猛暑の夏、お元気でお過ごしでしょうか。
この夏、ウクライナ、イラク、パレスチナ…と世界各地で戦争が拡大しています。そんな中で安倍首相は『集団的自衛権の行使容認』を閣議決定しました。『集団的自衛権』とは読んで字のごとく、「同盟国・アメリカが攻撃された場合に日本の自衛隊が応戦すること」を指します。戦後、アメリカが世界の各地で行ってきた数多くの戦争をよくよく吟味すれば、これが日本の国益にならないことはハッキリしています。沖縄をはじめ国土を次々と米軍に提供する日本の姿を見つめ直さねばならない夏です。
さて、再三計画の見直しを求めてきた『荒川2丁目複合施設』は、5月、6月と2度にわたって建設工事の入札が不調となり、着工が大幅に遅れることになりました。
また、議会で異論が続出する中、区は5年間で32億円のリース契約で小学校全校へのタブレットPC配布をスタートさせます。
西川区政の予算に賛成した議会各派の責任も厳しく問われます。詳しくは2・3面をご覧ください。
暑さが続く折、どうぞご自愛ください。
区議会レポートに何度も書いた『荒川2丁目複合施設』は、今年度分の建設費25億円が予算に計上されました。メッキ工場の部分取得に始まって次々に土地を購入しましたが、国庫補助は5740万円しかなく、区財政の単独負担は15億7000万円。建物の建設費や管理運営費をふくめると、今後の荒川区にとって財政上の大きな負担です。
私は、後世に「不要不急の箱物だった」とそしりを受けない保証はない、として予算に反対しました。
一方、タブレットPCの小中学校全校配付は当初から議会与党にも異論がありました。私は「読み書きソロバン」が学力の基礎で、授業にタブレット導入は不要、ICT企業の広告塔になるのか、と反対してきました。
しかし、予算委員会では従来のリースとの『二重契約』も問題となる中、モデル校の検証も不十分のまま、2学期からの全校配布が予算化されました。
この2件、いずれも区は反対意見を押し切る形で予算化をすすめました。ところが…
■各地で続く公共工事の入札不調
荒川2丁目複合施設は、5月8日に行われた工事契約の入札が不調(不成立)になったのに続き、2回目の6月5日の入札でも価格が折り合わず、不調となりました。6月議会に契約案件を議決して工事に入るスケジュールは変更を余儀なくされ、荒川2丁目複合施設の工事は入口で立ち往生した格好です。
■制限付き一般競争入札に参加したJV(建設共同企業体)
前田・進興・ADEKAJV |
大本・坪井・東JV |
日本国土・三芳・工藤JV |
■予定価格(事前公表)
第1回 | 40億9,077万円 |
第2回 | 41億4,738万3,600円 |
区は参加JVにヒアリングを行い、工期をH28(2016)年11月30日まで5か月延長して経費3000万、単価を改定して3000万を増額、一部天井の素材変更で▲1000万を減額し、差引き予定価格を5000万円引き上げましたが、2回目の入札も辞退と価格オーバーで不調に終わりました。
公共工事の入札不調は荒川区に限らず、全国各地で起きています。23区でも豊島区、中央区などで同様のことが起き、着工を延期する自治体も出てきました。この背景には建設業界を取り巻く特殊な事情があります。
まず、仕事ができる技術者が圧倒的に不足していること。また、これまで不当に低く抑えられてきた労務単価が上がったことは当然としても、人出不足が労務単価上昇に追い打ちをかけていること。さらに、アベノミクスによる円安で輸入の建築資材が高騰し、調達が困難になっていること。…などが上げられ、これが全国的な公共工事の契約不調の背景になっています。
■当分のあいだ事態は変わらない。
こうした事情がすぐに変わることは見込めず、当分続くと思われます。なぜなら、2020年の東京オリンピックが決まり、建設ラッシュがこれから本格化すること、そのオリンピックで影響を受けると批判される大震災後の東北復興という切実な課題が控えているからです。さらに、「国土強靭化」の掛け声で推進されている防災対策の公共事業も全国各地に展開が予定されています。
建設大手にとっては、この3つに応えることが第一義的な命題で、地方自治体の『不要不急の箱モノ工事』など眼中にない、といった状況ではないでしょうか。病院や学校や危険個所のインフラ整備なら仕方ないけど、それ以外の地方自治体の仕事などかまっていられない、というのが本音ではないかと思います。
業界は技術者不足という工事の安全性に関わる問題を抱え、建設バブルに笑ってばかりいられない状況で、外国人労働者の導入の法制化も視野に入れています。今後も単価の上昇は続くと予測され、ますます契約は困難な情勢ですが、荒川区はこうした事態を甘く見ているのではないでしょうか。
政治力にモノを言わせて(失礼!)、意地でも着工する、と頑張るのは考えものです。
■ゼネコンと地元事業者の利益は?
