河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月26日 2014年11月26日

斉藤ゆうこ
 あらかわ元気クラブの斉藤ゆうこです。
 「7つの安心社会」を掲げる藤澤区政が誕生して2年半がたちました。この2年半の間に日本の経済と政治は混迷を続け、だれの目から見ても決してよくなったとは言えません。国民が第一に望んでいる景気回復は依然として未解決の状態です。それに加えて、この2年半にはアフガニスタン、イラクへの戦争が相次いで世界を揺るがし、人々は不安の中にあります。日本が今、自衛隊を渦中のイラクへ送るのか。大きな関心事となっております。
 私は先日、新潟県加茂市の現職市長で、元防衛庁の教育訓練局長をお務めになった小池清彦さんのお話を伺う機会がありました。防衛庁OBとして現在の状況を憂慮した小池市長は、小泉首相あてに「自衛隊のイラク派遣を行わないことを求める要望書」を提出されました。小池市長は要望書の中で、『先の大戦において、祖国のため、戦火に散華された英霊が望まれたことは、祖国日本が再び国際武力紛争に巻き込まれることがないように、とのことであり、日本国民が再び戦場で斃れることのないように、ということであったはずであります』と述べ、『兵を動かすことを好む者は、いずれ手痛い打撃を受け、国民を不幸に陥れることになる』として、『海外派遣中心の防衛政策から祖国防衛中心の防衛政策への転換』と、『アメリカの圧力から自衛隊員とその家族を守ること』を訴えておられました。国の守りに真剣に取り組んでこられた方々の拝聴すべき御意見ではないでしょうか。
 こうした国の安全保障や外交にかかわる「不安」にも無関心ではいられませんが、それは国政の問題といたしまして、荒川区という自治体が足元の取り組みをしっかりすることでできる「不安の解消」について、これから2点にわたりまして質問をいたしたいと思います。
 まず第1点目に、藤澤区長は区民の雇用不安解消にどう取り組むのか、お尋ねいたします。
 私は、昨年の一般質問で「7つの安心社会」に続く「8つ目の安心社会」としてさまざまな区民がともに生きていく『共生安心社会』を提案いたしました。今回は、今、区民が最も不安を感じていることの一つ、「働くこと、仕事、食べていくこと」について『雇用安心社会』を提案し、お考えを伺います。
 9月議会最終日の決算反対討論で、私は、「地域の産業にも、区民の雇用にも今不安がいっぱいだ。生きていくこと、暮らしていくことの基礎は健全な経済だが、ここが揺らいでいるからすべてに不安が生じてくる。東京でも多くの保守政治家が『小泉構造改革はこのままでよいのか。地元の中小企業や勤労者は構造改革では立ち行かない。これで未来はあるのだろうか』という気持ちを抱いていると思う」と申し上げました。そして、「荒川区が地域産業の再建や雇用問題に対して正面から手を打ってきたとは言いがたい。地域経済と雇用を不安にさらす国の政策とは断固闘い、産業振興政策と、これと一体化した地域雇用政策を荒川区独自に打ち出していただくことを期待する」と申し上げました。
 私が『失業者都民ネットワーク』の仲間たちと一緒に国会や都議会へ行き、厚生労働省や都庁の産業労働局と交渉する活動にかかわって既に1年半、一向に改善しない失業率の中で、東京のあらゆる産業から、日本の経済の根幹を支えて働き続けてきた人たちが、いとも簡単に放り出されるのを目の当たりにしてきました。また、働いている人たちの中にも先々の仕事に対する不安が募っていることをひしひしと感じてきました。
 しかし、この1年半の間には行政の側に変化もありました。以前は専ら国が行ってきた失業対策、雇用問題を身近な自治体である都道府県や市区町村の事業としても取り組むように法律が改正され、各地で積極的な取り組みを行う県や市も出始めた、そういうことです。その特徴は、地域ごとに事情の違う産業、その産業振興策と結びつけて失業の解消や雇用創出に取り組むという点です。
