河内ひとみのあらかわ日和

2014年11月27日 2014年11月27日

 私は議案第12号、東京都荒川区立学校設置条例の一部を改正する条例に反対の討論を行います。
 現在の荒川区立学校設置条例の中から、真土小学校、第四日暮里小学校、そして南千住中学校、第二中学校という4校の名前がなくなり、小学校1校、中学校1校が姿を消すことになるこの条例改正は、大変な重みを持ち、また痛みを伴うものであることをまず最初に言っておかなければなりません。
 60年に創立50周年を迎えた真土小学校、既に70周年になる四日小学校、まもなく30周年を迎える南千中、40周年の二中、どの学校も長い歴史を持ち、たくさんの卒業生を送り出し、地域で親しまれ、大切にされてきたと思います。とりわけ、太平洋戦争の末期、空襲で焼けてしまった校舎を建て直したり、子どもたちの集団疎開などを経て、戦火をくぐり抜け、敗戦後の大変な時代の中で学校を維持してきた父母や教職員、地元の町会の方々の努力は言葉では言いあらわせないものがあるのではないでしょうか。
 私はいくつかの学校の周年行事に参加して、学校は今いる子供たち、親たちだけのものではないこと、こうした体験の中で地域の一つの象徴としてあることをひしひしと感じました。だからこそ、現在ある学校を一つでもなくし、統合するということは、十分にその地域の人たちと話し合い、合意をつくり上げながら進めていかなければできないことなのです。
 今回の条例案提出までの経過を見て、私は決して合意がつくられたというような段階ではなく、根強い反対と不満、教育委員会に対する不信、素朴な心配などが入りまじった地域感情を押し切って、まず統廃合することを決めてしまうという強硬手段に出たと感じています。合意を大切にするつもりなどさらさらない、なぜこんなに統廃合を急ぐ必要があるのでしょうか。
 人口の減少、児童数の減少という中で答申が出され、適正配置を進めるという方向が示されてから、小規模校であり、統廃合の対象であるとされてきた学校の周辺からは一斉に反対の声が上がりました。そうした中で、同時に「この学校はなくなってしまうのではないか」という不安を持った親たちもたくさんいました。「もしこの学校がなくなるのならば、他へ入学させた方がいい」という気持ちが働いて指定校変更につながり、小規模化にますます拍車をかけたことも事実です。
 このとき教育委員会は何をしたのですか。指定校を守り、その学校の環境を良くし、学区内の子供たちが安心して喜んで通える学校をつくるのが教育委員会の使命でしょう。父母に対してこうした指導を徹底するべきはずの教育委員会が、安易に指定校変更を認めてきた事実は、長年かけて小規模化を放置した、むしろ、小規模化に手をかしたと言われても仕方がありません。親がそういう意識だから、指定校変更を望むのだからというのでは理由になりません。それを指導するのが教育委員会だからです。4つの基準で厳正に行っていますと教育長は答弁しましたが、30数名の子供が就学児健診を受けに来校しながら、10数名しか入学しない事実に対して、どう考えるのでしょうか。
 極端な小規模化は防げたはずなのです。小規模化は悪循環で、さらに小規模化を進めていきます。小規模校の子供たちはかわいそうだ、何とかしなければならない、子供の発達を損なうなどなど、小規模校の子供たちに対するさまざまなデメリットが論議になり、統廃合の根拠とされてきました。極端な小規模校にはもちろんデメリットもあります。10人前後しか1学年の子供がいなくなってしまった学校に、だれが満足でしょうか。
 しかし、なぜそこまで小規模化が進んだのか、なぜそこまで深刻化したのか、これは子供の数の減少では片づけられません。20名、30名のクラスがつくられるのであれば、私は全く問題がないと思うのです。実際にその人数が学区内に存在しているのに、極端に入学児童が少ないことにこそ問題があり、この責任をめぐっての議論は、統廃合の根幹の問題です。