また、西川区政はこれまで100億の土地を買い、ふれあい館などの箱モノを建設、「地元事業者も仕事で潤う政策だ」と言ってきました。しかし実際には、日暮里駅前再開発などの大規模な事業では、地元の工務店からは「自分たちには利益の薄い仕事だ」との声が聞かれました。
今回の複合施設は大手ゼネコンと地元事業者がJVを組む大きな工事で、仕事の配分は第1順位のゼネコンが60%、第2順位が30%、第3順位の地元事業者が10%となっています。このまま工事契約を急げば、区は地元事業者を切ってゼネコン単独で入札をかける判断も迫られ、業者の偏りどころか、地域経済に利益はありません。
この際、工事契約を延期し、ふくれ上がった複合施設計画を見直してはどうでしょうか。やっぱり、吉村昭文学館は出身地の日暮里につくれば?
■なにがなんでも全校導入
区はタブレットPCを小・中学校全校に導入するため、約8億円の予算を計上しました。「児童生徒の理解力に応じた個別学習をより効果的に行い、基礎基本的な学力を定着させる」「ICTを活用し、思考力や問題解決能力、コミュニケーション能力を身に付けさせる」として2学期からの小中学校全校導入に踏み切りました。
タブレットPCを授業で使うことが、果たして荒川区の子どもたちの基礎学力やコミュニケーション能力の向上につながるのか――予算委員会では、議会最大会派の自民党をはじめ全ての会派から教育効果や費用の大きさに対する懸念や反対意見が出される異例の事態になりました。
昨年の本会議質問や決算委員会では自民党から「モデル校の検証後でなければ全校配布は認めない」との強い意見が出され、検証委員会が行われました。しかし、その実態は、モデル校の校長等が欠席がちなまま回数を重ねたもので、3月の予算委員会では「行政のアリバイづくりではないか」との批判も出ました。
また、これまで学校のパソコン教室で使用したリース契約の残1億円以上が重複契約となることも判明しました。
それでも「全校配布する」という区の姿勢は変わりません。予算委員会では「私は3回の選挙に勝ち、区民の信任を得ている」と答弁した西川区長に対して「4年間の白紙委任状を出した訳じゃない!」とのヤジも飛び、私が「『ほかに適当な人なヒトがいないので』っていうのもよくあるよね」とつぶやいたら区長は大層お怒りのようでした。
■不明朗なリース契約の減額
さて、5月21日の文教・子育て支援委員会では、問題となった「二重払いのリース料を一部減額する」との報告が行われました。なにそれ?
教育委員会の説明は「H26(2013)年4月~H29(2017)年3月まで契約がある各校のパソコン教室用PC765台分のリース料のうち、タブレットを全校導入する今年8月末以降の1億2600万円が『二重払い』に当たる。これを年度内に繰り上げて支払うことにした。このうち、タブレットPCの契約者である内田洋行が、これまでのリース契約者の富士通リースから5000万円で残リースを買い取り、自社でPCの使用を検討することになった。したがって区は富士通リースに差額の7700万円を支払うことになる」というものです。
高梨教育長は「リース契約の重複について報告を怠ったことを改めてお詫びする」「今年度予算の提案時に重複支払いに気づいていたが、それでも全校導入を重視して「政策判断」した」と発言。それじゃあ議会はダマされた、ってこと?