 そこで、こうした国の動きをとらえて、荒川区の産業振興策と結びつけて地域の雇用を拡大していくために荒川区独自の積極策を打ち出す考えはないか。具体的に2点伺います。
 9月17日の日経新聞の報道によれば、厚生労働省は、市町村単位の政策を直接支援する制度をつくることにしたとのことです。地元商工会議所など事業者団体との連携を条件に、市町村が独自につくる雇用対策を国が後押しするという趣旨で、来年度15億円の予算獲得を目指しているとのこと。この制度については、対象になる市町村など不明な点もあり、詳細は明らかではありませんが、今後も、国のこのような動きに敏感に対応すれば、財政面での支援を受けて荒川区が独自の有効な事業ができるのではないでしょうか。
 例えば、東京の東部下町地域の中小製造業でリストラを受けた40代、50代の労働者が再び就職できるよう、職業訓練校ではなく、企業自身に新たな技術の習得や能力開発をお願いし、引き受けてもらい、そこに地元自治体を通して補助金を出す仕組みづくりなどができないものでしょうか。人手不足と人件費削減とのはざまで悩む中小企業経営者の方々の理解を得られれば、産業振興にも失業問題解決にも役立つ荒川区独自の有効な仕組みをつくることも可能だと思います。
 また、荒川工業高校、航空高専の技術を持った青年たちに、地元企業への就業体験や交流を通じて就職あっせんを行い、大企業志向、中央志向ばかりでなく、荒川区の中小企業製造業の価値を輝かせていくような取り組みも可能だと思います。
 もう1つ、ことし6月の職業安定法の改正によって、現在、国のみが行っている無料職業紹介事業が地方自治体の自治事務として行えるようになりました。東京都の産業労働局が国に強く要望してきたことの一つですが、やはりこの法改正の趣旨も、地域の特性を生かした産業振興策や福祉政策と結びつけて身近な自治体自身が雇用対策を行うことにあります。例えば、「産業経済の発展等に資する施策・業務」と結びつけて職業紹介事業を行うことができますが、雇用機会をふやしたり、コミュニティビジネスや起業、会社を起こすことですね、これを支援するために求人のあっせんを行うことが可能となります。既に、この法改正を受けまして、趣旨を生かした取り組みを検討している川崎市や横浜市などの例もあります。荒川区としてもこのような事業ができないものでしょうか。お考えを伺います。
 いずれにしろ、区民にとって深刻な失業問題、雇用不安の解消に荒川区として取り組もうとすれば、産業活性化推進室の中に雇用対策課などの部門を設置して本格的にやっていく以外にないと思われます。体制づくりも含めまして検討していただくことを要望いたします。
 次に、「荒川区最大の事業所」である荒川区役所自身が、その契約や事業によって、区民の失業への不安や不安定雇用を生み出さないよう努力をし、改善していくための方策について伺います。
 最近、『公契約条例』、これはまだ耳なれない言葉ですけれども、これをつくって自治体の契約をただ単価の安さだけではなく、社会的な評価を取り入れようという新しい動きが起こっております。自治体の契約をめぐって、談合やダンピング、不当廉売ですね、これが問題になったのは主に公共工事の分野でしたけれども、最近、地方自治体のありとあらゆる業務、例えば公共施設の清掃やメンテナンス、コンピュータシステムの管理、駐車場の管理、学校給食の調理業務、保育園や学童クラブなど、これはもう荒川区でもすべてやっておりますけれども、これらの業務が民間にどんどん委託される中から新たな問題が起こってきました。
 行革で「安い単価、安い契約であればあるほどよい」とされたしわ寄せは確実に委託先で働く人たちを直撃しました。昨年、札幌市では、病院の清掃委託費が年々下がり続けた結果、パート労働者の賃金不払い、社会保険の取りやめ、賃金切り下げが起こり、中には8時間労働しても生活保護を受けざるを得ない人まで出たと報道がされました。退職金未払いで倒産を余儀なくされた公立病院の委託会社、官公庁のビルメンテナンス会社の賃金遅配などなど、「民間に仕事が来るから雇用機会がふえていい」などと喜んではいられない事態が起きております。自治体が結果的に住民の雇用不安をつくり出す結果になっているわけです。