 教育委員会による説明会の中でくり返し当該校の親や地元町会から越境の責任問題が出されたのは当然のことと言えます。まじめに指定校を守ってきた親たちがなぜ統廃合にあわなければならないのでしょうか。こうした人たちの不信や怒りはごく当然の感情だと思います。根強い反対は、こうした背景があるからにほかならず、この帰任を明らかにせずに、条例をつくって統廃合を進めることには絶対に反対です。
 また、クラスの人数や学級数についてさまざまな議論がありましたが、極端な小規模校はともかくとして、人数が多ければよいという論理、人数が少ないのはかわいそうだなどというのには押しつけを感じます。時代が変わり、複雑化した教育環境の中で、1クラス40名もの子供たちが疎外されず、うまくやっていくというのはむしろ並大抵のことではありません。私の子供の学校でも、40数名から27名のクラスに分かれて快適になったというのが子供、親、教師の共通の感想なんです。現場のこういう感情に対し、反対のことを押しつけるのはよくありません。
 さらに、現在出されている教育委員会案をそのままにして、条例提案がされたことは最大の問題です。
 真土小、四日小の統廃合案は、屋上に校庭がある変則的なものです。強い風の日や日差しの強い夏に、屋上が校庭では子供たちが遊ぶことはできません。先日の港区等の屋上校庭校を見学してきたあるお母さんは、「鳥かごの中の鳥になったような気がした」とフェンスの中の体験を語っていました。教育委員会の描いた統合校のイメージは、まさにイメージ以外の何物でもなく、どんな学校をつくるのかも固まらないままに条例提出はおかしな話です。
 こんな変則的な学校をモデル校と言っても納得はされず、説明会の中で、不安と反対がむしろ高まったと言えるでしょう。
 両校の中間の場所での用地取得の努力は、「時間切れ」という形で説明されています。用地取得の可能性や、校地をどう拡張するのかについては不十分なまま、いわば見切り発車というような形で、現在の教育委員会案を承認することは到底できません。
 この統廃合の問題は、予算委員会の中でも大きな争点の一つでした。しかし、当該校のPTAや、地元の町会など親たちやまちの人々の自主的な反対の意思表示、さまざまな形での教育委員会や議会への働きかけがあったにもかかわらず、こうした中身についての議論に集中するのではなくて、一部の委員が、反対運動の中の一部教職員の活動について執拗に攻撃をくり返したのは、全く残念を通り越して怒りすら感じました。本当に自主的な地元の反対運動から目をそらそうとする意図があります。なぜ、反対が根強いのか、そのことを問題にせずに、あれこれのやり方をあげつらうのでは、心を痛めてきたまちの人たちの失望を買うものです。
 さらに、私の予算委員会での質疑に対し、「教育委員会は後ろ指を指されるようなことは一つもしておりません。文句があるのなら監査請求でも何でもなさったらよろしいでしょう」という驚くべき発言をしました。この開き直りは一体何ですか。議員の発言権を冒涜するもので、私は絶対に許せません。
 私はこの質疑の中で、「地元の署名は必ずしも真意ではない。9割反対といっても中身はいろいろだ」とか、「真土小から署名をもらったのは説明会の前です。説明会の後は納得いただいているはずだ」とかなどと、反対を認めない態度はやめたらどうですか。「地域の認識は二分している」「真土町会、西日暮里2丁目町会の2つの町会からは厳しい意見をいただいている」と文教委員会であなたが言ったのは事実でしょう。もっと謙虚に反対を認めるべきだと言ったそばからこの態度です。こんな態度では決して地域の信頼を得て仕事をすることはできないでしょう。私は2年前、桜の花びらが降り注ぐ真土小学校の校門で、娘の卒業式の写真を撮ったことを鮮明に覚えています。学校を1つなくすと言うことは本当に大変なことなんです。
 基本計画には、統廃合をさらに進めて、中学校15校を11校に、小学校27校を25校にと書かれています。今回の経験は本当に教訓に満ちているのではないでしょうか。いくつも学校をなくすことなど簡単に進められるものではありません。今回のような方法で統廃合が進められることは、住民の間に不安を拡大するものです。
 最後にこのことをつけ加えて、私の反対討論を終わります。