河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月28日 2014年11月26日
(斉藤ゆうこ)

 あらかわ元気クラブの斉藤ゆうこです。
 私は、『あらかわ元気クラブの荒川区基本構想』にもとづいて、「格差拡大に歯止めをかけ、また、力の強いものを規制するために、基礎的自治体としてのどのような対抗策を取るのか」について、西川区長と区当局のお考えを伺います。
 『あらかわ元気クラブの荒川区基本構想』は、昨年9月から今年の3月迄、元気クラブが政務調査費を使って開催した広聴会での、区民各層のヒアリングと討論を通じて作りました。今年3月に策定した荒川区基本構想に対する独自の対案として作ったもので、1999年に続いて2回目の試みになります。昨日の本会議で三ッ木副区長は「全会一致で賛成」とおっしゃいましたが、私は今回の基本構想にあえて退席し、賛成をしておりません。その心は、「めざす将来像」である『幸福実感都市』のさまたげとなっている事に対する対抗策がはっきりせず、国の政策などで支障となるものがあれば、これと闘って『幸福実感都市』を実現しよう、という姿勢に欠けるのではないかと思ったからです。
 「区民が幸福を実感できない」ことのひとつに、すすむ格差の拡大があると思います。私たちが暮らす地域の中でも「格差の拡大」がそこここに感じられるようになってきました。それは90年代のはじめから長きにわたって続けられ、ここ4、5年とりわけ顕著になってた規制緩和政策や市場競争一辺倒の政策に原因があります。1989年からの日米構造協議でアメリカから「日本の慣行を変えよ!」と迫られ、財界の主導ですすめられてきた政治が、力の大きいもの、強いものをより富ませ、力の小さい、弱いものをより貧しくする、というあまりにも苛酷な結果をもたらし、日本の社会には様々な歪みが生じてきました。
 こうした問題に、基礎的自治体である荒川区は、どうやって歯止めをかけるのか。
 西川区長が『幸福実感都市・荒川区』を実現しようとすれば(元気クラブの基本構想では『区民が豊かに暮らせる荒川区』と言っておりますが-そのような将来像を実現しようとすれば)、住民に一番近い所にいる基礎的自治体は、限られた力を尽くして、この問題に正面から挑まなければならない、と私は思います。
 昨日の本会議で、西川区長は公明党・戸田議員の質問に答え、「民間活力導入や規制緩和によって生じた問題」として、耐震偽装問題、介護保険でのコムスン問題、ワーキングプアの問題を上げられ、「市場原理が悪しき方向に流れるのを防ぐことや、そのことにより困難な状況にある方を支援することが行政の責務と考えている」とご自身の考えを表明されました。たいへん時期を得たご発言だと思います。
 社会的に弱い立場にある区民に対し、これ以上困窮がすすまないよう手を差し延べ、支援することは大切な行政の役割です。西川区長は、この間、度重なる国の制度改変に対してこうした態度で臨んでこられました。私は、力の小さく弱いものを助けるだけでなく、そのことに加えて、規制緩和や市場原理万能主義の恩恵をこうむって我が物顔にふるまう者に対して、地域と区民を守るために必要な規制を行い、「悪しき方法に流れる」のを防いでほしい、大元である国に対しても政策を糺す行動を取っていただきたい、と思い、本日の質問をする次第です。
 様々な現実に直面して自分の力不足を恥じながら、切実な思いで以下の質問を致しますので、当局の真摯な答弁を期待します。
 さて、この間、誰のためにあらゆる規制が取り払われ、法律が変えられてきたのか。それは荒川区民にとって幸せをもたらしたのでしょうか。ここのところをよーく考えなければならない所に来ました。
 私は選挙を前後して、いくつかのマンション紛争に直面し、相談を受けました。『元気クラブの基本構想』に「大工場の跡地や駅前再開発がすすみ、荒川区は〈都心近接の住宅地〉として注目されるようになった。が、反面、中小工場跡地などのマンション建設をめぐる紛争が増え、区の現行ルールが問われるようになった」と書きましたが、まさにそのような事態があちこちで進行してきました。
 開発がすすみ、工場の閉鎖や転廃業、相続などによる土地の売却が増え、取得した業者によっては、狭い土地にも建築基準法ギリギリ一杯のボリュームの集合住宅を建てようとする、こうしたことから元々近隣に住んでいた区民との間に紛争が頻繁におこるようになりました。これまでの制度では対応できないケースもおき、区の現行ルールには限界が生じてきたと思います。
 そこで、第一番目に、中高層建築物と街づくりの現行ルール見直しや改定について、区の考え方を伺います。