 人は継続して仕事につくことができ、生活できる賃金が得られなければ生きていけません。いつやめてくれと言われるのか、明日の雇用に不安を抱え、この賃金で先々食べていけるのだろうかと生活に不安を感じている人たちに、私たち議員や区の役人が「仕事があるだけいいじゃないか」などと言えるはずもありません。区の契約の向こう側で働く人たち、委託会社で働く人たち、そのほとんどが区民ですが、この人たちを不安にさせない契約の方策が必要ではないでしょうか。
 『公契約条例』は、こういう事態に歯どめをかけるため、自治体が入札や契約を行うに当たって、相手方の企業が労働法を守っているのか、雇用の継続や生活できる賃金、労働安全衛生などの面で努力や配慮をしているのかなどを指針とする条例をつくる、そういう考え方です。
 そこで、お伺いしますが、『公契約条例』のような考え方が出てくる背景には、コストダウンの名のもとに、官といわず民といわず、不安定雇用、非正規雇用で働く人たちがふえ続けている現状があります。荒川区ももちろん例外ではありませんが、この全国的な実態についてどう認識されるか、まずここをお伺いいたします。
 さらに、『公契約条例』についてどのようにお考えか、お伺いいたします。

 さて、第2番目の質問ですが、荒川区の「地域防犯」への取り組みと「区民の安全・安心」について、理事者のお考えを伺いたいと思います。
 最近、荒川区内でも区民の生活と営業を脅かすような犯罪が多発していると実感しております。ことし2月に私自身も自宅近くの日暮里繊維街のバス通りでひったくりの被害に遭いました。(笑声)笑いごとではありません。また、近所の日暮里銀座実業会、親交睦会、繊維街などの商店街では、泥棒に入られ、店の品物をそっくり持っていかれた、何度も入られた店もある、怖くて店を引っ越した、などという話がここ数年とても頻繁に聞かれます。
 ことし2月の予算委員会で、区民事務所は近隣でこのようなことが起こっているのを御存じですかとお聞きしたところ、御存じではありませんでした。区民の中には、「昔は何かあれば交番に駆け込んだのに、今じゃ空き交番ばかり。『空き交番です』と言わんばかりに『何かあったら110番して下さい』なんて張り紙してあるんだから物騒でしょうがない」、「通りの向こう側から店の様子をうかがっている人がいて怖い」、「警察は夜の路地でパトロールしてほしいんだけれど、ちっとも見当たらない」など、切実な声があります。プロの窃盗団などにねらわれない地域にするためにはどうしたらよいのか、区民の体験や情報をしっかり聞き、警察とのパイプになっていく役割を荒川区自身が担ってほしいと思います。
 そこで、今回新たに危機管理対策課を設置し、防災課と合わせて新しい対策室をつくるに当たって、地域防犯に取り組む区としての問題意識、警察とは異なった身近な地元自治体の責務についてどのようにお考えか、改めてお伺いいたします。
 さて、ことしは関東大震災から80周年の節目に当たります。1923年、大正12年に起こった関東大震災では、地震による家屋の倒壊とその後の火災によって、死者・行方不明者は14万人にも上りました。東京の下町はほとんどが焼け落ち、大きな被害を出しました。私は、明治36年生まれの亡くなった祖母からこのときの様子を聞いたことがありますが、東京空襲とともに一生忘れられない大災害だったと言っておりました。
 両国駅にほど近い横網公園は、当時、本所の陸軍被覆厰跡の空き地でしたが、ここへ避難した数万人の人たちが炎で焼かれ、3万8000人もの人が亡くなりました。この横網公園には犠牲者を慰霊するための震災慰霊堂と復興記念館が建てられております。
