斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、あらかわ元気クラブとして、議員提出議案第14号、日朝国交正常化交渉にあたって、日本人拉致問題の完全究明を求める意見書に賛成の討論を行います。
 小泉首相は9月17日、歴代首相として初めて朝鮮民主主義人民共和国を訪れ、金正日国防委員長と首脳会談を行いました。
 話し合いの結果、日朝平壌宣言が署名され、2000年10月以来中断されていた国交正常化交渉の再開が合意されました。
 平壌宣言は、日本が過去の植民地支配について痛切な反省と心からのおわびを表明。この清算と補償について、経済協力方式で協議することを確認しました。
 また、両国は、朝鮮半島の核問題の包括的解決のため、すべての国際的合意の遵守を確認。北朝鮮はミサイル発射凍結を2003年以降も延長すると表明しました。
 さらに、この会談の中で金正日国防委員長は、日本人拉致問題について、その事実を認め、安否情報を伝えた上で公式に謝罪しました。平壌宣言では、この問題について、不正常な関係の中で生じた遺憾な問題の再発防止が確認されました。
 日朝首脳会談から1カ月、今回の首脳会談の中で明らかにされた日本人拉致問題、とりわけ8人の死亡という悲劇的な事実は、日本国民に大きな驚きと悲しみをもたらし、マスコミは連日この問題を報道しました。10月3日には、政府の拉致問題に関する第一次調査団が帰国、小泉首相は、調査結果を踏まえて、10月29日から日朝国交正常化交渉を再開することを決断し、昨15日には5名の被害者が一時帰国を果たしました。
 言うまでもなく北朝鮮による日本人拉致事件は、日本の主権に対する侵害行為であります。したがって、この事件の全容を解明し、相手国と交渉して、必要な措置を講じることは政府の責務であります。現在、韓国の大統領となられた金大中氏が、白昼堂々、東京から拉致された事件の際、私たちは真相究明と原状回復を強く韓国政府に求めました。この問題と同様の問題であります。
 今回の意見書は、被害者の安否についての徹底した調査と即時帰国、事件の全容解明、犯罪者の取り調べと処罰などを求めるものですが、主権侵害行為に対する要求として妥当なものであると考え、賛成をいたします。
 また、当初の意見書原案では、表題に「日本人拉致問題の先決」がうたわれておりましたが、10月3日の幹事長会で提案された現在の意見書案では、表題が「完全究明」に変わり、本文中の「国交正常化交渉の前提として」の部分も「国交正常化交渉の促進を図るため」と訂正をされました。もとより、両国間に横たわる日本人拉致問題を含むさまざまな問題は、国交正常化交渉の中でこそ解決可能であり、また、そうあるべきであります。
 私たちは、残された隣国との関係正常化は極めて重要な問題だと考えまして、在日韓国・朝鮮人との友好運動、北朝鮮に対する食糧支援などを通して日朝国交正常化を進めようと運動してまいりましたが、一貫して拉致疑惑は国交交渉の進展の中で話し合いによって解決すべきである、拉致問題を理由に国交正常化反対を唱えることは正しい選択ではないと主張してまいりました。この問題では、徹底して日朝の国交に反対し、あの国と国交正常化交渉などすべきでないと頑強に唱える人々と対立をしてまいりました。しかし、結果として、悲劇的な報がもたらされたにせよ、小泉訪朝と平壌宣言によって拉致事件の解明が進んだことは事実なのであります。拉致事件は解明されなければなりませんが、同時に、拉致事件を利用した国交正常化への逆流を許してはならないと思います。今回の意見書が、拉致問題解明を先決、前提とせず、国交交渉の進展の中で解決する立場をとったことは英明かつ現実的な判断であると考え、賛成をいたします。
 さて、1951年のサンフランシスコ講和条約で単独講和を選択した我が国は、戦争当事国であった中国との国交正常化を1972年まで、そして、植民地支配を行った朝鮮半島南部の韓国との関係正常化は1965年までおくれることになりました。朝鮮半島北部の朝鮮民主主義人民共和国との国交問題は、その意味で、20世紀中に解決されなかった最後の課題であります。我が国にとって、残された隣国との国交は、もはや選択の余地のない問題であります。我が国の100年、150年の計であり、日清・日露戦争以来の近代史の総決算であるとも言えます。
 平壌宣言の発表は、国交正常化への大きな一歩でありますが、これで隣国、朝鮮民主主義人民共和国との国交が一気に進むかどうかは予断を許さない状況とも言えます。
 アメリカのアジア戦略は、一貫して我が国の外交を規定してまいりましたが、他国への公然たる内政干渉と先制攻撃とを掲げるブッシュドクトリン、これをイラクと北朝鮮の問題などと見ているならとんだ平和ぼけではないでしょうか。アメリカの国家安全保障戦略で問われているのは、日米関係と日本の独立そのものです。我が国がアメリカの国益に追随するのではなく、アジアにおける自主外交ができるのか、産業経済と外交や安全保障とも一体となったアジアにおける共生の道を築けるのか、日朝国交はこの問題の試金石と言えるでしょう。
 最後に、表題の「完全究明」が何をもって達成されたと見るかは難しい問題も含まれますが、背景はともあれ、一旦国家間で約束された事柄である以上、平壌宣言は誠実に履行されなければなりません。
 また、国と国との関係改善には、人と人との親しい往来や交流も欠くことができません。この場合、我々日本人と韓国も含めた南北朝鮮半島の人々との相互理解、信頼関係を築くことであろうと思います。荒川区は戦前から多数の韓国・朝鮮人が暮らし、産業や文化を形成した町であることから、こうした人的交流、地域間交流を進める役割にふさわしい町でもあると考えます。最近、私は在日1世の話を聞く機会がありましたが、彼らは20世紀の歴史の生き証人であると感じました。荒川区と荒川区民とは、こうした財産を未来に生かすことができるのではないでしょうか。
 以上、平壌宣言の誠実な履行と日本国民と在日南北を含めた朝鮮半島の人々との相互理解を進める意見を付しまして、私の賛成討論といたします。