 まず、荒川区の将来像と関わり、街づくりの基本となる『都市計画マスタープラン』の改定が日程にのぼってきたようですが、たいへん時期にかなった事と思います。どのような問題意識で新たな『都市計画マスタープラン』づくりに取り組まれるのか、区の考えを伺います。
 また、新宿区が制定した「高度制限地区条例」や、区がこれまで高層建築物対策として有効だと説明してきた「特別用途地域」「地区計画」などの活用について、これを具体化する策を伺います。
 東日暮里1・2丁目町会では、2ヶ所のマンション紛争が継続し、新たに1ヶ所の建築計画が出され、ここでも反対運動がおきています。いかに「建築基準法上合法だ!」と言われても、効率一辺倒で自分の家の窓と50センチ隣合わせにピッタリと高層な建物が建ち、非常階段が作られて平気でいられる人はいません。窓は開けられず、採光は遮られて日陰となる生活を「仕方ない」の一言で済ませられるでしょうか。本当に理不尽なことだと思います。この地域にはもともと高層の建築物がほとんどありませんでした。しかし、最近では、工場や倉庫の跡地を外部の業者が買う「狙い目」の地域だ、とまで言われています。長くこの土地に暮らしてきた住民にとっては、迷惑この上ないことです。
 こうした地域特性を残したい、高度化しない街がいい、と住民の多くが望むのであれば、都市計画制度を活用する方法があります。しかし、こうした制度は知られていません。高層マンション紛争を経験した住民がその教訓を生かし、私権制限についても良く話し合って、『我が街の姿を決める』モデルケースになることもできるのではないか、と思います。区は支援制度をつくり、専門家として住民の中に入って相談に乗り、積極的に街づくりを助けて区民の信頼を得るべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 さて、5月31日の建設・環境委員会で議論された「荒川区市街地整備指導要綱」を見直し、条例として制定する問題については、昨日の本会議で西川区長から「実施する」旨の明快な答弁がありました。当面の条例制定は決まったとして、私は『都市計画マスタープラン』の改定を機に、「区民の生活環境の守る」「良好な地域コミュニティを維持する」といった荒川区としての理念を掲げた包括的な条例(仮称)『生活環境と地域コミュニティを守るまちづくり条例』の制定を提案したいと思います。
 建築基準法の容積率緩和で、大きなボリュームの建造物が建設可能となり、行政手続法にもとづく条例義務化で要綱指導をしてきた区の裁量権が損なわれ、地域経済や産業構造の変化による用途地域の見直しが将来の課題となる-こういった複雑な制約の中で、基礎的自治体としてどこまで区民の生活環境と地域コミュニティを守れるのか、区民のために職員の英知を結集して挑戦して下さい。エールを送ります。
 一方で、区のすみやかな条例制定によっても遡及適用がされない2ヶ所の要綱違反の現場について、私は本当にこのままで良いのか、という思いを持っています。この2ヶ所については、地元の議員が超党派で状況を把握、共有し、みんなで出来る限りの対応を取ってきました。それは、この問題が単なる近隣紛争の域を超え、規制緩和がすすむ中での区の街づくり政策を問う問題だからです。
 東日暮里3丁目南町会が町会を挙げて反対運動を展開する89戸のワンルームマンション計画。この現場は、区立公園の向かい、高齢者施設の隣、そして学校の真裏という静かな環境の中にあります。建築基準法の改正で6月20日までの駆け込み着工が全国で起こる中、ここでも6月14日の早朝5時半に重機を乗せた大型車両が現場に搬入されました。
 6時前に、区役所の警備室に「私たちはただ泣き寝入りするしかないんでしょうか!」と現地から電話があったことを聞きました。区に助けを求める区民の悲痛な叫びだったと思います。要綱違反で踏みにじられる区民の痛み、悲しみを痛切に感じました。
 今回、要綱違反という事態を受けて条例ができることになりました。しかし、肝心のこの現場に条例は溯って適用されません。これまでの様々なルールも、結局は区民の痛みや犠牲の上に立ち、後から作られたものです。しかし、今回、89戸のワンルームという要綱を3倍も上回るマンション建設がそのまま行われてしまえば、区の要綱は有名無実となります。「間に合わなかった」で本当に良いのか、という率直な疑問が残ります。
 着工はしたものの、現在も住民と業者との話し合いが続けられ、区の斡旋が続けられるこの現場に、区としてでき得る最善の方策を取ることが、区民の信頼を裏切らない道ではないでしょうか。私たちも真剣に道を探りたいと思います。