 この公園にはもう1つ別の碑があります。「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑」です。関東大震災の直後、「朝鮮人が襲ってくる」、「井戸に毒を投げている」といった根も葉もないデマ、流言飛語が急速に広まり、軍隊や警察が指示を出し、果ては住民が「治安を守るため」という名目で自警団をつくり、あちこちで検問を行い、朝鮮人らしいと疑われた人々を虐殺するという事件が起きました。その後の調査によれば、このとき殺された朝鮮人は東京、埼玉、神奈川、千葉、群馬、栃木、茨城の1府6県で6000名以上に上り、東京だけでも約1700名以上に上ると言われています。記念碑は、この犠牲者を追悼し、歴史に埋もれることなく、二度とこのような悲劇が起こらないようにと震災50周年を記念して建てられたものです。
 この事件を題材にした小説を荒川区出身の作家・吉村昭さんが書いておられます。「関東大震災」という本です。文春文庫ですね。吉村昭さんは、藤澤区長と同じ開成中学の御出身で、数々の文学賞を受賞され、平成4年、1992年に『荒川区民栄誉賞』を受賞、区内で講演もされました。膨大な資料から掘り起こした事実をもとに書かれた小説で、第一次大戦後、日本が朝鮮半島の支配に本格的に乗り出していく時代背景、火災や流言が飛び交う中での混乱と人間に対する恐怖を描いた作品として評価が高い1冊です。荒川区の図書館にもあります。
 さて、本題に戻りますが、関東大震災80周年。建物の安全性や耐震補強といったハード面での取り組みに加えて、情報伝達の正確さや流言飛語の防止といったソフトの面でもこの関東大震災を教訓としていく必要があると思います。関東大震災時は、軍隊や警察がデマを広める役割を果たし、住民は自警団と化して罪もない人々を引き立て、殺りくする側に回ってしまった。しかし、その中には、一昨年、墨田区の法泉寺に建てられた朝鮮人一家を守った記念碑に代表されるように、命がけで災難に遭っている人々を助けた日本人ももちろん存在していました。私は、尾久のある方からこれと同様の体験談もお聞きしたことがあります。また、阪神大震災のときには、神戸の朝鮮学校での炊き出しに近所の日本人が加わり、助け合い励まし合ってきた経験もありました。こうした非常時の経験をかみしめておくことが大切ではないでしょうか。
 地方自治体はこのような大災害時にあって冷静であらねばならないと思います。そして、パニックや流言飛語の防止に努めなければなりませんが、そのためには、常日ごろから、住民のリーダーとなって活動されている地域の方々と一緒に研修や啓発を行うことも大切なことではないでしょうか。担当部局のお考えをお伺いします。
 以上、大きく2点にわたって質問をいたしました。どうぞ、理事者の皆さんの適切な答弁をお願いして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

産業活性化推進室長(緒方清)
 私から、雇用安心社会に関する御質問のうち、3点についての御質問にお答えをいたします。
 まず最初に、国の雇用対策支援制度の活用についての御質問にお答えいたします。
 厚生労働省が発表いたしました本年9月の有効求人倍率は0.66倍と前月を0.03ポイント上回り、「企業の求人意欲は高まっており、今後雇用はふえていく」とされておりますが、零細企業が大多数を占める荒川区におきましては、雇用情勢は引き続き厳しい状況が続いていると認識をしております。このため、これまで、先ほど御紹介がありましたインターンシップ事業やハローワーク足立、東京商工会議所荒川支部と連携した就職面接会を実施してきたところでありますが、雇用を創造する産業振興施策や職業紹介、職業訓練など、雇用対策のさらなる充実が必要であると考えております。
 御質問にありました国の雇用対策支援制度につきましては、新聞報道によれば、来年度から、商工会議所など事業所団体との連携を条件に、人材の誘致ための企業説明会や地域内外の企業への研修生派遣など、区市町村が独自に実施する雇用対策を国が財政支援するとのことであります。しかしながら、現時点におきましては、国からこの制度につきましての具体的な情報提供がなされておりません。区がどのように活用できるかについては今のところ不明であります。今後の動向を見守りたいというふうにこれに関しましては考えております。
