認識しております。さらに、公共施設の整備は、区民サービスの向上にとどまらず、地域社会や地域経済に複数の効果を発揮することが、多くの方にご理解いただけているものと推察しております。

 具体的には、建設工事の発注や備品等の調達を通して、不況に苦しむ多くの区内事業者の業績向上につながり、施設運営を通して新たな雇用の創出といった効果も期待でき、これがさらに経済的な波及効果をもたらします。また、木造密集地域をはじめとした用地の取得は、オープンスペースを生み出すとともに、新たに整備する施設は、防災備蓄倉庫の設置や有事の際の避難所としての活用など、地域の安全性の向上にも貢献するものと考えています。区といたしましては、区議会をはじめ、区民の皆様の多様な要望に応えることができるように、必要な公共施設の整備を進めてまいる所存でございます。

 つづいて、用地取得の財源に関するご質問に、お答えします。区が用地取得する際、例えば、密集住宅市街地整備促進事業については、国や都の補助金のほかは財調により財源が措置され、また、都市計画道路については、国の補助金のほかは都市計画交付金と財調によって財源が措置されております。

 ご質問にあった5ヵ年の用地取得費の総額約100億円のうち、財源構成が確定している取得費は約72億円であり、その財源としては、国の補助金で10億円、都の補助金で4億円、都市計画交付金で2億円、財調で19億円が措置され、実質的な区負担は37億円程度となります。荒川区といたしましては、今後も引き続き、区民サービス向上に必要な用地については、財源確保に最大限努めながら取得してまいります。