 もう一ヶ所、西日暮里6丁目・メモリアル千代田の裏では要綱スレスレの29戸、居住面積は基準以下の20平米、という10階建てのワンルームマンション計画が進行しています。この業者は、ホテルラングウッドの裏にすでに58戸の要綱違反ワンルームマンションを堂々と建てており、「計画変更はできない」と強気の姿勢を崩していません。駅の近くで近隣に住民がおらず、訴えもなかったため、区は最初の要綱違反を見逃していました。
 ここは『利殖用マンション』と銘打っており、マンションの購入者と居住者が全く別であることから、近隣住民は「隣人が誰だか判らない」という強い不安と地域コミュニティの危機を感じています。ここでは、住民の要望に対して、年内に管理の方法や居住者に関する管理協定を締結すると業者が約束したため、仕方なく要綱違反のまま、区とは協定を結ばず、住民との工事協定締結をもって、19日に工事が着工しました。現在、激しい騒音と振動の中、住民は悔しい思いで工事を見守っています。
 この2件の要綱違反の事例を踏まえて、私はふたつの提案をし、区の見解を伺います。

 ひとつは、区内の土地売買について敏感にアンテナを張ることで、区外の業者による一方的な開発を防止できないか。区が「ふれあい館の土地を探しています」など必要とする土地の情報を区報に掲載したり、また、「土地を売却したい方はご相談下さい」という呼びかけをすることはできないでしょうか。
 今回のケースは、何十年も隣人だった事業者が経営不振や相続の事情などから、地域には内緒で突然土地を売却してしまったことに端を発しています。何とも寂しい話ですが、それがマンション紛争の火種となっています。こうした状況を未然に防ぐため、区として対策を講じていただけないでしょうか。
 もうひとつは、『地域と共生するワンルームマンション』を区として奨励し、借り上げ住宅や家賃補助を通して、地域と付き合って暮らしたい若者に入居してもらうという方策は取れないものでしょうか。
 ワンルームマンションが建つ近隣の住民に対しては、地域コミュニティ維持への不安解消に役立ち、一方では所得の高くない若者たちの住宅難解消に役立つ荒川区の住宅政策にもなります。昨年4定の一般質問で、「住宅マスタープランに若年層向けの住宅政策を盛り込む」という答弁をいただきましたが、荒川区と「お祭りや町会の行事に参加します」とか「レスキュー隊や町会の手伝いをします」という契約を交わす若者に対して住まいを優遇し、ご近所の『おせっかいなおばサンやおじサン』に可愛がってもらう、「そういうライフスタイルも楽しいよ!」と呼びかけてはいかがでしょうか。

