斉藤ゆうこのあらかわ日和

 私は、あらかわ元気クラブとして、1998年度荒川区一般会計予算に反対の討論をいたします。
 今回は、まず予算全体を貫く考え方についての反対意見を申し上げ、次に議論になった事業や各項に関する意見と要望を、そして最後に、中長期に、荒川区の予算編成の考え方の基礎とすべき基本構想に関する意見、このように3つに分けて討論を行いたいと思います。
 私たちは、昨年の決算特別委員会を通して、荒川区の財政運営が、厳しい財政事情の中で次第に元気を失い、行革に縛られた中途半端な事業展開になっているのではないかという危機感を持ちました。決算反対の討論でもそのことを述べましたが、今回新年度の予算を議論する中で、ますますその感を強くいたしました。
 3年連続のマイナス予算、緊縮財政の弊害は至るところにあらわれていると思います。昨年来の施設利用料の値上げ、これに続く区民団体への団体補助金10%カット、特養ホームのお年寄りのお小遣いや敬老金のカット、心身障害者施設の入所見舞金カットなどが進められ、さすがに一般区民の中からも、いかに財政が厳しいからといっても、こんなに区民のしわ寄せをするのかいといった声が聞かれます。社会的に弱い立場のお年寄りや障害者への給付や助成の打ち切りは、当事者だけではなく、区民全般からもよい印象で受けとめられてはおりません。ましてや、医療費や消費税の負担が増してきたことをずっしりと実感しながら生活している毎日ですから、なおさらの感があります。
 ほかに方法はないのか。私は先日、買い物をしていて、町の方に厳しい表情で尋ねられました。そう、ほかに方法はないのか、これこそこの状況の中で私たちが真剣に考えるべきことではないでしょうか。お金がないから仕方がないでは済まされないほど、区民生活の困難に、気持ちの上でも拍車をかけていることに、当局は気づくべきでしょう。
 予算委員会冒頭の総括質疑で、国の6つの改革を例にとって申し上げましたが、みずからかけた財政構造改革のしばりが、景気をますます後退させ、国民経済を悪化させ、至るところで国民の反撃を受けるというわけで、政権の首をしめる結果となったこの間の国の経過は、荒川区にも教訓となるのではないでしょうか。
 政府は、参議院選挙も考慮してでしょうが、結局各種の景気浮揚策に踏みきり、補正予算などをつけざるを得なくなりました。藤枝区長と幹部職員の皆さんは、この国の一連の経過についてどのような御感想をお持ちになるのか。
 財政健全化と経済活性化の相互の関係、バランスというものがあると、ある会派の政調会長さんが予特の質疑の中でおっしゃったのが耳にとまりましたが、まさにそういうことであります。
 また、ムーブ町屋が典型的な例と思いますが、財政が制約になって、実に中途半端な、使い勝手の悪い施設をつくってしまいました。この種のことは、今回の予算委員会の質疑の中でくり返し理事者から聞かれた、財政上の制約もございますのでという言葉に凝縮されてあらわれているのでございます。
 事業の展開や、それに携わる職員の意識についても、積極性を失わせ、元気をなくしているのではないかと思います。あれだけ言われ続けているムーブ町屋については、この際、必要な財政措置を講じて、改修や備品の補填などを行い、最大限目的にかなった施設となるよう改善すべきではないかと申し上げておきます。
 給付や補助金、助成金制度など、区民生活に直接響く問題、施設建設や事業の展開など、まちの将来や地域活性化にかかわる問題、どちらにも緊縮予算の弊害があらわれています。当然のことながら、区内最大の事業者でもあります。国の予算の一つ一つが、水道の蛇口を緩めたり締めたりするように国民生活に影響を及ぼしますが、やはり区の予算も同じです。この点、行政の皆さんの感度は、少しまちの人々と違っているのではないか。首をつる人の足を引っ張るようではいけないということです。
 現在の区民生活の困難、本当に苦しい地域経済の状況を思えば、このままでよいわけがありません。行財政改革至上主義に手足を縛られ、中途半端で消極的な予算編成に反対し、その転換を求めたいと思います。
 この問題に関連して、それでは、行財政改革をどうするのか、区財政の厳しい現状はどうなるのかという点に触れたいと思います。私の総括質疑に対して企画部長は、金のなる木があるわけじゃありませんからとおっしゃっておりましたが、その問題です。
 はっきり申し上げておきますが、程度の差こそあれ、全国の、あるいは23区でも、ほとんどすべての自治体がいま財政に苦しんでおります。どこも同じ、荒川区だけではないのであります。問題は、同じように厳しい財政環境のもとで、各自治体のやり方に違いがあるとすれば、それは何なのか。厳しい中にも、将来の地域の構想が描け、区民の元気を失わせないような自治体とそうでない自治体があるならば、それはどこが違うのか、ここが問題なわけです。今回の予算委員会の質疑の中で、何を中心に行財政改革を進めるのか、この点についてはいくつかの意見があり、違いもあったように感じています。