 次に、無料職業紹介事業についての御質問にお答えいたします。
 本年6月、現下の厳しい雇用情勢や働き方の多様化等に対応するため、職業安定法及び労働者派遣法が改正をされ、職業紹介事業や労働者派遣事業等に係る規制の見直しがなされました。この中で、地方公共団体は福祉サービスの利用者の支援に関する施策、それから企業の立地の促進を図るための施策、その他住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策に関する業務に附帯する業務として、厚生労働大臣に届け出て無料職業紹介事業を行うことができるとされ、来年3月までに施行される予定になっております。
 このため、区といたしましても、福祉や産業振興策の一環として附帯的に職業紹介事業を行い、区内中小企業の人材の確保や地域における雇用の創出を図ることが可能になると認識しているところであります。しかしながら、区内の中小・零細事業所においては、なお厳しい経営環境のもと、求人意欲が乏しいこと、区としては区民の雇用の確保や創出にとって効果的なハローワークと連携した職業紹介あっせんの場の区内設置をする方向で現在検討を進めていることなどから、無料職業紹介事業につきましては、今後の研究すべき課題と今のところ考えております。
 最後に、非正規雇用の実態についての御質問にお答えいたします。
 総務省の調査によれば、平成14年の正社員数は約3456万人で、平成9年と比べて399万人減少し、反面、非正規社員は369万人増加をしております。正社員の減少分だけパートや派遣労働者が増加したことになります。このように非正規雇用者が増加している理由については、東西冷戦の終結に伴い、産業や労働市場等の世界的な構造変革が進む中、企業が長引くデフレ不況を克服するため、景気変動に応じて雇用量を調節しやすい非正規社員の雇用をふやしていることなどが挙げられます。その一方、働く側においては、若年層を中心として職業意識の変化があると認識をしております。

 いずれにいたしましても、区民の雇用の維持や確保、また区内企業の活性化という観点から雇用の状況や法改正の動向等を注視してまいる所存でございますので、よろしくお願いを申し上げます。

総務部長(三ツ木晴雄)
 契約に係る条例に関する御質問にお答えいたします。
 御質問にありましたいわゆる公契約条例と言われるものは、賃金水準や労働時間などの労働条件のほか、障害者の雇用状況や地球環境への配慮の状況など、企業活動の広範な分野にわたって一定の基準を定め、これを満たす企業と契約を締結することなどを内容とするものであり、労働団体などがその制定を求めて運動を行っているところでございます。
 我が国の産業・経済政策の基本的方向は、さまざまな規制を緩和して自由な経済活動の環境を整え、民間の創意工夫を促して経済を活性化することであり、事実上、新たな規制を設ける条例の制定はこの基本的方向に逆行していると考えております。いまだに条例を制定する自治体があらわれないのはこうした問題を内包しているからではないかと認識いたしております。
 条例で規定すべきとしている事項のうち、例えば賃金につきましては、雇用者と被雇用者の間で決定すべき事項であり、法で最低限の賃金が定められていることから、条例によって自治体との契約の条件とすることは適切ではなく、万が一、最低賃金を下回るような状況があった場合には、現行法令に基づき厳正な対応を図るべきであると考えます。また、仮にこのような条例を制定した場合には、基準を満たさない企業はその自治体と契約できなくなり、売り上げの減少によって経営が不安定化することも予想され、その結果、御質問の趣旨とは逆に新たな雇用問題を引き起こしかねないのではないかとも危惧いたしております。