質問の2番目として、大型店の立地を規制する(仮称)『地域商店街を未来に残すまちづくり条例』の制定と商店街の活性化策について提案し、区の見解をおたずねします。
 私は、『元気クラブの基本構想』の中で、荒川区の将来像を『地域産業と暮らしやすい住環境が調和した町』、『〈ものづくり・商店街・住宅〉が共存する活気ある下町・荒川区』として描きました。
 「地域にとって将来も必要だ」と再評価されている地域商店街が今も残る町であることに着目し、旧来からの基盤である製造業や地域商店街の可能性を引き出して地域経済がもっと潤うようにし、そのことが、新たにここに住まいを求めてきた区民の「住んで良かった」という暮らしやすさや満足につながる。そんな将来像をめざしたい、と考えました。
 商業の分野では、大型スーパーの進出に押されて地域商店街の衰退が続いています。「最近ではお客さんが来ないだけでなく、商品も来ない」という大型店やドラッグストアに独占されて仕入れもままならない実態も、予算特別委員会で紹介しました。大型店は地域商店街を確実にむしばんでいるのでありまして、「もう『自助努力』なんて説教は聴き飽きた!」と言うのが商店主の本音ではないかと思います。だって、いま生き残ってる商店は自助努力してきた人たちが中心なんだから。
 しかし、こうした状況の中、最近の内閣府の世論調査では「大型店はこれ以上必要ない」「地域商店街の存続を望む」という声が半数を越えました。高齢化や少子化の中で、コンパクトシティが注目されていますが、荒川区はまさにコンパクトシティの条件を満たす町ではないでしょうか。
 「地域商店街が残る町」を荒川区の将来像とし、商店街を町の魅力としていくためには、区が意識して商店街を残す政策が必要です。それには『規制と活性化支援』のふたつがキーワードです。
 そこで、私は昨年の4定で『まちづくり三法改正』の趣旨を生かし、大型店出店の適地性を考慮するよう、立地規制を盛り込んだ条例の制定を提案しました。土台、荒川区内の個人商店が巨大資本の大型店と対等に競争できる訳もありません。「市場原理がすべてだ!」というなら、荒川区の商店街などひとたまりもありません。それで良いのか、という問題だと申し上げました。本気で地域商店街を残そうとするなら、何らかの規制が必要なことは自明です。
 大型店の適地性を考慮した立地規制の考え方は23区のような都会にも通用します。例えば、熊の前のホームピックや茂木さんちの前のユ・タカラヤのように、既存商店街の外れや離れた所に大型店を持って来ては「ダメ」です。おぐぎんざのトミエストアのようでなくてはなりません。イトーヨーカ堂や仲町のセイフーも、両論ありますが、『可』ということでしょうか。つまり、「国道沿いに大型店がどんどん建って中心市街地が寂れた」という地方都市の中心市街地活性化問題と、実は同じ事なんですよね。ここの所を理解しないと、いつまで経っても荒川区の条例はできません。もうちょっと、「地域商店街の存続は消費者、区民の利益でもある」という確信をもって、やってもらいたいんですよね。
 4定では、「全国に展開する大型店立地規制の条例を研究し、荒川区の条例制定に踏み切ってほしい」と質問し、「研究する」との答弁をいただきました。課長が変わられましたが、この間、他の自治体の条例研究はすすんだでしょうか。伺います。
 また、商店街と地域の顧客との結びつきを強め、地域商店街の持続的な基盤強化につなげるキャンペーンについても4定で提案しました。
 商店街でイベントを実施した時には、子育て世帯やファミリー層が大勢集まって楽しそうしているのを見かけますが、それが日常の消費行動に結びついていません。商店街の存続を図るには、将来の消費者を育てるために子育て世帯やファミリー層を商店街に呼び戻す必要があると考え、『9時までやってる商店街キャンペーン』や『日曜もやってる商店街キャンペーン』に参加する商店街に助成する仕組みをお願いしました。
 今回は、商店街の空店舗を利用した『親子カフェ』の設置を提案したいと思います。
 荒川区の商店街には、焼き鳥、コロッケ、おでんなどのお総菜や、おにぎり、パンなど色んな美味しい食べ物が売られています。夕方や土曜日、買い物する親子が、ちょっと立ち寄って一緒に座り、飲み物だけ注文すれば、その商店街で買った食べ物なら持ち込みで食べられる。友だち同士、お母さん同士なら、話もできて楽しい。こんな『親子カフェ』はいかがでしょうか。子どものための絵本があり、読み聞かせもある『絵本カフェ』や科学に親しむ『サイエンスカフェ』もあったらいいな。

これは、『元気クラブの基本構想』をつくる広聴会で商店主と子育て世代のお母さんがコラボレートしてできた政策のひとつなのですが、荒川区の商店街にピッタリだと思います。空店舗を活用して子育て世代を商店街に呼び戻し、魅力に親しんでもらう事業として提案しましたので、ご検討下さい 。
 さて、来客で賑わう〈布の街・日暮里繊維街〉私はこの繊維街の近所に住んでいます。週末には区外から沢山の人たちが買い物に来ており、道を尋ねられることもよくあります。
 昨年の4定では、日暮里繊維街から三河島駅周辺の商店街・飲食店街へと回遊する楽しいルートを充実させ、荒川区の魅力のひとつとして発信すること、そのために再開発ビル内に『観光案内ステーション』を設置することを提案しましたが、再開発ビル内は難しいというお答えでしたので、今回は『日暮里-三河島回遊マップ』を作成することと、日暮里駅南口から繊維街に入るあたりに繊維街の協力を得て、マップ配布のためのスポットをつくることを提案します。この話は地元の皆さんの期待が高いので、ぜひ具体化をお願いしたいと思います。