高梨教育長が内田洋行の専務取締役に直接相談し、リース買い取りを決めたそうですが、765台分のリースを5000万円で買い取ると1台65000円。企業コストからすれば、異様に高い買い物ですが、要するに5年間で32億円の契約の見返りに、二重払いの肩代わりをしてもらったということでしょうか。
■子どもをIT漬けにしてはいけない。
タブレットPCは、従来のパソコンの進化とスマホの進出に挟まれて苦戦している市場と言われます。全校導入で広告塔となった荒川区は救世主なのかもしれません。この不明朗な「肩代わり」を委員会でさらに究明したいと思います。
7月23日の委員会には「荒川区タブレットPC活用指針」が示されました。教育委員会は「なにが何でも毎授業使うという訳ではない」と言いますが、それなら32億もかけて導入する必要はないでしょう。
「睡眠と勉強を削ってスマホ、ソーシャル中毒」と子どもの現状が心配される中、西川区長がおっしゃる「グローバル人材の育成」が荒川区に何をもたらすのか、委員会で32億円の効果の検証を続けていきます。
7月12日~14日、私たち超党派の地方議員は全国から沖縄に集い、第12回「全国地方議員交流会」を開催しました。
「建白書を実現し、沖縄の未来を拓く島ぐるみ会議」は7月27日に宜野湾市で結成大会を開催、政・財界や県民2000人以上が参加し、「基地に支配される未来を拒絶し、建白書の実現に向け、島ぐるみで再結集しよう」と全県民に呼びかけました。
比屋根照夫 琉球大学名誉教授は講演で1950年代の島ぐるみの土地収用反対闘争と11972年の沖縄返還時の『建議書』にふれ、「建白書は沖縄に脈々と流れる『自主・自立を求める精神』の流れをくむものだ」と指摘。地方議員が地域をリードし、国政に対する地域の声を掘り起こすことを提起しました。
また、稲嶺進 名護市長は「1月の市長選で市民は将来を見すえて辺野古基地建設にNO!を選択した」と報告、平良朝敬かりゆしグループCEO は「県民総所得に対する基地収入の割合は5%だ。沖縄経済が基地で成り立っているというのは間違いで、基地は経済発展の阻害要因だ」と強調しました。
私たち超党派の地方議員は、地域経済の自立と「基地の島」からの脱却をめざす沖縄の現状を自らの地域と重ね合わせて学びました。
いま、安倍政権は集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、憲法改正を視野に入れて、日米同盟強化と軍事大国化を進めています。アメリカのアジアリバランス戦略の下で、日本の安全保障と外交は大きく転換をはじめました。世界で市場や資源をめぐる争奪が激化し、戦争の危機をはらむ情勢の下で、安倍政権がアジアに権益を求めるアメリカに追随しつつ、大国としてふるまうことは、東アジア地域の緊張を一層高め、平和的な共生と繁栄に逆行します。
政府は沖縄に圧力をかけ、県民の意志を無視して辺野古の新基地建設をすすめようとしていますが、11月の知事選を前後して、沖縄県民との対立はさらに高まると予測されます。
沖縄の問題はひとり沖縄のみの問題ではありません。私たち地方議員も、対米従属から脱却し、自主・独立で近隣諸国と共に発展できる日本をめざして各地で行動していきます。
●暑い夏がやってきた。台風一過の沖縄はひときわ暑かった。県民総生産に占める基地関連収入は5%に低下、安保繁栄論は過去のものとなった。「基地がなければ生きていけない沖縄」は米軍に基地を提供するために政府が作ったストーリーだ、と沖縄の議員たちは口々に語った。新たな自立経済を模索する沖縄は困難を乗り超えて団結し、歩みを進めている。
●安倍政権は『株価連動政権』。生命線は株価だ。昨年の「日本再興戦略」は財界から「具体性がない」と不評で株価を下げた。今年6月の「改定版」には、法人税減税、年金積立金の運用拡大による投資活性化、社会保障や農業改革など財界に具体的な果実をもたらす政策が盛り込まれた。どこまでも貪欲なことだ。
●他方、わが町では消費税増税で区内中小事業者が赤字でも8%の納税義務を負わされた。荒川区の小さな事業者が本当に存亡の危機に陥るこの税率アップで、輸出大企業が還付金を増額して潤うのは不公平を通り越して不公正だ。10%阻止のため、仲間の議員や中小事業者の皆さんと闘っていく。
●議会の多数の支持を背景にすすめられてきた西川区政は2・3面のような問題に突き当たった。強行突破も懐柔も可能だろうが、こんな区政はいただけない。元気クラブは今年発足20年となる。「微力だけれど無力じゃない」。