 したがいまして、いわゆる公契約条例につきましては、現行法令に屋上屋を重ねることになり、また、自由な企業活動に影響を生ずるおそれなどがあり、これを現在の雇用情勢の解決方策とすることには多くの問題を含んでおり、区といたしましてはそうした条例を制定する考えはございません。

地域振興部長(柳澤孝志)
 地域防犯への取り組みと区民の安全・安心についての2点の御質問のうち、最初に、地域防犯に新たに取り組む区の問題意識と地元自治体の責務についての御質問にお答えいたします。
 昨年、過去最悪を記録した警視庁管内における刑法犯の発生件数は、ことしも高い水準で推移しております。荒川区内におきましても空き巣やひったくり等の被害に遭う区民が増加しており、区民からも不安を訴える声が数多く寄せられているところでございます。このような状況のもと、犯罪の増加に歯どめをかけ、区民が安心して暮らせる環境を取り戻すためには、警察だけに任せるのではなく、自治体としても一定の役割を果たすことが必要であると考えているところであります。今般、危機管理組織の新設並びに防犯関連の補正予算について議会に提案しておりますのが、このことは荒川区として危機管理対策に取り組む姿勢を明確にお示ししたものでもあります。したがいまして、今後は、新たな組織が中心となり、警察、町会、地域団体等と連携した防犯体制の確立を目指してまいりたいと考えております。
 続きまして、大震災時における流言飛語等の防止についての質問にお答えします。
 関東大震災時に発生しましたパニックの背景には、情報を伝えるラジオがまだなく、新聞もいまだ一般社会に普及していない当時、事実確認がなされない事柄がうわさとなって人から人へ伝わり、異常に拡散された結果のことと思われます。現在は、テレビやラジオ、インターネット等、さまざまなマスコミ手段により、瞬時に正しい情報が世界の隅々まで行き渡る状況になっております。また、区では、災害時に屋外104カ所の防災行政無線や、117町会すべてに配備した地域防災無線により速やかに情報を伝達する体制を整備しております。さらには、毎年実施しております総合震災訓練や発災時に地域のリーダーとなる防災区民組織への研修等の機会を通じて、地域で活動している方々に災害対策の啓発を図っているところでもあります。区といたしましては、発災時には区民に的確な情報を伝達し、パニックなどが起きないよう万全を期してまいります。

斉藤ゆうこ
時間がありますので、第2回目の質問をさせていただきます。
 公契約条例について、三ツ木総務部長が答弁をされました。大きな背景には、当然、東西の冷戦が終わってからのいわゆるグローバリズム、そういう中での競争の激化、その中で日本の大きな企業も中小企業もその波の中に巻き込まれて、コストダウンを余儀なくされ、人件費の削減を余儀なくされた、そういう背景があるということをおっしゃっているかと思います。そこまでは私と認識は同じ。ですが、規制緩和一辺倒のやり方であちこちに今きしみを生じているというのも事実ではないでしょうか。こういうグローバリズムのもとでどうやって人間が人間らしく働いたり、商売を続けたり、そういう営みをしていくことができるのか。これは国も地方自治体も同様に考えていかなければいけない、今、日本の社会が直面している深刻な問題だと思います。
 札幌市のような状況が起こっていることを一体どうお考えでしょうか。とかく、自治体というのは、条例をつくるときに、何か事件が起こって初めてこれを規制する、こういうことが二度と再発しないように防止をする、そういうふうに条例をつくるという行動しか起こしません。全国どこにも条例をつくっていないのは、屋上屋の規制を重ねる必要がないからだと三ツ木部長はおっしゃいましたけれども、現に起こっているこうした自治体の契約の相手方での人が働くことで支障を来すような状況、そのことを未然に防ぐ上でもこういう条例の考え方があると私は思って質問をいたしました。