 最後に、医療と福祉に拡がる格差の大元を断ち、財政削減目的の社会保障構造改革で崩壊しつつある日本の医療と福祉を国民のために立て直すために、現行制度の抜本的見直しを国に働きかける問題について、伺います。
 まず、破綻した介護保険制度について伺います。
 本年6月6日、厚生労働省は、(株)コムスンが不正な手段によって事業所の指定をうけていたことに伴い、各都道府県に「平成23年12月7日まで、コムスンの事業所の新規指定及び更新を行ってはならない」との通知を出しました。
 コムスンは東京都などの立ち入り調査後、事業所の指定取り消しを受けないようにするため、自ら当該事業所の廃止を行うなど、会社ぐるみで不正を繰り返してきました。こうしたコムスンの行為は到底許されるものでなく、コムスンに対して断固たる処分を行わなければならないのは当然であります。
 昨日の他の議員との質問と重複しますが、荒川区内におけるコムスン利用者の実態がどのようになっているのか、また、区はそれらの利用者に対して、今後どのような対応をしていくのかを伺います。
 そもそも私たちは、介護保険制度が導入に向けて議論されていた時から、保険料による介護保険制度に反対でした。コムスンの事件は、私たちが予測していた通り、介護保険制度そのものの破綻の象徴であると思います。この際、国は現行の介護保険制度をやめ、税でまかなう制度に改めるべきです。区も、基礎的自治体として、また保険者として、制度の抜本的な見直しを国に対し強く要望すべきであると考えますが、区の見解を伺います。
 また、医療制度改革についても申し上げたいと思います。
 国は、平成18年6月に成立した医療制度改革関連法にもとづき、介護療養病床の老人保健施設等への転換など、療養病床の再編成をすすめようとしています。さらに、老人保健法にもとづく健康審査を廃止し、生活習慣病予防という観点から医療保険者に特定健康審査と特定保健指導を義務づけています。
 いずれも、その詳細やすすめ方には不透明な多いのですが、介護を受けている人や入院患者、医療機関、医療機関保険者に大きな不安を引き起こしています。「医療費適正化」を口実とし、「医療費の抑制」だけを目的とした医療機関の削減などの医療制度改革がこのまますすめられれば、必要な人が必要なときに必要な医療や介護サービスが受けられなくなる恐れがあります。現に、終末医療を在宅で行うことを介護保険に含めた制度改革では、日々刻々と変化する利用者の状態に対応できない、という問題もおきています。
 私たちは区民の立場に立って、こうした医療制度改革の実施に強く反対します。
 そこで、国に対する基礎的自治体としての今後の行動について伺います。
 これまで述べてきたように、我が国の介護保険制度は破綻し、これまですすめてきた医療制度改革も大多数の国民に不利益を生じさせ、格差を拡大させる以外の何物でもありません。そして、障害者や家族の不安や反対を押し切って成立させた障害者自立支援法については、法の施行後も見直しを求める越えが大きくなっています。
 私たち全国の超党派の地方議員でつくる『全国地方議員交流会』は、8月下旬に東京で第5回の会合を開きます。その際、こうした財政抑制の見地からすすめられる国の社会保障構造改革に反対を表明し、撤回を求めるため、超党派の市区町村議員の代表数十名が厚生労働省に対して、『社会保障構造改革をやめ、制度の抜本的改正を求める要望書』を提出することを考えています。
 地方自治体の長として、医療保険と介護保険の保険者として、国の制度改革に問題意識をお持ちの西川区長にも、是非私たちと共にこの行動に参加していただき、ご協力をお願いしたいと思います。以上で質問を終わります。

(西川太一郎 区長)