 まず、徹底した事務事業の見直しを中心とする。その中でも比較的区民生活に影響のでない部分に力を入れて見直し、削減すべきだという意見。郵便番号7桁に伴う業務委託を例に出されましたが、これに象徴されるような事例はまだまだ多くあるのではないでしょうか。とかく行政の仕事の中には、わかりにくい部分や、我々には信じられないようなこともあります。こうした部分に徹底してメスを入れることで、相当の効果があるはずです。こうした内部努力に重点を置くやり方には私たちも積極的に賛成をいたします。
 また、義務的経費、人件費の削減について、職員定数の見直しを強力に推進せよとの意見もありました。この点については藤枝区長の表明された行革のための行革、ただ削減するだけのやり方ではない行革の理念に基づかれ、慎重に進めていただきたいとのみ申し上げておきます。
 正規職員の削減、民間委託の推進、非常勤・嘱託での代替、詰まるところ、これらは労働力商品の価格破壊、ダンピングにほかなりません。これを推進した社会のモデルはアメリカ、最近ではニュージーランドであります。このごろ批判的にその実態が紹介されるようになりました。この反対、逆は、ドイツなどをはじめとするヨーロッパ諸国です。熟練労働を排除し、パート労働に置きかえる。企業にとっての効率のみを追求してできあがった社会の実態は、国民経済の安定感に欠けた社会であります。公務員労働者のパート化が社会に及ぼす影響をこうした側面からも見なければならないときに来ていると思います。
 さらに、区有地の問題についても議論がなされました。消防署の要望が例として出されましたが、こうした防災など、公共的な必要性からの売却であれば否定いたしません。しかし、現在のような土地の安い時期に、やたらに民間に土地を切り売りするようなことがあれば、荒川区の財産を目減りさせることであり、賛成はできません。また、学校跡地などの活用については、ふるさと文化館のようなあまり感心しないものもできてしまいました。事業の分野を超えた複合施設建設や、住宅との合築など、他区でやっているようなことがなぜできないのでしょうか。検討を求めたいと思います。また、外郭団体の整理についても、私たちは賛成です。がんセンターももちろん聖域ではありません。抜本的に見直すべきであると思います。
 以上の通り、いずれにしろ、予算を制約し続ける財政問題と行革の考え方についてきちんとした見解と方向性を確立すべきときである、そうでないと見通しは暗いと申し上げておきます。
 さて、予算の確保、議論になった点について簡単に述べたいと思います。
 第1に、いわゆるファミリー層及び若年層の定住化と住宅対策についてです。地価高騰を背景にした家賃助成制度は廃止されました。定住化というならば、家賃助成にかかわる住宅政策の基本ははっきりし、長期に、系統的に取り組まなければ効果は出ません。多くの会派の皆さんと同様、荒川区の私たちも、住宅政策に危惧を持っております。借り上げや合築での建設など、もっと積極的な取り組みを求めたいと思います。
 地価高騰を背景にした家賃助成制度を廃止した後、この結果、新婚世帯向けの民間の2DKの動きに影響が出たというような話も出ております。積極的対策を求めたいと思います。
 第2に、10年、11年度合わせて4億円が支出される老人保健施設整備費補助についてです。この点については、本会議の一般質問でも申し上げました。多額の補助金を出すわけですから、今後相手方の法人に対する調査、指導を進め、区としてはっきりした認識のもとに対応されることを求めます。
 第3に、介護保険導入準備についてです。もっと率直な情報提供と議論をお願いしたい。
 第4に、産業振興対策に関する人員体制についてです。深刻な地域経済の落ち込みを反映して、活発な議論が行われました。こうした議論が生かせる人員増、体制強化、もう決断のときではないかと思います。
 5番目に、同和対策事業と職員研修について申し上げます。共産党の議員団が、同和対策事業などをやめて、区民生活に振り向けよというような趣旨のことをおっしゃっている。お断りしておきますが、同和対策も区民生活に切実にかかわっております。研修については、この間起こった新たな差別事件、とりわけ公明時局演説会ポスターへの大量差別落書き事件などへの対応を見るとき、区はこれまでの研修のあり方を根本的に見直し、部落差別をなくす、人権を守ろう、そういうふうな思いを本当に持つことのできる研修となるよう充実させることを求めたいと思います。
 第6に、ひろば館事業の所管変更についてです。高齢者福祉、学童クラブの双方について、他の事業との整合性や今後の充実を考えれば、もう所管を見直すべきときではないでしょうか。検討を求めます。
