河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月26日 2014年11月26日

荒川区長 西川太一郎 様

 昨年6月、国会で自民・公明・民主各党の賛成によって成立した介護保険法改正は、いま区民生活と高齢者の尊厳に悪影響を及ぼす結果となってあらわれてきました。
 厚生労働省が『給付の抑制』を目的に掲げて行ったこの法改正と、同時期に行われた保険料の改訂、介護報酬の改訂によって、介護保険制度は「保険料値上げで負担は増えたが、サービスは削減される」という問題が発生しました。将来もこうしたことが繰り返される可能性は大で、まさに制度創設当時に危惧された『保険あって介護なし』の状況です。
 わが国の社会保障行政はかつて『生活の質の向上』と『家族介護の負担軽減』という理念を掲げましたが、『財政構造改革』を優先した介護保険制度は、この理念に逆行する形となりました。介護保険制度は変質し、崩壊の危機に瀕していると言えます。
 そこで、この間の利用者と事業所の意見を調査し、最も問題があると思われる点について緊急に要望を致します。この際、荒川区は法改正のたびに条例改正で追随することを止め、制度の抜本的変更を国に迫っていただきたい。国に振り回され、負担を強いられることなく、保険者として区民のために強く関係機関に働きかけていただくことを切望します。

1.) 荒川区として、以下の施策を実行するよう要望します。

1.今回の法改正によって、福祉用具利用が『保険対象外』となった区民が多数存在する。
  引き続き自立支援のために福祉用具を必要とする区民が、介護ベッド等の福祉用具を従来通り利用できるようにするため、荒川区として助成制度を創設すること。

2.介護認定の適切さと公平感は、介護保険制度の基本であるが、今回の法改正の下で「介護度」の引き下げが多発する傾向にある。荒川区として、更新時等に認定が変更となった被保険者の事例を集計し、適切な認定であるか、調査を行うこと。

3.今回の法改正で創設された「地域包括支援センター」は受け持つ件数が過剰となり、量的にも質的にも被保険者に対するサービスが機能していない状況が見られる。荒川区として現状を調査し、適切な人員配置や人材育成、業務の配分等ができるよう対策を講じること。

2.) 厚生労働省に対し、特別区区長会や東京都などを通じて、また直接にも、以下の点を強く働きかけ、改善させるよう要望します。

1.「給付の抑制」を目的とする今回の法改正の主旨を撤回すること。特に、生活支援への時間制限導入や、大規模事業所に有利な加算措置など、問題のある点を改正するよう働きかけること。

2.介護予防施策は保健事業として位置付け、介護保険事業に含めないよう改めること。

3.この制度そのものに対する抜本的な検討を行い、介護保険制度を廃止して税によって財政をまかなう福祉制度に発展解消するよう、要望すること。