 新たな都市計画マスタープランの基本的な考え方についてのご質問にお答えします。
 都市計画マスタープランは、20年先を見すえた荒川区全体の将来都市像や、地域別の街づくりの整備方針等を定めた総合的な都市整備の指針となるものです。現行の都市計画マスタープランは、平成9年3月に策定したものですが、その後10年を経過する中で、少子高齢化や地球環境などの社会状況が変化してきたほか、区民意識の面でも、生活環境の質を重視する価値観が広がってきております。
 一方、区内のまちづくりを見れば、つくばエクスプレスの開通や日暮里・舎人ライナーの19年度開業、成田新高速鉄道の22年度開業のほか、町屋地区、南千住地区、日暮里地区における再開発事業も進捗しております。さらに、都市計画道路補助306号線などの整備や都立尾久の原公園や汐入公園のオープンなど、荒川区の街は大きく変化してきました。しかし、区の6割を占める密集市街地の防災性の向上や生活環境を守る視点からの土地利用及びマンション建設における高さ制限のあり方など、様々な課題を抱えております。
 そうした状況をふまえながら、新たな都市計画マスタープランの策定においては、昨年度策定しました基本構想の将来像であります『幸福実感都市』を街づくりの面から実現するため、下町の良さを残しつつ、将来にわたりすべての区民が「住んでいて良かった」と思えるような都市整備の指針をしっかりと示したい、と考えております。

(倉門彰都市整備部長 答弁)

 都市計画制度の活用に関する質問にお答え致します。
 区では、これまで「荒川ルール」や「市街地整備指導要綱」により、調和のとれた街づくりをめざして参りました。高さや用途を定める方法には、都市計画で地域地区を指定する方法と、住民が自分たちの住む地域における一定のルールを自主的に設ける地区計画制度があります。このうち、高度の制限や特別用途地域の指定につきましては、既存建物との整合、私有財産の制限、経済活動への影響、住民合意の形成など、様々な問題を解決していく必要がありますので、今後、都市計画マスタープランの中で慎重に検討して参りたい、と考えております。また、地区計画などの区民が自ら策定できる制度につきましては、具体的な進め方や専門家の派遣などの支援制度を前向きに検討して参ります。
 続きまして、生活環境と地域コミュニティを守る荒川区まちづくり条例の制定についてお答え致します。
 区民の生活環境の保全や向上及び地域コミュニティの維持や醸成は、まちづくりの根幹をなすものであり、それにを基本理念とし、規制・誘導・支援などを含めた包括的なまちづくり条例の制定につきましては、今後の課題であると認識しております。したがいまして、現行の制度や将来必要となる制度等も勘案しながら、都市計画マスタープラン策定の中で慎重に検討して参ります。
 次に、区民や区内事業者が土地を売買する際の支援策についてのご質問にお答えします。
 売却された工場跡地や大規模敷地などへの開発事業者による高層建築物の建設は、周囲で生活している区民の生活環境に様々な影響を与えると認識しております。ご質問の土地の売買情報につきましては、かつてバブルの時期に(注:昭和62年=1987年から)、地価の高騰を防ぐため監視区域を定めておりましたが、平成7年に都内全域で指定が解除されたため、区での把握が出来なくなりました。また、区民の土地売却の相談や、区が必要としている用地を確保するための情報提供や区民からの相談につきましては、前向きに検討して参ります。
 最後に、下町と共生する若者に対する住宅政策に関するご質問にお答えします。
 荒川区は、人情味豊かな下町らしさを色濃く残しており、町会活動やお祭りなどを通して、活力ある地域コミュニティが形成されています。しかしながら、近年はマンション建設に伴う転入者の増加や、ライフスタイルの変化等により、地域コミュニティの基盤である町会に加入しないなどの問題が生じています。これまでも指導要綱の中で、町会への加入などについてお願いしているところですが、ご提案の、若者がワンルームマンションに入居するに際して、家賃補助等と合わせ、地域活動などに参加することを条件づけることは、なかなか難しい面がございます。
 区と致しましては、若者が地域コミュニティに参加することは、地域の活性化に寄与するものと考えておりますので、どのような対策が可能か、今年度から改定する住宅マスタープランの中で検討して参ります。

(高野政義産業経済部長)