 第7番目に、日の丸、君が代問題について一言申し上げておきます。私の小学校の校歌は「祖国を愛し、正義を守り」とうたわれます。私はこの校歌の精神のとおりに生きてきたつもりです。何が祖国を愛することであり、何が正義なのか、それは人それぞれに違っており、一様ではありません。どこの国でも、また歴史的に見てもそうだったのではないでしょうか。日の丸、君が代に対する態度をもって愛国を論ずることはまず不適当なことではないかと思います。また、式典における礼儀の問題として論じられる向きもあるようですが、これも当たりません。私たちも、また出席者も皆、卒業式であれば、卒業生の門出を祝い、表彰式であれば、表彰を受ける方々に敬意を表すために出席するわけでありまして、日の丸や君が代云々のために出席しているわけではないのですから、事の本筋ではない議論かと思われます。
 私自身の経験では、かつて、私が出席した小中学校の卒業式、入学式で、これを問題にされた方が現に学校の中にいらっしゃいました。そのとき、私の全く面識のないPTAの方々が、いま私が申し上げたのと全く同様のことをおっしゃったということがあります。地域社会の中にも、意見は一様でないということを、民主主義者である皆さんにはぜひ御承知いただきたいものだと思います。
 第8番目に、がん予防センターについてです。質疑の中では、既に検診万能論は終わったことが明らかになったと思います。検診の有効性は変わらないと行政はさかんに答弁されましたが、既に生活習慣病としての総合的予防対策に重点は移っております。矛盾する議論ではないでしょうか。こうした情勢を考え、財政的にお荷物になっている第1次検診センターでしかないがんセンターを聖域とせず、見直すよう強く求めます。
 最後に、中学生の最近の事件にかかわる問題と薬物依存症対策について申し上げたいと思います。表面化した一連の中学生の事件、これについて、私は予算委員会の質疑の中で、戦後の日本社会のあり方や価値観が問われる問題である、戦後の学校教育の根幹も、これでよかったのか、改めて問い直されると申し上げました。この問題は、区民文教委員会の集中審議に委ねていきたいと思いますが、1点だけ述べたいと思います。
 3月15日、日曜日のNHKテレビ、ご覧になった方、いらっしゃるでしょうか。10代裁判、アメリカでのティーンコート、10代法廷とでも言いましょうか、10代裁判と訳しておりましたが、このことが紹介されていました。少年法を改正して強化し、10年たったアメリカ。その中で、少年刑務所の厳しい刑罰という対応では、再犯率が40%だった。ところが、この10代法廷というやり方をとったことにより、これに参加した少年は、再犯率が10%ということだそうです。ダルクのような取り組みとあわせてぜひ検討すべき課題ではないでしょうか。今後議論をいたしていきたいと思います。
 さて、長く申し上げましたが、討論の最後に、今後の予算編成を決定づける荒川区の新基本構想について一言述べたいと思います。
 私が初めて当選した1987年11月の3定で、荒川区基本構想の策定がされました。既に10年の歳月がたっております。新たな基本構想の必要性については、この間、一般質問、予特、決特で述べてまいりましたので、今日はくり返しません。私たちはこの間の予算の流れ、額の変化と構成比、主な年次ごとの施設建設や事業の変化などを調査し、事実に基づいた区財政の総括を行うために、1992年、昭和57年から約15年間の決算額を並べて見てみました。財政の傾向や変化、例えばこの10年間、民生費ですが、高齢者福祉を中心とした施設建設が必要に迫られて、多くの財源を要したことなどが数字の中からあらわれてまいります。
 基本構想を裏づける財政の議論は、こうした過去の総括に基づいた根拠あるものでありたいと思います。そして、現在の区民生活の実態、年齢構成や就労、納税などの実態、そうした実態の把握から、荒川区民の特徴ある姿をつかみ、大多数の区民が豊かになる地域活性化の構想を描きたいものだ、これは再三述べてきたとおりであります。
 新たな基本構想は、区政が大多数の区民のためのものであることを基本とすべきであります。苦しい財政事情から高額納税者の呼び込みに気をとられて、現在このまちに暮らす区民の大多数である人々を忘れることがあってはならないと思います。そして、今後ますます激動しかねない経済情勢、アジアの金融経済危機が我が国にもたらす影響も深刻です。区民生活の困難はさらに増すかもしれません。こうした中で、区民がこのまちに希望を失わない基本構想こそ必要だということを強調したいと思います。
 最後に、今後も、行政と活発に意見を闘わせ、他会派の皆さんとも大いに議論をしていきたい。予算に反対する会派には、よい答弁をするななどと言っているようではお話にならないのであります。来年度予算にかかわる区政の姿勢の転換を求め、私の反対討論を終わります。