 企業のコストダウンのために人が使い捨てにされる、これが自治体の契約の向こう側、区民の身の上に起こっていること。これはよくよく耳を傾けてみれば、自治体の仕事から切られた区民の人たち、こういう中からも荒川区の中で起こっております。結局、国民窮乏化、区民窮乏化を進めるようなことになりかねない、その歯どめとしてこういう考え方はできないものかとお尋ねしました。三ツ木部長に再度の御答弁をお願いいたします。

もう1点ですが、危機管理について御答弁をいただきまして、ありがとうございます。危機管理対策室は、いずれ有事も含めて対応するための組織というふうに伺っておりますが、現在のところは地域防犯、一番、区民の不安に密接な地域防犯に努めるということがその仕事の中心になってくると思います。
そういう中で、私は関東大震災80周年ということで、区民の皆さんの中でも「関東大震災から80年だね」という話がいろいろされるわけですけれども、このときの流言飛語が原因で起こった不幸な出来事を題材にして、何かこれらを防止するようなそういう取り組みはできないものかとお尋ねいたしました。テレビやラジオの発達、マスコミが瞬時に情報を伝えると言いますが、それがかえって危険な役割を果たすこともあります。地方自治体が冷静にリーダーの人たちと相談をしながら、流言飛語の防止や情報の正確な伝達や歴史のさまざまな教訓を生かしていくという取り組みをしていただきたいと思いますが、この点についてぜひ努力をお願いしたいと思います。柳澤部長に再度の答弁をお願いして、2度目の質問を終わります。

総務部長(三ツ木晴雄)
 公契約条例にかかわる再度の御質問にお答えいたします。
 我が国は法治国家でありまして、さまざまな労働関係法を初め、法的な整備がなされていると考えておりまして、また、その違反に対しては厳正な法の執行がなされているというふうに考えております。したがいまして、再度の御質問でございますけれども、そうした新たな形での条例をつくる考えはございません。

地域振興部長(柳澤孝志)
 流言飛語の再度の御質問にお答えします。
 先ほども御答弁をいたしましたように、当時は報道機関等々がございませんでした。いざ、私どもが発災をしたときには災害対策本部を設置し、その中には、各警視庁並びに消防庁等との連携をとりながら、いかに区民に安心してもらうかというような情報も踏まえて伝達をし、救助活動等々に努めていくところでございます。そのような中でかつてのような流言飛語は流れるというようなことはないというふうに信じているところでございます。

斉藤ゆうこ
 三ツ木部長のお話を聞いておりますと、法律はすべて機能していて、国民、区民は何も困ることがないというように聞こえます。そうでないからこそ社会的問題が起こっているんじゃないですか、いろいろと。三ツ木部長がおっしゃるようだったらいいですね。私が言っているような問題は、区の契約の向こう側の問題として区民の中に今広く存在している問題ですので、ぜひ、そういう木で鼻をくくったような答弁ではなくて、あなたの心に、胸に手を当てて真剣に考えていただきたいと思うんですよ。
 それから、危機管理対策室をせっかくおつくりになるということですから、地域防犯で区民の皆さんと心の通った取り組みをしていただきたいと思います。その中にはぜひ、答弁していただかなくても結構ですけれども、万全だ、流言飛語などあるはずもないということではなく、現代の流言飛語も、21世紀の流言飛語も残念ながらあるでしょう。そういうことをなくしていく冷静な自治体の取り組み。とにかく大災害時というのは有事ですから、平時では想像できないことを人間は起こしていくんですね。そういうことが歴史の経験なんじゃないでしょうか。お年寄りに聞いてみると、荒川区の中からもたくさんそういう話の掘り起こしができると思います。ぜひ、たくさんそういう経験も聞いていただきながら、自治体として何をなすべきか、せっかく危機管理対策室をおつくりになるのですから、こういう心の不安、住民の中の不安、そういうものを払拭するような取り組みをお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。終わります。