 大型店の立地を規制する条例に関するご質問にお答えします。
 ご質問の通り、本年の第1回定例会予算特別委員会において、需給調整の見地からの大型店の立地規制はできないという法の趣旨についてご説明申し上げると同時に、他の自治体における商業の立地や事業活動に関する条例について、研究を行う旨の答弁を行ったところでございます。これまでの調査の結果、福島県が立地場所を制限し、誘導する条例を制定しており、京都市・金沢市・尼崎市がガイドライン等により制限や誘導を行っており、神奈川県や川崎市などが生活環境に配慮を求める条例を制定していることを把握しております。
 大型店の立地場所を制限または誘導する条例やガイドライン等は、モータリゼーションの進展により、商業施設などが郊外に整備されるようになり、中心市街地が空洞化し、住民の生活上の利便性が著しく損なわれるようになったことを踏まえ、バランスのとれた都市づくりを図るために制定されたものと認識しております。地方都市や広域自治体においては、こうした条例等により住民の利便性の確保・向上に一定の効果をもたらすかもしれませんが、予算特別委員会で当時の都市整備部長が答弁したように、公共交通網が高度に整備された東京に位置する本区が単独で大型店の立地を規制する条例等を設けても、消費の流出を招いてしまい、逆効果となる恐れがございます。
 今後は、福島県などの立地場所を制限または誘導する条例等について、その規定の内容を比較分析するほか、必要に応じて現地調査を行うとともに、大店立地法の立法趣旨に照らした立地規制の妥当性などについて、検討を深めて参りたい、と考えております。
 続きまして、商店街の空店舗活用策に関するご質問にお答え致します。
 区内の商業は、個人消費の低迷や多様化、大型店との競争の激化などの影響により、売上の減少や空店舗の増加など、困難な状況が続いております。そこで区は、昨年度、商業に関する総合的な調査を行うとともに、中小企業診断士や商業者の代表などから構成される検討組織を設け、現状を踏まえた効果的な商業振興施策の構築に取り組んできたところでございます。

その結果、ご質問の空店舗対策のほか、商店街を支援する消費者の組織化、魅力ある店舗づくり、高齢の消費者に対応した新たなサービスの実施を柱とする「商店街ルネッサンス事業」を本年度から開始することを決定しており、現在、その制度要綱の検討を行っているところでございます。空店舗を活用して、子育て世代をターゲットにした施設を整備することは、子育て世代を地域商店街に呼び戻す有効な方策であると考えております。
 要綱の制定に当たっては、ご質問の子育て世代向けのサービス施設、さらには高齢者に配慮したサービス施設の設置など、商店街が様々な工夫をこらし、お客様を呼び戻し、にぎわいを取り戻すために空店舗を有効に活用できるような規定にする予定でございます。 続いて、繊維街から三河島駅周辺への回遊を促進するための案内スポットの設置についてお答え致します。
 日暮里駅から尾竹橋通りを結ぶ日暮里中央通りとその周辺には、生地やボタンなどの服飾関連製品を販売する店舗が連担しており、週末を中心に区の内外から多数の買い物客が訪れ、大変な活況を呈しております。一方、三河島駅周辺には、焼肉などの韓国・朝鮮料理を提供する飲食店が多数集積しており、近年の韓流ブームを反映し、若い人たちを中心に任期を集めております。こうした特徴のある二つの商業集積は、区にとっても重要な地域であり、観光振興の観点からも、効果的な活性化策を講じる必要があると考えております。
 そこで、区と致しましては、全国に『ファッションの街・日暮里』を発信するため、昨年度、新たにファッションショーを開催したところでございます。このファッションショーでは、全国から800点を超える応募作の中から選ばれた40点の力作に、友好都市・大連市からの出品も加わり、その華やかなショーの模様はNHKなどで報道され、『ファッションの街・日暮里』の内外への発信に大きな効果があったと考えております。今年度も引き続き、ファッションショーを開催するなど、日暮里を積極的に発信することに取り組むほか、ご質問にもありますように、日暮里と三河島を回遊するルートを様々な手段を講じてPRしてまいりたいと考えております。
 案内マップの作成については、「街づくりマップ」の改訂にあたり、この地域を取り入れていきたいと考えております。また、案内スポットにつきましては、繊維街等の協力を得ていきたいと考えております。

(金田麻里子福祉部長)

 コムスンに関するご質問ついてお答え致します。
 荒川区内のコムスンの介護サービスを利用している区民は、平成19年5月実績で、訪問介護、居宅介護支援事業等を中心に約300名おります。
 コムスンに対しては、平成20年3月末まで適正な体制でのサービス提供を続けるよう指導しております。今後は、利用者へのサービス提供が滞ることのないよう、国や都と連携を取りながら、必要な対応を速やかに講じて参りますが、コムスンのような民間事業者が不正を行ったことは、介護保険制度上大きな問題であると認識しております。
 区と致しましては、介護事業者に対する指導を一層強化するなどしながら、介護保険制度の適正な運用に努めて参ります。